2024年12月23日( 月 )

世界中で旋風を巻き起こす「韓国コンテンツ」(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

韓国コンテンツが成功を収めた背景は

 韓国のコンテンツ市場だけでは市場規模が小さすぎる。そこで韓国コンテンツは、最初から中国などの海外をターゲットにすることが多かった。しかし、THAAD配備問題により、中国市場で韓国コンテンツが排除されるようになった時期、ネットフリックスの韓国市場への進出があった。

 韓国のコンテンツは、ネットフリックスとの出会いによって、世界的な配給網を確保することとなった。ネットフリックスで韓国のドラマや映画が全世界に同時配信されるようになったことが韓国コンテンツの成功要因の1つだろう。

 1997年設立のネットフリックス社は全世界で2億900万名の会員を確保(2021年6月時点)している。同社が韓国でサービスをスタートさせたのが2016年のこと。その後、2020年までの4年間で累計約740億円投資し、約80本の作品を全世界に配信してきた。また同社は韓国コンテンツを全世界に広めるために、最大31言語の字幕を付けるとともに最大20言語で吹替を行い、韓国コンテンツを世界の至るところに届けるべく努力してきた。

 そうした努力が実を結び、韓国コンテンツはネットフリックスの配信網に乗って全世界に同時配信され、多くの人々に愛されるようになった。現在、韓国コンテンツのファンはネットフリックスが韓国に進出した5年前とは比較にならないほど全世界で増加している。

ウェブトゥーン を見る女性 イメージ 韓国コンテンツのもう1つの成功要因としてデジタル化の波にうまく乗ったことがあげられる。デジタル化は従来のコンテンツの流通を大きく変えたが、韓国はその波にうまく乗ったといえる。デジタル化は変化が激しく、会員の参加も可能になるが、韓国はデジタル化の特徴をいち早く理解し、それに効果的に対応し、現在の成功を引き出している。

 最後の成功要因として「共感をもちやすい」という点が挙げられる。事件に焦点を当てるよりも感情を繊細に描くことによって作品により深い味を引き出しているからだ。だが、ネットフリックスによって韓国コンテンツが世界中の人々に楽しまれるようになったものの、権利すべてがネットフリックスに明け渡され、制作会社や関係者には一切のインセンティブがないことが問題点として指摘されている。

次の成長エンジンはウェブトゥーン

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 ウェブトゥーンとは、インターネットを意味する web(ウェブ)と、漫画・アニメを意味する Cartoon(カートゥーン)を組み合わせた造語である。日本のウェブ漫画とも少し意味合いが異なる。

 ウェブトゥーンが韓国で盛り上がり始めたのは1990年代末〜2000年代初め頃。当時の漫画出版業界はインターネット時代の到来とともに不況の波に見舞われた。そのような状況下、漫画家たちは自身のウェブサイトを作成し、作品を載せ始めた。

 03年頃からはポータルサイトを中心にウェブトゥーンが掲載され始めた。2010年代以降はスマートフォンの時代が到来。ネイバーやカカオといった韓国のプラットフォームがウェブトゥーンの配信を開始し、その後、ウェブトゥーンは韓国にとどまらず、日本や中国、タイなどアジアを中心に、世界に広がり始めた。

 すなわち、従来の漫画は紙ベースだったが、それがデジタル化できることにいち早く気づいた韓国企業がオンライン漫画のシステムを構築し、ウェブトウーンの世界化に成功したわけだ。

 ネットフリックスが20年にドラマ化して大ヒットを記録した「梨泰院クラス」も実はウェブトゥーンが原作だ。漫画アプリの世界ではピッコマが「圧倒的王者」として君臨している。今年1月から5月の漫画アプリの売上高はピッコマ(カカオジャパン) 49.79%、LINE漫画(ネイバーLINE)21.70%、 その他28.51%で、韓国の会社が日本でも市場を圧倒している。ちなみに漫画の世界市場規模は年15兆ウォンくらいで、そのなかで日本市場の規模は5兆7,000億ウォンを占めている。

 漫画市場のなかで52%(2兆9,640億ウォン)がデジタル漫画で占められている。一方、LINEマンガの世界での月間ユーザー数(MAU)は7,200万人規模だという。それにウェブトゥーンの多くは、「スタジオ型」の制作体制を採ることで、作品を「早く、多く」生産できるという。ウェブトゥーンでまず読者の反応をみて、そこで反響があったら、それをドラマや映画にするコンテンツ制作のパターンが定着しつつある。

 ウェブトゥーンは韓国発の新しい試みとしてスタートし、現在は世界的な広がりを見せている。自由な発想、多様な素材、世界から注目されているコンテンツ制作力などが相まって、韓国コンテンツは世界で飛躍を続けている。

(了)

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