2024年12月23日( 月 )

時価総額1兆円企業を目指す 未開拓分野に挑戦(後)

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(株)フロンティア
代表取締役社長 山田 紀之 氏

 福岡市中央区に拠点を置き、自動車部品販売のほか、OEM/ODM事業も手がける(株)フロンティア。2021年11月1日にQ-Boardに上場した同社は、永続する企業を目指しビジネスモデルの構築や組織づくりに取り組んでいる。同社代表取締役社長・山田紀之氏に話を聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)

永遠に続く会社づくり(つづき)

(株)フロンティア 代表取締役社長 山田 紀之 氏
(株)フロンティア
代表取締役社長 山田 紀之 氏

    ──山田社長の理想とする組織体系とは、どういうものでしょうか。

 山田 私には、「1回立ち上げたからには永遠に続く組織体をつくりたい」という思いがあります。そのためには、社長がいなくても、社員だけの力で走り出せる組織体系をつくり上げていくことが大事です。私は1人で創業し、今までさまざまな業務をこなしてきました。今は楽しく毎日を過ごす仲間がいて、一緒に会社を盛り上げようと奔走してくれています。今まで培ってきた当社のプロセスを新入社員に引き継いでいき、私が関わらなくても新商品を開発し、トラブルが起こっても組織的にリカバリーできるような自立した組織をつくっていきたいと思います。「フロンティア」という当社の社名には、「未開拓の分野において果敢に挑戦すること」という意味があります。もし仮に、我々が今手がけている事業モデルがなくなったとしても、商品自体の変革から新しい市場へ参入し、組織を永続させていけるようにする。当社の社訓でもある「開拓者たれ」の精神を忘れないように、日々を過ごしていきたいと思います。

21年11月にQ-Boardへ フロンティアの思い

フロンティア 上場式
フロンティア 上場式

 ──Q-Boardに上場されました。上場までの過程を教えてください。

 山田 創業から2年後の03年12月に有限会社を設立し、08年5月に株式上場を見据え株式会社に改組しました。香港子会社を設立したのとほぼ同時期にアベノミクスで円安になり、それに加え上場準備コストなども重なり、赤字から債務超過に陥った時期もあったのですが、06年12月の最初の第三者割当増資以来、株主の皆さまに苦しい時を支えていただき、21年11月のQ-Boardへ上場時の公募増資による資金調達額4,278万円を含む1億2,678万円を調達させていただき、何とか乗り越えることができました。

 また、山口本社のときは、上場を目指しているにも関わらず、なかなか管理体制が整わず、安定した会社運営ができませんでした。そんなときに当社の非常勤取締役である前田隆さんから現在の拠点の紹介を受け、14年7月、福岡に支店を設立することを決めました。内部体制が確立したことで営業などにも良い影響が波及し、そこからは収益性も徐々に上昇し、18年7月27日に「TOKYO PRO Market」に上場、翌年には本社を福岡市に移転し、そのまま一般市場を目指しました。そして3年が経った21年11月1日、福岡証券取引所Q-Boardへ上場しました。

 ──Q-Boardに上場してから何か変化はありましたか。

 山田 まず、当社に興味をもってくださる方がすごく増えました。知らない企業からの売り込みや、国際郵便が届くこともあり驚きました。上場したい若者から直接話を聞きたいというお願いや、お客さまからの紹介も数多く受けています。また、初の試みとして22年卒から新卒採用を始めましたが、福岡だけでなく、九州では長崎・佐賀、遠方では神戸・大阪からも応募がありました。上場することで大変なことはもちろん増えましたが、社会的な信用も大きく違ってきますので、他人の目に恥じぬような行動をしようと自分に言い聞かせています。

 ──東証などほかの市場への参入は考えているのでしょうか。

 山田 企業の発展とともに次のステップは当然視野に入れています。Q-Boardに上場した際、なぜマザーズを目指さなかったのか、Q-Boardに上場する前にTOKYO PRO Marketに上場した理由は何かと聞かれることがありました。しかし、最初から高みを目指しすぎてなかなか目標を達成できず、同じ位置で足踏みしていては元も子もありません。私はできることから段階的に一歩ずつ上がっていくのが、一番効率の良い方法であると感じています。

福岡証券取引所で行われた上場式の様子
福岡証券取引所で行われた上場式の様子

 ──今後の会社のビジョンについてお聞かせください。

 山田 中長期のビジョンはもちろんありますが、まずはしっかりとBtoBで会社を成長させていきたいと思います。当社とお取引をされているクライアントさまがさらに利益を出せるような高品質、高パフォーマンスの商品を生み出していきます。また、ユニクロのようなビジネスモデル(SPA:SPAのAはApparelではなくAutomobileに置き換え)を自動車部品で採用し、ウェブ上でその仕組みを整えるということを10年かけて行っていきたいと考えています。現在、当社が手がけている商品の1つであるサイドバイザーとフロアマットで、約1,600億円の市場((株)自動車新聞社『月刊アフターマーケット別冊2021』より)があるといわれています。そのなかで当社が製造するような社外品は3%程度しか使用されていないなど、消費者にまだ全然認知されていない領域でもあります。上場したことで当社について知っていただけることも増えましたが、まだそれでは足りないと思いますので、自動車販売業者に足を運ぶなどして、地道に当社商品を知っていただける機会を増やしていきます。そして、いつかは時価総額1兆円の会社にする目標を叶えたいと思っています。

(了)

【文・構成:立野 夏海】


< COMPANY INFORMATION>
代 表:山田 紀之
所在地:福岡市中央区天神2-3-36
設 立:2003年12月
資本金:5,763万円
売上高:(21/11連結)16億7,655万円 


<プロフィール>
山田 紀之
(やまだ のりゆき)
1975年生まれ、山口県出身。95年4月山口トヨタ自動車(株)に入社。6年間勤めた後、2002年1月CARフロンティア山田を創業。03年(株)フロンティアを設立した。新域國際香港有限公司の董事長も務める。趣味は筋トレ。

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