2024年12月26日( 木 )

小笹に建設中のマンションで紛争(3)工事の影響で境界部分の石積み擁壁が膨らみ始める

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崩落寸前のブロック塀を隣地上空でショベルカーが押さえ込む

 田中構造設計が建築主・設計者・施工者である「アイズ小笹」は、近隣住民への事前説明が不十分なまま、今年4月に着工した。北側に隣接する「クレスト小笹」の住民たちがのぼりをもって抗議したが、田中構造設計の田中忍社長は後ろの方に隠れ、夫人に対応させていた。近隣住民の意見を聞こうとせず強引に着工しておきながら、抗議に対して見せた姿に住民たちは失笑したという。

 北隣の「クレスト小笹」の管理組合と住民は6月17日、工事の差し止めを求める仮処分を福岡地裁に申し立てた。「アイズ小笹」の石積み擁壁は中央部分に膨らみや亀裂が生じているが、両端部分にはそうした現象は表れていない。裁判で田中構造設計は石積み擁壁の両端部分の測量結果だけを提出し、「石積み擁壁に問題は生じていない」と主張したという。これに対し、「クレスト小笹」の住民側は中央部分の写真などを裁判所に提出した。

5月10日と8月3日の比較。中央部分の石積み擁壁とブロック塀が膨らんでいる
5月10日と8月3日の比較。中央部分の石積み擁壁とブロック塀が膨らんでいる

 工事差し止めの仮処分申し立てから1カ月後の7月16日、現場と隣接する「クレスト小笹」との間にある石積み擁壁と上部ブロック塀に亀裂が生じ、欠片が落下。石積み擁壁とブロック塀の膨らみが大きくなったため、施工者の田中構造設計が「クレスト小笹」の敷地内にショベルカーのアームを伸ばして押さえ込むという事態が発生した。

 田中構造設計はブロック塀にアンカーボルトを打ち込み、地中に埋め込まれたH型鋼に固定するという応急措置を行ったが、石積み擁壁そのものを補強するか、解体して再築造しなければH型鋼を引き抜くことはできない状況となっている。

 擁壁が膨らんだ原因は、11 階建てのマンションを支える基礎として地盤改良材を施工したときに、土とセメント固化剤を混ぜ合わせた際に生じる圧力によるものと思われる。

 応急措置の際に、ショベルカーのバケット部分が隣地の「クレスト小笹」の壁面から10cm 程度の距離まで境界線を越えて不法侵入している(写真参照)が、「クレスト小笹」の敷地内に侵入して作業することについて、田中構造設計は事前の説明や告知を行っておらず、事後の謝罪や説明もない。

ショベルカー

 この作業により、「クレスト小笹」の駐車場にこぶし大のブロック塀の破片が落下したが、幸いにも住民や自動車に被害はなかった。しかし、H型鋼に固定という不安定な応急措置のまま11 階建てのマンションの建設が進めば、さらに擁壁に圧力がかかることが想定されるので、「クレスト小笹」の住民にとっては恐怖の日々が続くことになる。現在、2階床・1階柱壁のコンクリート打設が終わっている。

ブロック塀

(つづく)

【桑野 健介】

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