2024年11月22日( 金 )

福岡市の防災活動に貢献防災・安全・運営の3委員会を再構築(後)

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(一社)福岡市建設業協会 会長 金子 幸生 氏

(一社)福岡市建設業協会の新会長に7月5日、金子幸生氏が就任した。金子会長は地場ゼネコン・日建建設(株)の代表取締役として、地域のまちづくりに尽力。金子氏の会長就任により、次世代への継承と、福岡市と締結した防災協定の強化を進める。近年、甚大な自然災害が立て続けに発生するなか、同協会の活動に期待が寄せられている。

市民と直接つながる防災協定

福岡市と福岡市建設業協会の防災協定の支援活動内容
福岡市と福岡市建設業協会の防災協定の支援活動内容

 福岡市建設業協会が約2年前に福岡市と締結した防災協定の下では、前述した全国建設業協会の災害協定よりも、さらに地域性と支援内容を絞り込んだ支援活動を行っている。 

 市の窓口である財政局技術監理部技術監理課は、「協会の会員企業より、20年に4件のご支援がありました。台風による被災で、屋根・外壁にブルーシートを張るなどの処置を行っていただきました。直近では今年8月の福岡市内の豪雨時に協会の会員企業の方々に、待機していただきました」と同協会の活動内容について報告している。

 市と同協会の防災協定の具体的な支援活動は上記(11項目)の通り。これらの活動について、緊急時または災害時に即座に現場に駆けつけ、速やかに実施する体制が同協会会員企業では構築されている(無償で行う範囲が対象)。

 防災協定対象エリアは、東区・博多区・南区内の戸建住宅(中央区・早良区・城南区・西区は(一社)福岡防災機構が担当)。台風や豪雨などの自然災害発生時に、市民から同協会窓口に電話連絡が入る。災害対策本部長がエリア担当の企業に連絡し、即座に出動して支援活動を実施。さらに、大雨や暴風警報以上が発令されると、各社が準備して待機する。

 「先月のお盆の期間、福岡市全域は豪雨に見舞われました。会員企業各社はいつでも出動できるように待機していましたが、今回の豪雨での出動はありませんでした。それでも我々の存在は地域のために不可欠であると自負しています」(金子会長)。 

 現在、公共工事の落札は総合評価方式がメインである。従来の入札価格だけでなく、総合的に最も社会的な要請を満たせる事業者を選定できる方法として、改良を続けながら、一般的な落札方式の1つになっている。加えて、官製談合防止の観点からも実施されている。評価する基準値には、技術と価格とワーク・ライフ・バランスを加点。同協会と市の防災協定に基づく活動も加点される。

 「総合評価のために活動しているわけではありませんが、我々の活動が加点されることは事実です。公共工事落札に有利であるからではなく、市民の安全・安心のために市と連携しているのです」(同)。

 市と締結した防災協定の活動は、同協会の最も重要な役割の1つとなっているようだ。

先人の思いを次世代に伝承

 福岡市建設業協会の設立は18年10月で、まもなく3年を迎える。その歴史をたどると、同協会は1955年設立の福岡建設協力会と94年設立の福岡建友クラブが合併して誕生した。

 福岡建設協力会と福岡建友クラブの加盟企業には、福岡の錚々たる地場ゼネコンが名を連ねており、業界発展に大きく寄与してきたことがうかがえる。地域の建設業の発展を通じて、まちづくりに尽力してきた歴史がある。地元建設業を技術的・経済的・社会的に向上させて、公共福祉の増進のために活動し、豊かな国土・地域をつくり上げ、国民の生活環境の充実を目指してきた。同協会には現在、市内の建設会社31社が加盟している。

 金子氏の会長就任により、組織の若返りが期待される。金子会長は「初代会長(岩崎氏)は設立時より、防災・安全・運営の3委員会を組織されました。しかし、これから活動しようとした矢先に、新型コロナウイルス感染拡大によって、例会や各委員会の開催、そして会員企業間の交流の場が激減してしまいました。私は岩崎前会長ができなかった活動を引き継ぎ、初心に返り活動を再開させていきます。会長就任時に所信表明した通り、例会の定期開催とともに、防災・安全・運営の3委員会を再始動させます。すでに防災委員会や理事会はコロナウイルス感染予防に万全を期して、オンラインも活用しながら実施しています。まずは、できる範囲で活動していくことが大切です」と意欲的だ。 

 さらに、「工事現場の定期的なパトロールなどの活動とともに、防災協定による災害復旧へのフレキシブルな活動を展開していきます。繰り返しますが、我々の使命は地域の安全・安心に寄与すること、建設業を通して市民の皆さんの豊かな暮らしづくりへ助力すること、そして建設業の進化・発展を目指すことです」と話している。 

金子幸生会長
金子 幸生 会長

 金子会長は自社(日建建設)の代表取締役として経営の舵取りを行いながら、(一社)九州住宅産業協会・副理事長、(一社)福岡県建築士事務所協会・常任理事を務めるなど、地場の建設業界のために全力投球している。

 地元経済アナリストは、今回の金子会長の就任について次のように解説する。 

 「金子さんは本当に実直で実意を込め、かつ丁寧に仕事をされる。そして日々のタイトなスケジュールのなか、各関係団体の要職に就いて業務をこなしている。団体の会合に出ているだけでなく、自身の役割を全うして各団体の活動を活性化させる存在なのです。企業の代表としての仕事ぶりと各団体での奮闘ぶりを見て、各方面から全幅の信頼を得ています。今回の福岡市建設業協会の会長就任も、日頃の金子さんの実直な人間力と仕事ぶりが評価されたからです。前任の岩崎さんやほかの退任された方々の思いを次世代に継承し、地域に貢献していただきたいです」。 

 福岡市は現在も人口が増加中で、建設需要も堅調さを維持している。その一方で、自然災害が増えており、防災への取り組み強化が喫緊の課題となっている。今後、同協会がはたす役割は一層大きくなると予想され、その活動に大きな期待が寄せられている。 

(了)

【河原 清明】


<ASSOCIATION INFORMATION>
代表理事・会長:金子 幸生
所在地:福岡市博多区博多駅東3-14-18
設 立:2018年10月

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