ドローンが社会を変える 空の道整備で業界活性化へ(後)
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(株)トルビズオン 代表取締役社長
増本 衞 氏映像作品の撮影から構造物の点検に至るまで、近年はドローンがDXのツールとなる例が増えつつあるが、黎明期ゆえに抱える問題は多い。メーカーや通信事業者などさまざまな企業がドローン事業に取り組むなか、(株)トルビズオンはドローンが航行する「空の道」を整備することで業界の発展を目指す。同社代表取締役社長・増本衞氏に話をうかがった。
すべてはドローン産業の発展のために
――つまり、貴社のビジネスはこれから来る時代のインフラを先に押さえることになります。
増本衞氏(以下、増本) 先ほどもお話したように、概念としてまだ存在しないものもありますので既存の枠組みを使いながらですが、ドローン産業の発展は社会問題解決の一助になります。同じことを考えた方がいらっしゃるとは思いますが、私は同分野を初めて事業化したプレイヤーとして責任をもって完遂させたいと考えています。
「世界中の空を利用可能にする」という理想の実現のために、日本以外の国でもビジネスモデル特許を取得したいと考えていますが、1カ国あたり200万円ほどのコストがかかってしまいます。これはさすがに現実的ではないため、優先順位を決めて申請していく計画です。ただ、我々だけで空をすべて押さえる、ということは考えていません。もし、同じビジネスモデルの他社が登場したときにはライセンスなどを通して協業し、WIN-WINの関係でスピーディーに展開していきたいと考えています。
よく誤解されるのですが、当社の事業は地権者の権利を守るためだけに行っているのではありません。ビジネスとしてこれらの事業を成り立たせるため、システム利用料としてお金を支払っていただくビジネスモデルとなります。社会全体にとって最も望ましいかたちを構築すべく、国などの機関と連携しながらオープンイノベーション(自社だけでなく、他社や大学、地方自治体など外部の機関からアイデアや技術を募り、協働で新しいものを創出すること)で事業を進化させていきます。
――起業するにあたり、福岡の地は適していると感じていますか。
増本 私は下関市出身で大学から福岡に出てきました。14年に卒業した九州大学のビジネススクールでは地場企業との間でつながりが生まれ、起業後も福岡特有の産官学連携によって事業が推進された面があります。当社初の実証実験は、福岡市と福岡地域戦略推進協議会(FDC)の協力があり、九大箱崎キャンパス跡地内で行われました。ここでの実績が奏功し、つくば市や下関市との連携につながっていったと感じています。ドローンを利用した配送は、地方の過疎化や高齢化にともなう問題の解決の糸口になることができますし、当社の事業は地方創生の概念にも通じるところがあります。
また福岡市は創業特区として、スタートアップ支援の体制が整っています。当社の場合は「スタートアップカフェ(福岡市が運営する創業支援施設)」を通して、ボルドー(フランス)やサンフランシスコ(アメリカ)、台中(台湾)、広州(中国)などのドローンのスタートアップ企業とつながることができました。
――最近ではドローンを使った映像の撮影など、ドローンの存在が身近になってきました。投資家の皆さんの反応をどのように感じていますか。
増本 当社ではストックオプション型クラウドファンディングを行いました。募集開始から132秒で1,503万円の目標募集額を達成、24分後には上限募集額6,003万円に到達しました。また、170名以上がキャンセル待ちとなり、当社のビジネスへの期待値が非常に高いことを実感しました。さまざまな投資家の方から「もっと投資したかった」「上限に到達してしまい、投資できなかった」とお声がけいただきました。
ストックオプションは株式ではないため、議決権はありません。ただ、当社ではIRコミュニティとして、投資家の皆さまの支援を受けることができる組織体制を構築しています。投資家の350名のうち、1割弱にあたる約30名の皆さまはこれにコミットし、当社の事業成長にヒントを与えてくださっています。先日行った多久市での実証実験では全国から投資家の皆さまに集まっていただき、実際にドローンの現場を披露しました。このなかからアイデアをいただくこともありますので、将来的には副業可能な方に実際にパートナーとして事業に加わってもらうことも考えています。ビジネスを発展させるヒューマンリソース確保の意味でも、貴重な機会になるのではないでしょうか。
現在は日本国内のみのリリースですが、我々のビジネスモデルは世界に通用すると思っています。国土が広い国の森林・原野・砂漠などのエリアでは、墜落時の人的被害などのリスクが低いため、ドローンを飛ばすことは比較的容易です。しかし、海外でも人口密度の高い都市部では、日本と同じように「誰かに当たってしまうかもしれない」というリスクは常に懸念されるでしょう。つまり、当社でつくってきたビジネスモデルは世界各国の都市部へ輸出することが可能なのです。世界的にドローンに対する需要が高まり、当社のビジネスを求める人が多くなれば、日本国内だけでなく、世界に向けても資金調達を募り、確実に大きなムーブメントを起こすことができると思っています。
(了)
【文・構成:杉町 彩紗】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:増本 衞
所在地:福岡市中央区天神1-1-1
設 立:2014年4月
資本金:1,450万円
URL:https://www.truebizon.com/(企業)
https://www.sorashare.com/(「sora:share」)
<プロフィール>
増本 衞(ますもと・まもる)
1978年生まれ、山口県下関市出身。西南学院大学法学部卒業。日本テレコム(株)(現・ソフトバンク(株))で勤務後、九州大学院経済学府産業マネジメント学科を修了した。2014年に(株)トルビズオンを起業し、ドローン事業を立ち上げた。その後、ドローンの社会受容性を高めるための上空シェアリング「sora:share」のモデルを考案し、ビジネスモデル特許を取得。同事業モデルの紹介で、テレビ東京「ガイアの夜明け」やTBS「がっちりマンデー」など多数のメディアに出演。法人名
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