インテルのファウンドリ市場「再進出」は成功するか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
米中対立も背景に、世界的に関心が高まっている半導体のファウンドリ事業。業界トップのTSMCや2位のサムスン電子が勢いを見せるなか、インテルがファウンドリ市場への再進出を宣言した。業界の勢力図は塗り替えられるのだろうか。
25年に1,000億ドル市場と予想
車載半導体の供給不足が続くなか、世界各国は半導体の安定供給は産業の発展に欠かせず、とくに半導体を自国で製造することの重要性に気づき始めた。そこで、急激に関心を集めているのが、設計した半導体を受託製造するファウンドリ事業である。
ファウンドリ事業は、生産施設がないファブレス(半導体設計専門企業)の注文を受けて半導体を生産する事業のこと。半導体設計会社として有名なのは、エヌビディアやクアルコムのような米国のファブレスと、GoogleやアマゾンなどのIT系企業である。
従来はファブレス、つまり生産施設のない半導体設計会社がファウンドリ事業の顧客となっていたが、これからは5G、IoT、人工知能(AI)、自動運転などの新分野で半導体の需要が爆発的に伸びることが予想されているため、Google、アマゾン、FacebookなどのIT大手も半導体の設計に参入している。
その結果、ファウンドリ市場の重要性はますます高まってきた。アップルもドイツ・ミュンヘンの研究開発センターに10億ユーロを投資し、半導体設計・開発の拠点に育てることを明らかにしている。これに加えて、今までインテルからサーバー向けとパソコン向けのCPUを購買していたマイクロソフトも、チップの自社開発を宣言した。
このように半導体設計企業が増えてくると、おのずと半導体の受託製造企業への注文は増加する。市場調査会社IHSマークイットによると、2021年のファウンドリ市場規模は前年比で8.4%成長し、738億ドルに達すると予測される。また、インテルの最高経営責任者(CEO)ゲルシンガー氏は、ファウンドリ市場規模が25年に1,000億ドルになると予想している。
インテル、ファウンドリ市場再進出を宣言
インテルといえば、CPUの設計と製造技術で約40年間にわたり半導体業界のトップを走り続けている世界を代表する半導体企業である。パソコン時代の到来とともに製造技術だけではなく、優れたマーケティングで成功を収め、一世を風靡した。
しかし、インテルは市場がパソコンからモバイルにシフトしているにもかかわらず、パソコンにこだわり凋落を招いた。CPU市場ではAMDの「ライゼン」と激しく激突する羽目となり、モバイルCPUに当たるアプリケーションプロセッサー(AP)市場ではクアルコムの「スナップドラゴン」に市場を席捲されている。
製造技術を誇っていたインテルであったが、自社製品を製造することに注力し、受託生産事業に力を入れなかったため、ファウンドリ事業では10位内にも入れず、1位のTSMCや2位のサムスン電子にも大きく水を開けられている。
ファウンドリ市場は3ナノ、5ナノ製品が主流になっているなか、インテルは7ナノ製品の製造にも成功できず、開発をあきらめた経緯がある。ところが、そのような状況にもかかわらず、インテルのゲルシンガー氏は3月24日のオンライン会見で、「ファウンドリ(半導体受託生産)市場に進出する」と電撃的に宣言した。
インテルは200億ドルを投資し、米アリゾナ州に追加でファブ(工場)2カ所を建設する計画だ。稼動時期は24年と予想される。インテルのファウンドリ事業進出は今回が初めてではない。以前にもファウンドリ事業に進出したが、アップルやクアルコムなどのファブレスの受注に失敗し、事業を畳んだ経緯がある。今回はファウンドリ事業への再挑戦となる。
(つづく)
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