2024年11月14日( 木 )

【IR福岡誘致開発特別連載58】IR長崎、行政の能力不足が終末を招く

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

巨額の事業費を誰が負担?

 今週に入り、世界的に著名なカジノ専門誌『iag(inside asian gaming)JAPAN』がIR長崎の“出来レース問題”を報じている。

 特集記事は、IR長崎の落札者であるカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンと、公募過程の公正性・廉潔性などを鋭くえぐり、解説している。長崎県が公表した総事業費の3,500億円をどう負担するのかという点を問題視しているのだ。

 オーストリア政府系とはいえ、その企業規模を考えると到底困難であり、事業母体のコンソーシアム(国内大手と地元企業など)の組成案もいまだに明確でないと指摘している。

 具体的にいうと、カジノ・オーストリアのグループ全体の規模を見ても、この巨額な総事業費を賄うエクイティ(総資本1,000億以上)と債務(調達資金の能力)については間違いなく矛盾しているわけである。

 グループ全体の2019年(コロナ禍前)の年間営業利益は2,700万米ドル、日本円でわずか約29.6億円。また、その利益構成の62%は同社の宝くじ事業から得たものである。従って、母体となる信用力のある事業者がいないと、開発事業は困難だと解説しているのだ。

 長崎県のRFP(提案依頼書)公募と事業者選定は、単にやむを得ずカジノ事業者を選択しただけに過ぎず、日米経済安全保障などの問題には気づかず、運営事業母体の組織組成計画もなく、最初から間違いだらけだったといえる。

中国系2社が提訴すればIR長崎は崩壊

長崎 イメージ 今回の事業者選定で、長崎県の恣意的な理由で外された中華系のオシドリ・インターナショナル・ディベロップメントとニキチャウフー(パークビュー)は県に対し、公募による審査過程の公正性・廉潔性に異議を唱え、情報公開請求を実施している。しかし、県は頑なにそれを拒否し、守秘義務を盾に実行する気配がない。

 もし、情報公開の実施と誠実な回答がなければ、長崎県を相手に彼らは訴訟手続きに入ることも辞さないとしている。一方、中村法道知事は、事業者選定の審査過程に恣意的な点はなく、誠実に履行し決定したと記者会見で表明した。両者は平行線をたどっている。

 長崎県の姿勢は上から目線であり、火に油を注ぐようなものだ。近日中に訴訟手続きが開始されれば、IR長崎は崩壊するだろう。開発事業を進める一方で、訴訟問題を抱えていれば、コンプライアンス症候群ばかりの我が国の組織人たちは、誰も寄りつかなくなるからだ。

 前述した専門誌が指摘しているように、カジノ・オーストリアのグループだけではどうにもならない。そうなれば、中村知事の政治生命さえ危うくなるだろう。

 IR大阪と、これから出てくる民間組織先行のIR福岡しか可能性はないと確信している。

【青木 義彦】

(57)
(59)

関連キーワード

関連記事