2024年11月20日( 水 )

韓国の感染爆発 新規患者数が17万人に(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

なぜ患者が増えているのか

PCR検査 イメージ    韓国政府は「個人情報保護に反する」という批判にも関わらず、人の動線を把握し、濃厚接触者をできるだけ早く発見して検査を受けさせることで感染拡大を抑えようとした。韓国のそうした努力は一定の成果をあげ、韓国政府の対応は世界中から賞賛を浴びていた。ワクチンの接種率は86.4%で、世界でもトップレベルだった。ところが、オミクロン株の出現により、ワクチン接種にも関わらず、感染者が「爆増」している。

 ウイルスの構成成分は人体の構成成分と似ているため、免疫細胞が見つけにくい。従って、ウイルスタンパク質の構造を認識できる精巧な抗体が必要となってくるが、最初はこのような抗体が存在しないので、抗体が生成されないといけない。なお、抗体がつくられる間、感染の進行を止めるため、炎症が発生する。

 ウイルスが浸透する主なルートに皮膚と粘膜がある。粘膜は皮膚と違って湿気が多く、ウイルスが繁殖しやすい環境だ。オミクロン株は粘膜を素通りして、感染させる能力がある。粘膜を通過して呼吸器が感染すると、免疫細胞には打つ手がない。

 しかし、免疫というシステムは感染された場所に防疫力を集中させる。粘膜に感染すると粘膜に抗体が分泌され、人体内部が感染すると、人体内部に抗体が分泌される。ワクチンを接種するということは人体内部に抗体をつくることなので、粘膜でウイルスを防御しないといけない新型コロナウイルスには効果が薄くなる。また、デルタ株は変異が少なく、抗体がある程度認識できたが、オミクロン株は変異が多く、抗体を回避できるようになったので、ワクチンの効果が下がったというわけだ。

 一方、韓国で新規感染者数が「爆増」している原因には別の側面があるとの指摘もある。PCR検査は非常に感度の高い検査で、まだ感染された状態ではなく、粘膜に引っかかっているウイルスまで検出してしまうため、どうしても数字が大きくならざるを得ないという。

 しかし、現在では感染者の「爆増」によりPCR検査では対応しきれなくなり、PCR検査を受ける前に迅速診断キットを使って自宅などで検査をした後、陽性になったらPCR検査を受けるという政策に転換している。そうした流れを受け、15分前後で新型コロナウイルスの診断が可能な迅速診断キットの需要が急激に伸びつつある。また、病院、クリニック、診療所などでも、従来の方法では患者への対応ができないため、迅速診断キットを活用できるようにした。海外でも迅速診断キットの需要は多く、セルトリオン米国法人は米国国防総省、アマゾンなどに今年4月以降、約4,000億ウォン分の迅速診断キットを納品することとなった。

今後の行方と対応は

 幸いなことに、オミクロン株は感染力こそ非常に高いが、重症化率は高くなく、別の変異株が発生しない限り、数カ月後に新型コロナウイルスは終息するだろうというのが一般的な予想である。

 ひどい風邪の致死率は0.1%であるが、オミクロン株の致死率は風邪よりはまだ少し高い程度だということが判明している。各国政府は規制を強化することなく、徐々に日常生活に戻れるよう個人衛生を中心とした政策へ方針転換する計画である。

 マスクを外して以前のような生活に戻ることができるかどうかは、もう少し様子を見る必要があるが、世界各国がそれに向けて少しずつ動いているのは間違いない。オミクロン株向けの新しいワクチンの開発、治療薬の開発など、オミクロンを終息させる武器もそろい始めている。一日も早くコロナが終息し、以前のような生活に戻ることを願ってやまない。

(了)

(前)

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