業界を元気づけることに期待~福岡市建設業協会・金子会長
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人口増と再開発を背景に、福岡の建設関連業者は十分な仕事量を確保し、各社の懐は潤っている。だが、林立する新たなビルに入るテナントをどう集めるのかという不安がよぎる。先行きが不透明ななか、若手経営者のリーダーシップに期待が高まっている。
人口が増えるメリット
飯塚市の隣に位置する桂川の工場団地を車で走った。八木山バイパスは混雑していた。福岡県は国の補助により、片道2車線工事を同時並行で行っている。「トンネルを2本貫通しなければならないのだが、1本は長く工事金がかさむ。だから知事には有料にすればよい、誰も文句は言わないと伝えてある」と福岡市の古参議員が漏らす。「桂川から飯塚市手前までは新興住宅が増えており、人口増にともなって車の通行量が増加している」という。
訪問先の経営者が同様のことを証言する。「飯塚駅と博多駅間のJRの乗降者が多い。福岡市への通勤者が膨らんできている」。福岡市の人口は160万人を超えた。人口拡大を図る福岡都市圏として、筑豊・飯塚地区が注目を浴びている。人口が増えれば建築工事が増加するのは世の常。人口増は建設業界を潤わす。そのメリットは筑豊地区にまで波及している。
過剰投資のリスク
天神再開発がたけなわである。竣工したビルも出始めた。次から次へ偉容を誇るビルが林立することは間違いない。今後の半世紀にわたる天神改造が、現在推進されているのである。しかし、残念ながら施工業者はすべてスーパーゼネコンで、地場建設業者の参画は皆無。地元業者にはお呼びがかからない。それはどうであれ、下請業者は地元が主体。建設関連業者には腹いっぱいの仕事があるから“めでたし、めでたし”。当分、仕事は安泰である。
天神の一角にある地元の大手不動産管理会社のオフィスは、ビルの14Fに入っている。そこから展望すると、油山が近くに見える。福岡市街地を展望しながら、この会社のオーナーは「児玉さん、天神地区は再開発でオフィスビルの建築ラッシュです。どう判断されますか?プロの我々でも、一体どこからテナントを集めてきて埋めることができるのかと不安な気持ちでいます。家主であるお客さんが苦しみ、悶えることを想像するだけで、正常な気持ちを保てません。毎朝、埋まるか埋まらないか自問自答しています」と語る。
たしかに東京でさえ、オフィスビルの空室率が6%台となっている。福岡市内は今のところ4%台で推移しているが、新ビルの竣工に合わせて、新規の入居者がどこから現れるのだろうかと首をかしげてしまう。地元から湧いてくるとは考えられない。東京からの移転ラッシュに沸くという事態も考えられない。テレワークは定着していくだろう。そうなると、海外から、とくに中国(華僑)や東南アジアから福岡へ進出するケースが2ケタ台に上ることはあり得ない。東京並みの空室率6%台となることは時間の問題なのか。
建設関連業者は腹いっぱい、仕事を完了できた。ところが、オフィスビルの市場規模を超えた過剰投資にともなうリスクへの不安が高まってきた。不動産管理会社オーナーの不安には正面から答えなかった。ストレートにいえば、空室率は東京並みになると見込んでいる。家主よりも建設関連業者のほうが景気に酔い、気分が良くなるのではないか。だが、威勢のよい地元建設業者(ゼネコン)は少ない。事業継承が絡んでいるからだ。
戦後最大の建設景気が長期的に持続
福岡の不動産景気の底は2002から04年ごろ。不動産価格はどん底にあった。たとえば、中央区渡辺通5丁目の道路に面していた土地が坪150万円だったことを記憶している。持ち主が「そんな馬鹿な!」と怒り狂っていた。当時、オフィスビルは空き室だらけでのた打ち回っているという悲惨な状態にあった。家賃も坪8,000円前後で低迷していた。当時の建設業界は不景気の影響を受けて、収支トントンの状態が続いた。工事粗利が8%前後で推移していたのだ。
08年のリーマン・ショックを経て、業界を取り巻く環境は様変わりした。12年を境に「人手不足、職人不足」が顕著となり、発注元と請負元の力関係が逆転。これが10年近く続いた。その結果、かなりの数の企業が経常利益10%を維持した。15年ほど前は粗利8%で低迷し、四苦八苦の状態であったことと比べると、この間、いかに建設業者・地元ゼネコンが資産を蓄積できたかが理解できるであろう。
しかし、ここから先が問題である。受注環境が段々と悪化することは間違いない。そうなると、たらふく資産を蓄積したために「もう苦労するのはしんどい。廃業して家賃収入で我が一族一党は食べていこう」という道を選択する者、または「息子は軟弱で事業継承は無理だから事業を売却しよう」という道を選ぶ者とにわかれると予想される。地域から尊敬されてきた会社を自ら見捨てるとはもったいない話である。その閉塞状態に突入しようとしていた矢先に、朗報が飛び込んできた。
業界の活性化を担う日建建設・金子社長
日建建設(株)の金子幸生社長の(一社)福岡市建設業協会会長就任は、インタビュー記事(福岡市の防災活動に貢 献防災・安全・運営の3委員会を再構築)の通りである。ここでは、建設業界の誰も知らない事実を紹介しながら、同氏の役割を占ってみる。
(1)3代目幸生社長は、リーマン・ショックで最も危機に立たされた経験の持ち主である。先代とも口論しながら持ちこたえた。危機突破の原動力は、すべての火の粉から逃げずに対応したことにある。(2)顧客に信頼される立ち振る舞いを貫いて受注を確保してきた。建設業協会の大半のメンバーは事業継承が間近に迫っている。金子会長の立ち振る舞いを目撃して、大先輩の経営者の大半は「俺ももう一度、息子の教育に励んでみよう」という挑戦意欲に燃え出すと予想される。これが第1の役割だ。
金子社長は(一社)九州住宅産業協会副理事長の職に就いている。長年、「後継者塾」の世話人をこなしてきた。東京の同世代の巨大企業経営者たちとの交流でも先頭に立ってきた。その結果、若手に頼られる存在となった。そうした姿を筆者は長年にわたって目撃してきた。福岡市建設業協会の若手とともに、組織を活性化させることは間違いないと確信している。これが第2の役割である。
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