「東急ハンズ」と「ロフト」売却 渋谷の変貌も影響(後)
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「若者の街」渋谷において生活雑貨の東急ハンズとロフトは最大のライバルだが、期せずして、東急ハンズとロフトの親会社の売却話が持ち上がった。ハンズとロフトの熱狂的なファンにはショッキングな話だろう。一体、何が起きたのだろうか。
都心型店舗中心の東急ハンズ
東急ハンズは、ホームセンター(HC)業界にあって独特な地位を築いてきた。生活雑貨を多く扱い、他のHCが郊外に店舗を構えているのに対し、東急ハンズは渋谷、新宿、銀座などの都心型の店舗が中心だ。人々が東急ハンズに抱くイメージは、ホームセンターではなく、生活雑貨の店だ。
ホームセンター業界大手は、東急ハンズを買収するカインズやDCMホールディングス(株)、コーナン商事(株)など。郊外店を展開する大半のHCでは、コロナにともなう巣ごもり需要の恩恵を受けた。家にいる時間が増え、ガーデニングやインテリアに関心を持つ人が多くなったことが要因だ。
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【大企業の「解体新書」】東芝解体の前にセゾングループの解体が(前)ところが東急ハンズは、都心型店舗が中心のため、百貨店同様、人出の減少がそのまま業績悪化につながったと報じられている。ホームセンターでくくれば、その通りだろう。だが、生活雑貨の店としてみれば、どうなのか。
再開発で渋谷を訪れる人が減った
東急ハンズは、雑貨の扱いが多く、流行の発信基地となっていた。国内雑貨のメーカーにとっては、東急ハンズと取引することがステータスだった。
東急ハンズのライバルは生活雑貨の店だ。旧セゾングループの「無印良品」を展開する(株)良品計画やロフト。とりわけ若者の街、渋谷で「ガチンコ対決」するロフトは最大のライバルだ。両社ともネット通販の台頭で魅力を失った面がある。スマホ時代を迎え、生活雑貨はスマホで買えるようになったからだ。
流通ジャーナリストの長浜淳之介氏は、「ITmedia」(22年1月27日付)で、東急ハンズが敗退した要因を分析し、「渋谷を訪れる人が減少したこと」を挙げる。
東急ハンズは本店にあたる渋谷店の集客が、全体におよぼす影響が大きい。ところが、渋谷店の集客は、渋谷の交通事情、商業事情に大きく左右される。
〈JR渋谷駅における乗客数の推移を1日平均で見ると、12年には41万人だったが、13年は38万人に下がった。また、14~19年は37万人となっている。13年に東急東横線ホームが地下化したことが影響し、渋谷駅を使う人は減っていた。なお、コロナ禍の20年は22万人に激減した〉
東急ハンズは、コロナ禍前から業績が伸び悩んでいた(下記参照)。長浜氏は、渋谷の商業事情の変化を挙げる。
〈17年頃より、20年に開催される予定の東京オリンピックを見据えて、渋谷の再開発が本格化していた。東急ハンズは、パルコ、ロフト、109などとともに、先進的といわれた渋谷文化の象徴だった。しかし、その渋谷が破壊され再構築〉されることになった。
渋谷の商業の変遷は、12年に東急文化会館から渋谷ヒカリエへと移行したのが転機となった。16年には、若者の街・渋谷の生みの親であるパルコが建替えのため閉店。東急ハンズは売却され、ロフトも売却されようとしている。若者の街・渋谷の黄昏である。
(了)
【森村和男】
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