【特別インタビュー】福岡最後の傑物政治家 武田良太の「国盗り物語」(後)
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衆議院議員 武田 良太
岸田政権の誕生以降、どこか影の薄い二階派。権力の座を追われた菅首相誕生の立役者だった二階俊博氏の失脚によって、二階派は他派閥の草刈り場になるとの見方すらある。そんな二階派にあってひとり気を吐くのが福岡11区選出の衆議院議員、武田良太氏(53)だ。筑豊魂を地で行く「喧嘩(けんか)上等」の政治姿勢は時にさまざまな軋轢を生むものの、かつての自民党政治家が身に宿していた強烈な自負と矜持を漂わせるその姿に、早くも“筑豊から総理総裁を”と期待する声は多い。
(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役社長・児玉 直)選挙は自分の力で勝ち抜くべき
──福岡県選出の自民党代議士が小粒になってしまいました。麻生さんをのぞけば、中央で活躍できるのは武田さんだけでしょう。
武田 そんなことはない(笑)。でも、今回の選挙で山本(幸三・福岡10区)さんと三原(朝彦・9区)さんが落選されて、福岡の自民党で麻生さんの次っていうと私になってしまいましたね。
──トップを狙うのであれば、やはり派閥の力は必要。
武田 それはもちろん大事です。政治家としてのベースというか足場ですよ。派閥の規模の問題ではなく足場をしっかり持っていないと力を出せないし、それがないと戦えないですから。政局とか政変においても影響力を出せるようにやっていくことが大事ではないでしょうか。もちろん党務や政務をこなすことは前提の話です。
やはり、政治の世界を生きてきて痛感しているのは、経験の力が大きいということです。いろいろな局面に対する経験が潜在的に体内に宿っていて、それが発揮できるかどうかということで、それがないと政治家としては生き残れない。だからある程度の年輪も必要だと思います。選挙にしても、いまはまだ自民党にフォロー(追い風)の選挙が続いていますが、これがアゲインスト(向かい風)になったらどうするのか。実際、いま当選4回生とかは危ない方がいっぱいいますよね。そういうものも見ておかなければなりません。
──神経が常人の100倍くらい太くないと国政はできない。
武田 コロナ禍で巣ごもりが続き、おいそれと外食もできなければ酒も飲めない。しかもそのなかで政府の対応をマスコミに批判された。しかし、菅さんから「頼むから総務省が立ち上がってくれ」と言われて懸命に取り組んできました。なぜかというと、ワクチン接種の事業主体は市町村なんですね。だからそこをフルに動かすためには総務省の力が必要だと。おかげさまでいま、2回接種を終えた65歳以上の方は9割を超えています。国民全体でも8割近く接種しましたので、この実績は菅内閣にとってとても大きなものでした。だからこそ私は「実績を訴えて、堂々と総裁選挙に打って出ればいい」と菅さんに申し上げたんですけどね。おそらく最高指導者には独特の孤独感と孤立感があったんだろうと思います。
──お話を聞くにつれ、経験のない若輩政治家が総理総裁ポストにつくのはやはり無理だと思わされますね。積み重ねが必要で。
武田 国民から評価されるのはもちろんですが、党内でも影響力をもつこと。この両輪が備わっていないと無理ですね。
10年以内に「国盗り」も実現?
──北九州では2人の自民党議員が落選しました。
武田 北九州ってもともと自民党はあまり強くないんですよ。だから昔は民社党系の市長ばかかりでしたし、9区では新日鐵労組もまだまだ強いですから。
──気の早い話ですが、来年(2023年)初頭には北九州市長選があります。ご自身の選挙区でないとはいえ関係の深い地域ですので、なんらかの関わりもあるのでは。
武田 すでにいろいろな方から相談をもちかけられているんですよ。「だれか探してくれ」って。
──また小倉高校出身のお役人でも連れてきますか。
武田 いやいや(笑)。ただ、出身者となると小倉高校か東筑が強いのは確かでしょうね。これまでは山本さんと三原さんがおられたので私もあまり介入しなかったが、自民党市議団からも声がかかっていますので動かなければならないでしょう。
──民間よりも役人ですか。
武田 いや、私は必ずしも行政経験者じゃなくてもいいと思っているんです。どなたか民間人で良い方がいらっしゃればぜひお願いしたいところです。たとえば経営者として実績があって、北九州の将来のことを考えられる良い方がいらっしゃらないかと。
──岸田政権をどう見ますか。
武田 やはり新しい変異株、オミクロンの感染拡大が心配です。どんどん市中感染が増えてきたらコロナ禍の最初のころと同じことになってしまいます。新型コロナウイルスも最初のころは「インフルエンザより軽い」なんて妙な都市伝説が流布していたじゃないですか。人類はまだコロナウイルスについて十分な知見を備えていないわけですから、予断を許しません。感染状況がどのくらい広がるのかによって岸田政権の支持率も変わってくるでしょう。私が懸念しているのは年末年始にかけてどんどん人流が増えていることです。私も空港をよく利用しますが、明らかに人が増えているのを体感していますよ。だから1月から2月にかけての広がりがちょっと怖いですね。感染ピークはおそらくそれ以降にやってくると思います。
政府は2年間の経済対策で大きな補正予算を組むわけです。78兆9,000億円の経済対策という巨大なものですが、それとは別に感染拡大防止策をどうするのかが大事になります。オミクロンの行方は当然、夏の参院選にも影響してくるでしょう。参議院選挙って政局に与える影響力が大きくて、国会がまわらなくなるので落とすわけにはいかない。たとえば菅さんの支持率が30%台になったときに「菅じゃ選挙に勝てない」と政局にもっていったグループがあります。選挙に勝てないから総裁を変えるというのはいかがなものかと思いますが、じゃあ岸田さんにも同じことを言うのかと。
選挙については私も苦労してきましたので、いつも若手に言っていますよ。「どんな状況でも自分の力で勝たなきゃだめなんだ」と。いまは党の支持率が高いのでぽんと簡単に勝っちゃうことが多いですが、参院選前に逆風が吹いたらそうはいきません。
──今後もいろいろな役職がまわってくると思いますが、次はどんなポストで腕をふるいますか。
武田 与えられたものはすべて受けるつもりですが、できれば党務をやらせていただきたいと思っています。閣僚をしていると、予算委員会を含むさまざまな委員会に縛られて政治活動が何もできなくなるんですよ。この間とくに総務省がコロナ対策で忙しかったという事情はあるにせよ、なにもできなかった。党務を担うことで、たとえば各界各層との広がりもつくれますので、ぜひやらせていただきたい。
──二階派も世代交代が進むでしょう。
武田 伊吹文明・元衆院議長も河村建夫・元官房長官も勇退されましたからね。いま若手についてはすべて私に任せてくださっています。だから今回、事務総長ということもありますが、若手の全員にそれぞれどんな分野の仕事をしたいかどんなポストにつきたいのかの聞き取りをしたうえで人事をやりましたから。
――まずは派閥運営を身に着けて周囲を固めると。そうなると60歳手前、あと10年以内には「国盗り」の勝負に動くということですか。
武田 政治家である以上は当然目指すべきところではありますが、さて、どうなんでしょうか(笑)。
(了)
【まとめ・構成:データ・マックス編集部】
<プロフィール>
武田 良太(たけだ・りょうた)
1968年、福岡県田川郡赤池町(現・福智町)生まれ。明治学園中学校から県立小倉高校を経て早稲田大学卒業。亀井静香衆議院議員の秘書を経て1993年、旧福岡4区から自民党公認で出馬も落選。96年と2000年の衆議院議員総選挙にも連続落選。03年の第43回衆議院議員総選挙で福岡11区から出馬して初当選し、自民党に入党。05年9月の第44回衆議院議員総選挙では自民党公認を得られず無所属で出馬して再選。復党後は山崎派に所属。09年、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。08年8月、福田康夫改造内閣において防衛大臣政務官。13年9月、第2次安倍内閣で防衛副大臣。19年9月、第4次安倍第2次改造内閣で国家公安委員会委員長、行政改革担当大臣、国家公務員制度担当大臣、国土強靭化担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災)として初入閣。20年9月、菅義偉内閣で総務大臣。21年10月31日の第49回衆議院議員総選挙で7選。関連記事
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