2024年11月26日( 火 )

芸備線存続・活性化に向けた沿線の取り組み(前)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

自然災害により存続の危機に

鉄道 イメージ 芸備線の山ノ内~備中神代間は、輸送密度が極端に少ないことから、存続の危機にある。2021年6月に、JR西日本の広島支社と岡山支社は、同区間の今後の運行の在り方や、利用促進策を地元自治体や住民と協議する組織を設置する意向を発表した。

 そして、同年10月8日には、今後の在り方を検討する2回目の会議が開かれ、JR西日本や沿線自治体、そこへ広島・岡山両県の関係者が加わり、意見を交わした。

 芸備線の存廃の危機は、今回が最初ではなく、過去にも2度ほど、自然災害で被災して存続が危ぶまれたことがあった。

 1回目は、2018年7月7日に集中豪雨で、狩留家~白木山間の三篠川にかかる第1三篠川橋梁が崩落したことに加え、複数箇所で土砂崩れや路盤流出なども発生したことで、全線不通となる。そのときは、全線復旧するまで1年近くを要する見込みとされ、復旧には1年3カ月も要した。

 2回目は、2020年7月14日の集中豪雨の影響で、全線で運転見合わせたが、備中神代~東城間は、同日午後8時に運転が再開された。上三田~中三田間で斜面の崩落などが発生し、東城~下深川間が不通となったが、幸いなことに1カ月後に全線が復旧した。このように自然災害が発生して線路が被災すると、芸備線の存続が危惧されるようになる。

 この検討会議の目的は、芸備線沿線の広島県庄原市と、岡山県新見市を結ぶ区間の利用促進などを考えることである。対象の区間は、少子高齢化や人口の減少にともない、利用者が減少したため、1日当たりの乗客が1ケタにとどまる駅もある状況となっている。

 沿線には「帝釈峡」などの観光地もあるため、会議ではJR西日本の広島・岡山の両支社から、秋の行楽シーズンに向け、10月下旬から12月に掛けて、快速「庄原ライナー」などの臨時列車を運転することが報告された。

 芸備線の活性化を模索するのは、今回が初めてではなく、かつては高速化などが検討された。1991年には、振り子式気動車を投入して、高速化が要求され、同年11月にはJR四国の特急用の振り子式気動車を借りて、試運転が東城~広島駅間で行われた。

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 また2006年には、地元経済界が芸備線と木次線の大幅な高速化を提言した。さらに広島支社から本社に対し、広島周辺の一部区間の電化などの要望が挙がっていた。ただ過去にJR西日本管内で実施された山陰本線の出雲市~益田間の高速化などの整備事業は、ほとんどが地元負担となっており、これが原因で地元としても芸備線の活性化に対して、二の足を踏んだといえる。

 庄原市からは、「利用促進プロデューサー」を2021年8月に設置し、潜在ニーズを発掘していくことなどが発表された。

 JR西日本広島支社の宮本晃副支社長は、「たくさんのアイデアをいただき、本当に感謝いたしますし、大変心強く感じている」という旨が、述べられた。次回の検討会は、来年1月に庄原市で開かれる予定である。

老朽化のため新型気動車導入が不可欠

 芸備線の活性化を考える場合、(1)広島~三次間、(2)三次~備後落合間、(3)備後落合~新見(備中神代)間の3つに、分けて考える必要がある。

(1)広島~三次間

 この区間は、芸備線のなかでも運行本数が多く、広島~三次間で1時間に1本程度運転されている。また広島の通勤・通学圏である広島~下深川・狩留家・志和口間は、区間運転の列車も運転されている。芸備線のなかでも、とくに利用客数の多い広島~下深川・狩留家間は、快速を含めて日中約20~30分間隔で運転されていることから、電化を行ってサービス改善を図る区間である。

 普通列車以外に、快速「みよしライナー」を設定。平日は2往復だが、土・休日は4往復設定されており、所要時間は約1時間20分。急行「みよし」時代は、1時間10分であったことから、幾分、所要時間が延びている。

 2019年10月26日~ 同年12月8日までは、土曜・日曜・祝日の計15日間ではあるが、快速「みよしライナー」のうち、1復を延長するかたちで、広島~備後庄原間で快速「庄原ライナー」が運転された。この列車は、快速「みよしライナー」のうち、1復を延長するかたちで、午前中に上り1本、夕方に下り1本が運転され、三次~備後庄原間はノンストップであったことから、備後庄原地区の人が広島へ出掛ける際の利便性を考慮しての設定といえる。

 筆者個人としては、広島~三次間の最高運転速度を100km/hに向上させると同時に、新型気動車を導入して、スピードアップを図る必要があると思う。広島で新幹線と接続することから、急行列車の復活も視野に入れても良いと考えるが、広島県は高速化に対して消極的である。使用される気動車が老朽化しており、新型気動車の導入は不可欠である。

(つづく)

(後)

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