2024年12月24日( 火 )

【金融淘汰時代】銀行さん、どこに貸して稼ぐつもり?

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我々の仲間は5年後、すべて無借金!

銀行と建設業界 イメージ     A社はゼネコンの下請業者でありながら、毎期2億円の内部蓄積を積み上げてきた。もう10期は積み上げを継続しているだろう。しかし、かつてはゼネコンから連続して大口の焦げ付きを“浴び”ていた。

 「A社はもう駄目だ」と囁かれだしたのは2000年前後のことだった。しかし、12年から奇跡的にV字の回復軌道をたどり始めた。「A社は駄目さ」と言っていたある経営者は「まさしく奇跡。A社社長の執念が今日の地位を築いた」と感服する。

 ゼネコンの収益向上については、しばしば指摘してきた。経常利益10%をあげる企業は珍しくなくなった。A社も2012年以前は粗利二桁=10%を維持するのは容易ではなかったが、その後、福岡地区においては完工高100億円を超える企業が増加し、10億円の経常利益をあげる企業も珍しくなくなった。先だって金子建設(久留米市)に身売りした岩堀工務店も無借金であった。上位クラスでも借入ゼロの企業が目立つ。

 A社社長によると「建設業界における受注の活況が、あと5年続いたら我々、“下請仲間たち”は銀行に借り入れする必要がなくなるだろう。さぁ、どうしますか銀行さん」となる。

 福岡都心部に限っていえば受注の勢いは5年間続くと断言できる。なぜなら再開発工事が続くからだ。人口増で住宅を求める層が今後も増えるだろう(ただし、住宅金利がアップしないという条件付き)。

 下支えは官需によるものだ。福岡県・福岡市の賃貸アパートは立替え時期に差しかかっている。これらの仕事は下位ランクの業者を助けている。

抹殺される「地獄の時代」があった

 人間の記憶というものがいかにいい加減であるか、「建設業界がうらやましい」と叫ぶ輩を見ていて感じる。なぜならば、建設業界まるごと地獄へと転落する危機があったことをすっかり忘れているからである。

 まず1990年代後半には、「談合社会、犯罪者の巣窟」と社会的糾弾を受けた。官公庁からの受注を身内で根回し・同業者内でたらい回ししていたのをマスコミが批判し始めたのである。「税金を有効に活用して安く仕事を発注しろ!」との声に行政も「回れ右」して、安い見積もりで発注するようになった。

 2000年代になると、民間でも単価叩きが常識となった。最も犠牲となったのが各下請業種の職人さんたちだ。月収が手取り20万円を下回ることも珍しくなくなり、若手職人はほかの業種に転じていった。その結果、業界全体が職人不足となり、施工力が大幅に劣化してしまった。しかし、13年を境にして受注量が増加傾向となり、そのおかげで力関係が逆転した。筆者は建設業界を妬む人たちに対して「淘汰時代に生き残ってきた業者さんたちが恩恵に浴して何が悪いのか」と反論したい。

 こうなってくると金融機関はどこに融資して稼ぐのだろうか!銀行員たちはこれまで建設業者の方々にえらそうな口をきいてきたが、近いうちに「あなたたちこそ融資以外のビジネスモデルを構築しないと淘汰されますよ」という嘲りの声が多数聞こえてくるのではないだろうか。

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