2024年12月26日( 木 )

小笹に建設中のマンションで紛争(2)反対住民は福岡市議会に請願を提出

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 福岡市中央区小笹に建設中の賃貸マンション「アイズ小笹」に関して、十分な住民説明を行わず強引に着工した建築主と近隣住民の間で紛争が生じている。近隣住民側が福岡市議会を通じて請願を提出、工事の差し止めを求める仮処分を福岡地裁に申し立てる事態となっている。

田中構造設計は事前説明報告書の議事録を2種類作成

 クレスト小笹の住民らに福岡市から情報開示された事前説明報告書と(株)田中構造設計から近隣住民に配布された議事録に相違があったことから、田中構造設計が事前説明報告書に添付する近隣住民説明会の議事録を2種類作成し、住民に提示していない方の報告書を福岡市に提出していたことが判明した。

 福岡市の担当部署である住宅都市局建築指導部開発・建築調整課は、田中構造設計から提出された事前説明報告書の内容と実情の違いについてまったく把握していないばかりか、当時の建築調整課長(現在は他部署に異動)は住民らに対し「アイズ小笹ができるのが嫌なら引っ越せば良い」と発言したことがあった。このことからも、福岡市の担当部署である建築調整課は決して市民の味方ではないことがわかる。

左:アイズ小笹建設現場、右:のぼり
左:アイズ小笹建設現場 / 右:のぼり

 福岡市建築調整課の対応に期待できないと悟った住民らは2021年3月25日、2,422名の署名を添えて、福岡市議会に対し請願を行った。

請願とは
 請願法に基づき、国または地方公共団体の機関に対して意見や希望を述べること。地方議会に対する請願は地方自治法及び各議会の会議規則に規定がされており、提出には紹介議員を必要とする。提出された請願は所管常任委員会に審査を付託し、その審査の結果を本会議に報告し議会としての採択・不採択の決定をする。採択した請願は、市長その他の執行機関に送付するに当たり、議会から処理の経過及び結果の報告を請求することができ、議会、執行機関双方に実現への努力が要請される。

 住民らからの請願を受け、福岡市議会福祉都市委員会では、各会派の議員から「福岡市紛争防止条例はその趣旨に沿った運用が正しく行われていない」「福岡市は事業者からの一方的な書類のみによって受理・認可を行い、近隣や地域住民の環境についての意見を確認していない」「福岡市住宅都市局建築指導部開発・建築調整課はこの条例の趣旨を正しく理解し適切に運用すべき」「田中構造設計に対して住民への事前説明、工事計画説明などを丁寧に行うよう指導すべき」などの指摘があった。

 福岡市議会福祉都市委員会の請願審査資料は公開されている。請願事項は以下の通り。

 (1)建築主(田中構造設計)に、11階建てマンションの建築計画を「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例」に従い、日照、通風その他周辺の居住環境に及ぼす影響に配慮した建築計画に変更し、周辺住民の生活環境を壊さない建築行為を行うよう指導すること。

 (2)福岡市開発・建築調整課は同条例を厳守し、安全で快適な居住環境の保全及び形成が図られるよう、建築主を指導、監督すること。

 「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例」第4条は「市の責務」として「市は、中高層建築物等及び特定集合住宅の建築に関し、安全で快適な居住環境の保全及び形成が図られるよう指導するとともに、建築紛争が生じたときは、迅速かつ適正な調整に努めなければならない」と定め、第5条は「建築主の責務」として「建築主等は、中高層建築物等及び特定集合住宅の建築に関し、周辺の居住環境に十分に配慮するとともに、市民の良好な近隣関係を損なわないよう努めなければならない」と定めている。

 福岡市議会福祉都市委員会は、アイズ小笹に関する請願に対する基本方針として以下のように決定をした。

 「市では、福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例に基づき、安全で快適な居住環境の保全及び形成が図られるよう指導及び調整に努めてきた。建築基準法において、建築主事又は指定確認検査機関は、確認の申請書が提出された場合は審査し、建築基準関係規定に適合することを確認したときは、法定期間内に申請者に確認済証を交付しなければならないとされており、当該建築計画については、既に確認済証が交付されている。建築紛争の解決は、建築主及び近隣住民が相互の立場を尊重し、双方の歩み寄りと協力によって実現される。引き続き、双方の話し合いよる解決が得られるよう調整を図っていく」

※福岡市議会福祉都市委員会の請願審査資料はこちら

(つづく)

【桑野 健介】

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