2030年がゴールではない 長期的な視野で持続的なまちづくりを
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(株)アクロテリオン 代表取締役
下川 弘 氏再開発の真っ只なかで 都市の記憶をいかに残すか
「まちづくりや都市計画において、今の時代は持続可能性を考えたSDGs的な視点が欠かせません。ですが、忘れてはならないのは、まちづくりは2030年がゴールというわけではなく、その先もずっと続いていくということ。近視眼的に行きあたりばったりでまちをつくっていくのではなく、50年先、100年先の未来も見据えながら長期的な視野でのグランドデザインを描いたうえで、先人の想いを引き継いでいくまちづくりの仕組みをつくっていくことが大事だと思います」――と語るのは、福岡の将来的なまちづくり提案などを行うC&C21研究会・理事の下川弘氏。現在、同氏は自身の会社として立ち上げた、建設コンサルタントなどを手がける(株)アクロテリオンの代表取締役も務めている。
下川氏が自らの会社名に冠した「アクロテリオン」とは、パルテノン神殿などのギリシア・ローマ建築における破風の頂などを飾る彫像のこと。悠久の時を経て今なお存在感を示し続ける建造物に敬意を表しつつ、自身のまちづくりへの考え方を表すシンボルとして掲げた。
その下川氏は、「福岡市の街なかでは現在、再開発によって昭和・平成時代の良い建物が次々と壊されていっていますが、建築物はある意味、そのまちにおけるその時々の時代の象徴であり、都市の記憶の一部です。壊すだけでなく、どう残していくかを検討していくことも、持続可能な都市開発においては必要なのではないでしょうか」と、福岡のまちの現状について警鐘を鳴らす。
国内外に目を向け都市間競争に打ち勝つ
一方で下川氏は、福岡の将来を考えるうえでは、国内だけでなく国外の他都市にも目を向ける必要性を指摘。たとえば近隣のアジア諸国では、国際的な競争力を有する都市が加速度的に成長を遂げてきており、このまま手をこまねいていては、これからの都市間競争で後塵を拝することになる、と危惧する。
「これまで『アジアの玄関口』を標榜してきた福岡ですが、たとえば24時間利用できず、キャパシティの限界も近づいている現在の福岡空港をこの先何十年も使い続けていては、いずれ『勝手口』にすらなれなくなるでしょう。あってはならないことですが、仮にこの先、南海トラフ巨大地震や富士山噴火などの発生で首都機能がマヒしてしまった場合、受け皿となり得る場所はここ福岡だと思っています。国内外の他都市に後れを取らぬよう、福岡の都市力をさらに高めていくことが必要ですし、そのための将来に向けてのグランドデザインを今こそ考えていくべきだと思います」(下川氏)。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:下川 弘
所在地:福岡市博多区美野島4-1-5-1305
設 立:2019年6月
<プロフィール>
下川 弘(しもかわ ひろし)
1961年11月、福岡県飯塚市出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築営業本部やベトナム現地法人、本社土木事業本部・営業部長などを経て、20年9月からは九州支店建築営業部・営業部長を務め、21年11月末に退職。現在は(株)アクロテリオン・代表取締役を務める。ほかにC&C21研究会・理事やハートフルリンクアジア協同組合代表理事など。関連キーワード
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