SBI ホールディングスの新生銀行TOBの成否を検証する(後)
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【表1】はSBIの傘下7行(含むHD)と、TOBをかけている新生銀行との資産比較表である。
~この表から見えるもの~
◆SBI傘下7行の2021年3月期の純資産残高は、前期比378億3,600万円増の5,408億2,800万円(同7.5%増)。
一方、新生銀行の純資産残高は、前期比202億5,700万円増の9,307億4,200万円(同2.2%増)。
もしSBIのTOBが成立し新生銀行が傘下行に加われば、純資産残高の合計は1兆4,715億7,000万円となる。その場合、傘下7行のシェアは36.8%。新生銀行は63.2%と、圧倒的に高いことがわかる。
TOBをしかけたSBIの純資産残高は3,924億8,500万円であり、新生銀行の42.2%しかなく、小が大を飲む構図である。
◆傘下7行の総資産残高は、前期比1兆1,639億2,500万円増の11兆9,413億1,900万円(同10.8%増)。新生銀行は前期比5,136億300万円の10兆2,265億7,100万円(同5.0%増)。
・新生銀行を加えた合計は22兆6,814億9,300万円。シェアは傘下7行が52.6%。新生銀行が47.4%と、ほぼ5割を占めている。▼関連記事
山口FG
SBIホールディングスと「地方創生」で提携【表2】はSBI傘下7行と新生銀行の資産比較表である。
~この表から見えるもの~
◆SBIが島根銀行と業務提携したのは、2年前の2019年9月。11月に福島銀行。20年は1月に筑邦銀行、2月に清水銀行、10月に東和銀行、11月にじもとHD、21年5月に筑波銀行。わずか2年の間に地銀7行(うち第二地銀5行)と業務提携している。
◆今回、都銀でもなく地銀でもない一匹狼の新生銀行に的を絞っている。東証一部上場で、主要株主の筆頭はSBIで19.85%。2位は預金保険機構 12.50%。3位は(株)整理回収機構 9.28%。新生銀行は、前身の日本長期信用銀行を含め1998年と2000年に合わせて3,700億円の公的資金が投入された。
国は、預金保険機構と整理回収機構と合わせると、新生銀行の21.78%の株式をもっており、今も帳簿上の価格で2,100億円余りを残している。今回SBIが示した2,000円で株式を売却すれば損失が生じることになる。
SBIはTOBが成立した場合、新生銀行の収益力を高めて公的資金を返済すれば、経営権を手中に収めることができると判断し、周到にTOBをしかけていることが読み取れる。<まとめ>
SBIは今月9日、新生銀行に対し、「9月10日から10月25日までの期間、一株あたり2,000円、総額およそ1,100億円を投じて最大48%」まで、株式を買い増す公開買い付け(TOB)に踏み切る」と発表。それに対して、新生銀行は事前に連絡を受けておらず、当行取締役会の賛同を得て行われたものではないと応酬。
SBIは、TOBが成立した場合には、取締役会長に元金融庁長官の五味廣文氏を起用するなど、
役員の全部または一部を交代させる構えを見せている。一方、新生銀行はTOBへの対応策として、「ポイズンピル」や「ホワイトナイト」といった手段を検討しているといわれる。その後、双方は夫々の立場から声明を発表しているが、敵対的なTOBの様相を呈しているのが現状である。
このまま敵対的なTOBが展開されることになれば、どちらが勝っても双方とも大きな禍根を残すことになり、SBIは今後、地銀との資本業務提携がスムーズにいかなく恐れがある。一方、新生銀行は公的資金の返済を早急に進めなくてはならない。
このような状況下である今こそ、SBIと新生銀行はともに一歩引き下がり、冷静に将来を展望するチャンスととらえるべきではなかろうか。つまり、SBIは新生銀行の工藤英之代表取締役社長など現経営陣の経営体制を認めること。ただし、五味広文元金融庁長官は、国との交渉をスムーズにするための切り札として代表取締役会長に迎えるなど、お互いに妥協点を見出しながら、「友好的なTOB」に転換することが求められているのではないだろうか。
(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】
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