2024年11月14日( 木 )

【IR福岡誘致開発特別連載59】IR長崎、メディアの報道に耳を傾けるべき

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長崎県庁 イメージ 先週末、世界的に著名なカジノ専門誌『iag(inside asian gaming)JAPAN』がIR長崎に関する特集記事の総括(5回連載の最終回)を報じた。的確な優れた内容である。

 IR長崎に興味がある方はぜひ一読してほしい。また、長崎県の関係者は素直に彼らの言葉を聞いて、速やかに行動に移すべきだと思う。

 結論からいうと、IR長崎で計画されている内容は、ほぼすべてが実行不可能と断言できる。従って、長崎県は少しでも早く、今回のRFP(事業者選定)のトラブルを理由に政治決断して撤退すべきだ。今後、訴訟問題を含めて、いずれ破綻するだろう。その時点での崩壊は、より多大で深い傷を負う。

 長崎県の能力とカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンならびに同社グループの力量では、「小さな子どもが巨人に挑む」ようである。すでに答えが出ているにもかかわらず、太平洋戦争で大国アメリカに挑んだ歴史と酷似している。

 総事業費3,500億円、年間集客計画数840万人としているが、どう資金調達し、どう集客するのか。同誌の記事は、より詳細で具体的な内容(巨大ホテルやMICE施設の実績など)を指摘しているが、簡潔に説明するとこの2つの疑問に集約される。

 記事では、年間集客計画数の840万人はどう考えても不可能な数値だから、3,500億円といった資金も調達できるはずがないと解説している。この計画を誰が作成したかは別として、政治家と行政機関の意志を忖度し、御用達のアナリストが合致するように逆算した具現性のないものである。

 筆者はこれまでに、ハウステンボスの過去の最大集客数が約300万人だったと解説してきた。840万人はこの3倍弱の途方もない非現実的な数値だ。同誌はその根拠を的確に説明している。

 コロナ禍以前に安倍前政権は観光立国を目指すとして、来日する海外観光客数を年間3,000万人にするとぶち上げた。その際、著名なプロのアナリストは、東京都を含めた関東以北が60%の1,800万人、大阪・京都の関西地域が30%の900万人、福岡市中心の九州地域が10%の300万人と説明。さらに、中国習近平政権は、同国のマカオ以外の中国人による海外カジノ観光を強く制限し禁止している。

 五島列島・壱岐・対馬を含めて長崎県の人口は約130万人。どこから年間840万人を集客するのだろうか。北海道苫小牧市も和歌山市も同様に、行政の御用達の忖度アナリストたちが、夢のような数値を逆算し公表している。後背地人口が少ない地方の中堅都市では、そうした集客計画は実現不可能であり、採算は合わないと断言できる。

 従って事業母体(コンソーシアム)の組織組成に、国内大手企業や元財界からの参加者はいない。過去3回のハウステンボスの閉鎖危機は、誰もが熟知している。集客計画数に信憑性がないことも一目瞭然である。だから、いまだに参加企業の発表もない。

 重ねていうが、長崎県は近く表に出てくる米国IR企業連携のIR福岡に協力することこそが、最大の地方経済再生策であると確信している。

【青木 義彦】

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