2024年12月27日( 金 )

小笹に建設中のマンションで紛争(6)工事の影響で隣接マンションの価値下落の恐れ

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隣接するマンションの資産価値にも影響

 アイズ小笹建設現場に北隣りにあるクレスト小笹の中古売買実績を見ると、2,480万円~1,680万円の間であり平均売買価格は2,035万円となっている。築26年のマンションとしては高めの相場となっており、このマンションの環境が中古マンション市場において評価されていることがわかる。

 しかし、今のままアイズ小笹の建設が強行されれば、日照権が犯され住環境は悪化する。また、擁壁にひび割れや膨らみが生じ崩落の危険が放置されることになれば、クレスト小笹のマンションとしての価値は相当下落する。いくら値下げしても売却自体が不可能となるケースも想定され、売買不能となった場合、クレスト小笹の区分所有者が損害賠償を提起することもあり得る。

 大阪で石垣が崩れ住宅が倒壊したニュースは記憶に新しい。そのような最悪の事態とならないことを祈りたい。

石積み擁壁の変状
石積み擁壁の変状

 中高層建築物等の建設に先立つ住民説明会について、ある自治体のQ&Aでは以下のように説明がなされている。

 「建築確認は、建築計画が建築基準法等の取締まり法規に違反していないことを明らかにするに過ぎず、その計画が近隣住民の生活環境に及ぼす影響が民法の不法行為に該当しないことまで意味するものではありません。不法行為に該当するかどうかは、個々具体的に判断すべきものであって、最終的には裁判所が判断するものです。民法上、近隣住民の生活環境に及ぼす影響を含め、近隣紛争は相隣関係に基づき当事者間で調整することが期待されています」「建築主が近隣住民との良好な近隣関係を損なわないよう、早期に近隣住民に説明し、できる限りデータを公表するとともに、近隣住民の苦情に誠意をもって対応することが重要です。また、住民も互譲の精神で建築主と冷静に話し合うことが大切です。根本的には、地域住民が区市町村と連携し、建築協定や地区計画制度等を活用し、地域の将来像を明確にしておく必要があると考えます」

    田中構造設計は2002年設立され、従業員は22名だ。建築設計のうち構造設計や耐震診断などを業務としており、福岡市南区の本社の他、沖縄・東京・札幌にも営業所を開設している。本業の構造設計以外にも、「アイズ小笹」の建設以前に「アイズ平和」「アイズ南福岡」などを建設しており、「アイズ平和」は現在、2億数千万円で1棟売りされている。このような施工の実績から、田中構造設計は、強引な建設が通用するものと確信している可能性がある。しかし、「建築確認を受けていれば近隣住民の反対があっても建設が可能」ではなく、各自治体は紛争を防止するための条例を定めており、近隣住民の権利を侵すようなことがあれば、法律問題に発展し、司法の判断を仰ぐこととなる。

 田中構造設計のホームページには、会社の理念として

「私たちの構造設計は限られた予算内で、安全な建物を設計しているという感覚と皆様の生命・財産を天災から守る大きな盾となるように戦っている、そんな気持ちを持って設計しております」

    とある。また、同ホームページの代表挨拶には

「福岡西方沖地震や東日本大震災、熊本地震を目のあたりにして、経験したことや感じたことを構造設計に取り入れ、コストを抑えて耐震強度を上げ、なおかつ建物の剛性も上げる設計といった、自分たちだからこそできる新しい構造設計を提案しています。そして、皆様にとって唯一無二の存在になれるように誠意をもって設計させていただきます」

    とある。

 アイズ小笹の建設に関する近隣住民に対する田中構造設計および田中忍氏の対応を見る限り、「皆様の生命・財産を守る」「誠意をもって」という姿勢は微塵も感じられない。Net IB News編集部は田中構造設計にコメントを求めたが、回答はなかった。

 損害賠償などという大変な事態となる前に、田中構造設計は、クレスト小笹の住民らと誠実に協議を行い、擁壁の補強など安全策を講じる方が賢明ではないだろうか。

(つづく)

【桑野 健介】

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