中国経済新聞に学ぶ~キヤノン、なぜ中国のカメラ工場を閉鎖するのか(前)
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1月12日に中国で、「キヤノン珠海有限公司」の社印入りのメッセージがネット上に公開され、かなりの反響を呼んだ。「このところ世界的にカメラ市場が急激に悪化している上、長引く新型肺炎の影響もあり、未曽有の経営危機に陥っており……慎重に検討した末、生産を終了すると決定した」と記されていた。
キヤノン中国の広報担当は中国経済新聞に対し、キヤノン珠海が生産を終了し社員を解散させる段階に入っていることを認めた。ただ一方で、停止予定のラインは一部であり、具体的にいつ終了するのかは状況を見て判断するとした上、生産設備は「わずかに」残る、とも述べている。
中国からの撤退は否定
キヤノン珠海有限公司は、日本側が83.08%を、中国現地法人が16.92%を出資して、1990年1月15日に設立された。
操業32年におよぶ珠海工場は、キヤノンの中国拠点で唯一、デジタルカメラやビデオカメラ、レンズなど映像製品を生産している。最盛期には従業員数が1万人を超え、薄型カメラについては同社の全世界販売台数の半分を生産していた。
しかし、スマートフォンの普及でカメラ業界は大打撃をうけ、とくにポータブル式や薄型タイプの販売が大きく落ち込んだ。今回の工場閉鎖は、モバイルインターネット時代におけるデジタルカメラの敗北である。
これを受け、「キヤノンが中国から撤退」との噂も流れたが、これはデマである。キヤノン中国によると、中国は間違いなく「大切な市場の1つ」であるとしている。
従業員数は全盛期の10分の1
キヤノン珠海有限公司について公開情報をみると、設立時は珠海市板障山下の北側に位置し、レンズとカメラのみを生産していたが、後にプリンター、ファクシミリ、スキャナー、コンタクトイメージセンサー(接触式画像センサー)を手がけるようになった。2013年11月27日に珠海市高新区の金鼎工業団地に移転し、15億元をかけて面積20万m2の工場を建て、製品もレンズ、デジタルカメラやビデオカメラなど映像関連のものにシフトしていった。
ホームページの沿革を見ると、一番多い時で従業員数は1万2,000人、売上高は10億ドル以上に達している。
さらに、年間の環境レポートも掲載されており、2012年の段階では従業員数8,000人以上、デジタルカメラだけでも生産台数は1,093万台に達していたが、そのわずか3年後の2015年には4,300人、デジタルカメラの生産は483万台と、いずれも半分以下に落ち込んでいる。そして昨年11月発表の2020年版では、従業員数はわずか1,317人、デジタルカメラの生産は102万9000台で、いずれも全盛期の10分の1ほどに落ち込んでいる。
会社設立から30年となった2020年には、「常に世界を繁栄させ人類を幸せにすること」を目標とし、これからも成長を続けて、共生理念という道を目指して大きく前進する、と示されていた。
それもつかの間、この年初早々に、経営不振により操業を終了すると発表した。残された800人余りの社員も別れを告げる。各社員が大変な目に遭うことを重々承知している会社側は、話し合いで一致したうえで労働契約を解除すると表明し、さらには「法定基準を上回る補償金を用意し、従業員のケアに努めていく」と強調している。最終的な処遇については、話し合いで一致した日に発表することになる。
(つづく)
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