2024年09月08日( 日 )

ニーズと地域のまちづくりを紡ぐ 建設を通して地域社会に貢献(後)

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(株)スエナガ

 2014年7月に設立された総合建設業の(株)スエナガ。7期目に入った今年6月中旬には新社屋へ移転し、業務環境を整え、さらなる進化を目指す。同社は設立以来、賃貸マンション、戸建住宅、医療・福祉施設など幅広いジャンルの施工実績を積み上げる新鋭の地場ゼネコンとして注目されている。昨春から福祉関連の事業に進出するなど、新たな境地を開く。

「建設を通した地域社会への貢献」という信念(つづき)

 その一方で、出口代表は以前から次のように述べている。

 「現況に甘んじていては、お客さまに有益な提案を実践することはできません。土地オーナーと開業医のマッチング事業は、今やどのゼネコンも実施しています。このため、今後は独自の取り組みをつくり上げて、事業化することが求められています。従来のRC建築が中心の提案を含め、今までの他社と変わらない提案ではやや厳しい状況にあります。なぜなら、資材や工賃など建築コストの高騰が続いているからです。地場が手がけてきた事業に、大手筋も進出してきています。コストと工期を適正化しながら生産性を高める創造性が問われてきます」。そして「オーナーとお話しするなかで、もっと有効な資産活用ができないものかと吟味してきました。それが福祉です」(安辺常務)という。

福祉事業とオリジナルプランを連動させる

シンフォニー 外観
シンフォニー 外観

 出口代表は、同社設立当初から福祉の取り組みを模索してきた。

 同社はこれまでに、多数の医療・福祉施設の建築実績をもつ。そのなかには、パーキンソン病専門老人ホームなどの特殊な分野の施設もある。「私は設立当初より、自社で福祉関係の事業を展開する構想と計画はもっていました。社会情勢を見極めながら、事業の立ち上げを実施したのです」(出口代表)。

 同社が企画・施工、そして自社運営する生活介護・放課後などデイサービス・児童発達支援施設「多機能型事業所シンフォニー」(福岡市早良区有田7-7-30:平屋建て、敷地面積1,065m2、床面積422m2)が20年4月に竣工、6月に運営を開始した。

YOKATOKO野多目
YOKATOKO野多目

    さらに自社運営の第2弾として、日中サービス支援型障がい者グループホーム「YOKATOKO野多目」が22年5月にオープンする。他社運営施設との差別化として、同社オリジナルプラン(レリーフ)を採用する。

 同社が手がけるレリーフには次のような特長がある。

 (1)建築物の内外装へのプラチナ触媒コーティング。菌・ウイルス・カビ・汚れ・PM2.5など有害物資から365日守り続ける。

 (2)イオンクラスター換気システム。一般的なイオンクラスター発生機は空気中のイオン寿命が20秒間であるのに対し、同社が採用したイオンクラスター発生機はイオン寿命が120秒間となる。13カ国で特許を取得し、高濃度なイオンによる新型コロナウイルスの抑制効果が認められている。

 (3)オールミネラル水化システム。建築物内のすべての水をミネラル水にするシステム「ミネラルクリスター((株)クリスター製)」による。

 (4)太陽光発電システム。

 これらの同社オリジナルプランで、グループホームで生活する障がい者の方々の安全安心、そして健康面をサポートできる。今後は在来工法だけでなく、ツーバイフォー(2×4)工法による建設も検討中だ。

 「在来、2×4とも木材を使用する建築物です。木は人々の心に安らぎをもたらす効能があります。我々のレリーフ工法とともに木材を活用することで、グループホームの障がい者の方々が生き生きと過ごせる環境を提供できるよう、日夜研鑽の毎日です」(同)。

もっと地域社会に貢献するには?

シンフォニー 内観
シンフォニー 内観

    同社の「多機能型事業所シンフォニー」では、在宅で重度の障がいをもつ方々を受け入れている。また、出口代表は「現在、障がい者の方々は福岡市だけで約7万人います。受け入れ可能な障がい者グループホームは約1,000床です。完全に不足している状態です。当社は少しでも受け入れができる施設を提供し、障がい者のご家族が安心できる環境の整備に努めたいです」と厳しい施設数の実態について語る。

 「障がい者とご家族を救うために、微力ながらも障がい者施設を」(同)。そのうえで「我々が建設業を通してもっと地域社会に貢献するには、どうすることがベストなのかを思考しながら事業展開を進めています。その1つが自社で福祉事業を手がけることであり、オーナーへの提案力も今まで以上に高めていけると自負しています。オーナーからは当社の福祉施設の建設提案に対して、社会的意義が大きいとして好評・好感触を得ています」(同)。
 同社は、土地オーナーおよび関係団体・企業と協業した「福祉のまちづくりプロジェクト」を重要なモデルと位置付けて、積極的に事業を推進している。

 「今後は同業他社も進出してくる公算が大きいです。それでも我々は、一歩先の提案を実現するように日々研究・開発を貪欲に続けるのみです」(同)。同社の建設とプラスアルファの福祉による地域活性化は、独自性の事業展開として業界内外で注目されている。

(了)

【河原 清明】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:出口 洋一
所在地:福岡市城南区堤1-13-30
設 立:2014年7月
資本金:3,700万円

(前)

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