2024年11月14日( 木 )

【IR福岡誘致開発特別連載66】IR長崎は予測通り“事実上の崩壊”

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

長崎県庁 イメージ    Yahoo!ニュース(デイリー新潮)は7日、「出資金3,500億円が集まらない」として、IR長崎の事実上の崩壊を伝える記事を掲載した。

 記事は、12月3日の長崎県議会で自民党会派の浅田ますみ議員(IR推進派)がIR推進課を傘下にもつ企画部長に質問し、紛糾した様子を伝えた。「総投資額3,500億円を落札者のカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン、メガバンクなどを含めた誰が負担するのか」との質問に対し、明確な回答がなく、無責任な態度で終始したと指摘し、事実上の崩壊であると報じた。

 筆者は連載の当初から、豊かな後背地人口を有する「大阪市中心の関西都市圏」、「福岡市中心の北部九州都市圏」、「東京都中心の関東都市圏」しか可能性はないと説明してきたが、その予測通りの展開となっている(「名古屋市中心の中部都市圏」は文化が異なる)。

 コロナ禍に限らず、IRビジネスは観光客を主体にした集客計画では不安定で採算性がなく、大都市圏でないと実現できないという“基本中の基本”を指摘してきた。

 政府は「カジノ=ギャンブル依存症」を理由とした反対意見を避けようと、「海外観光客のインバウンドにIRは必須」と説明せざるを得ないから、このような結果を招いたと言える。「安倍・トランプ密約」の経緯があり、大都市圏でないと採算性はないと説明すべきである。

 IR関連法の施設施行令で、ホテル客室、MICE施設の延べ床面積、最低収容人数など(国際会議)の下限を制限しているから、超大型施設の新設が必須となる。まさに、地方外しの法の建て付けとなっている。

▼おすすめ記事
IR長崎、地元の報道は「画竜点睛を欠いて」いる

 IR長崎の公開入札は、単にカジノオペレーターを選抜しただけで、事業母体(コンソーシアム)の組織組成提案者を選んだわけではない。さらに、日米経済安全保障問題に気づくことができず、後になって恣意的に中華系企業を外さざる得なかった。その結果、カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンに決定したのである。

 簡単にいうと、我が国の行政と地方の政治家のレベルでは、国際的なビジネスを実施するには能力不足なのだ。地方のマスコミもこの超巨大プロジェクトの本質を理解できず、一連の報道はポイントがずれて上部だけのものとなっている。

 今頃になって、長崎県議会も行政も「巨額の投資額を誰がどう負担するか?」などと騒ぐのは愚の骨頂だ。これはRFP(提案依頼書)で行うべきだった。地銀などはIRの巨額投資に対応できる能力がなく、世界的な投資銀行かメガバンクなどの参加がない限り、実行は不可能である。

 前述したように巨大施設の建設が必須のため3,500億円もの投資となり、それを賄うために年間840万人の集客計画をこじつけて作成したとみられる。ハウステンボス(過去最高の集客数は約300万人)でさえ閉鎖の危機に直面しているのに、無理やり行政御用達のアナリストに計画を作成させても通用しない。

 重ねて提言するが、中村法道知事を筆頭に税金の無駄遣いを止めて、速やかに政治判断を示すべきである。

【青木 義彦】

(65)
(67)

関連キーワード

関連記事