M&Aで九州・中国エリア圧倒的No.1へ コロナ禍経て英進館が得たものとは?(後)
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英進館(株) 代表取締役社長
筒井 俊英 氏学習塾運営・英進館(株)は2021年10月、CLSAキャピタルパートナーズがアドバイザーを務めるSunrise Capital IIなどから株式を取得し、広島市を中心に中国地方で学習塾・田中学習会を運営する(株)ビーシー・イングス(広島市、以下BCI)を子会社化した。広島県内の多数の公立高校の入試で合格者数 No.1を誇る同社を傘下に収めることで、英進館グループは九州・中国地方で他社の追随を許さない学習塾グループとなった。同社の筒井俊英社長に、M&Aの狙いやコロナ禍の学習塾運営などについて話を聞いた。
コロナ禍でも支持された「対面」
──集団塾の強みの1つは「対面の緊張感」だと思いますが、現時点で何割くらいがオンライン配信の授業を受けているのでしょうか。
筒井 生徒にはオンライン配信か対面かのどちらかを選択できる仕組みを提供していますが、現在ではほぼすべての生徒が対面授業を選択しています。コロナ禍以前にもオンライン配信を行う学習塾は数多くありました。オンライン配信の仕組みは時間の効率化という意味では非常に大きなメリットがあります。
保護者の方々が英進館を選んでくださる理由の1つは、対面の緊張感や子どもたちがより切磋琢磨できる環境があるからだと思います。当社もそうした保護者からのニーズに甘えてきたことは否定できませんが、奇しくもコロナ禍は授業のオンライン化という新たな挑戦をする機会をつくってくれました。緊急事態宣言で、いわば強制的にオンライン配信だけで授業を行う環境となったのです。
幸いなことに退塾する生徒もほとんど出ることなく、最初の緊急事態宣言解除を迎えることができました。20年5月末の時点では、すでに生徒もオンライン配信の環境に慣れ、「何度も見返すことができる」「わかっているところは飛ばすことができる」「通学時間ゼロ」というようなメリットを十分理解していたと思います。それにもかかわらず、20年6月、緊急事態宣言が明けたことで対面かオンラインかを選択する際、95%以上の生徒が対面を選択したのです。授業の緊張感、生徒間の競争意識というものは、やはりオンラインでは得られにくいと生徒も感じたということでしょう。
コロナ禍の21年3月期は、第1四半期に緊急事態宣言が出たこともあり、当時は「生徒減、売上減は免れないだろう」と考えていました。しかし、結果的には増収を継続できましたし、22年3月期も増収の見込みです。生徒数もこの1年で1,700名以上の増加となりました。
圧倒的No.1へ さらなる出店計画
──BCIの子会社化によって、九州と中国地方では大きなシェアを握ることになりました。関西地方への進出や九州・中国地方でのさらなる出店計画はありますか。
筒井 関西地方は大変な激戦区ですので、中途半端に進出することは無謀だと考えています。少なくとも、しばらく関東・関西をはじめ、ほかの地域への進出計画は白紙です。ただ、九州・中国地方での出店はもちろん考えています。九州では長崎県・佐賀県・大分県・宮崎県・鹿児島県などはまだまだ校舎の数が少ないため、各県でさらに4~5校舎は出店できるとみています。BCIでも岡山県、四国地方に出店の可能性があります。
──コロナ禍でオンライン配信のインフラが整備されましたが、改めてみえてきた課題などはありますか。
筒井 中学生の生徒にはタブレットを配布して、同世代の周りの友人やライバルたちの考え・意見にできるだけ多く触れるようにしていますが、製造業などと違ってDXによる効率化にはほど遠い状況です。もちろん、生徒にとっては便利で有用なツールだと思って提供していますが、とくに教師にとっては負担が増えてしまっています。申し上げてきた通り、当社の強みは対面の集団塾であることで最大限に発揮されます。AIを用いた学習方法は、その多くが「自ら進んで取り組める生徒にとっては有用」なのですが、対面の集団塾というアナログ要素とかけ合わせた教育では、効率化の面で課題が残ります。きめ細かいサポートが欠かせないからです。この部分については、就業環境整備の観点からもまだまだ課題があり、経営者として取り組んでいかなければならないところです。
コロナ禍ではさまざまな転換を余儀なくされましたし、そのために多大なコストも割いてきました。それでも、改めて感じるのは、良くも悪くも英進館という学習塾の在り方は変わらないということです。「結果(=生徒の志望校合格)」にこだわり、がむしゃらに全社一丸となってコミットする、これが英進館なのです。
(了)
【聞き手・文・構成:永上 隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:筒井 俊英
所在地:福岡市中央区今泉1-11-12
創 業:1979年4月
資本金:5,000万円
売上高:(21/3)126億円
<プロフィール>
筒井 俊英(つつい としひで)
1969年生まれ。88年久留米大学附設高校卒、同年東京大学に入学し、92年東大工学部を卒後、英進館(株)に入社。在職中の95年に九州大学医学部に合格し、2001年首席で卒業。九大付属病院に勤務後、02年英進館に復帰。04年11月代表取締役社長に就任。(株)メビオ、(株)YMS代表取締役社長、経産省「未来の教室」とEdTech研究会委員、(公社)全国学習塾協会副会長など兼任。社長業の傍ら現在も教壇に立つ。法人名
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