【今年4月】集会決議や管理規約が変わる~マンションの管理・再生を促進(後)

 4月1日から、マンションの管理や建替えといった再生に関する手続きなどの制度が変わる。国土交通省は2月9日、改正されたマンション関連法制度の実施に向けた説明会を東京・虎ノ門で開催。改正はマンション管理の円滑化、再生の円滑化、地方自治体の取り組みの充実の3つが主な内容で、説明会では管理と再生についての解説を中心に行った。当日は会場とオンラインと合わせて約1,000人が参加し、関心の高さを示した。

一棟リノベに対応

 マンション建替えなどの再生の円滑化では、建替え決議の要件を緩和する。耐震性の不足など一定の客観的事由を満たす場合に、多数決の割合を原則の5分の4から4分の3に引き下げる。また、建替え決議が成立した場合に、金銭補償を条件に賃貸借などを請求から6カ月経過で賃貸借を終了して明け渡す制度を創設した。

 ただし、補償金を受け取るまでは、専有部の明け渡しを拒否することが可能だ。補償金額は個別に算定されるが、公共工事の立ち退きに準じた金額以上が目安になる。

 新たな再生手法に対応するために、決議を整備する。建物・敷地の一括売却、建物を取り壊したうえでの敷地売却、建物取り壊しは、これまで区分所有者全員の同意が必要だった。これを建替え決議と同様の多数決でできるように変更する。また、一棟リノベーションも、建替え決議と同様の多数決でできるようにする制度も新設する。

 団地再生については、一括建替え決議の要件を緩和。すべての建物に一定の客観的事由がある場合、団地全体の4分の3に引き下げる。また、反対者に着目し団地内のいずれかの棟で反対者が3分の1を超えない限り、一括建替え決議ができるとする。団地内の一部の建物を建て替える場合、一定の客観的事由があればその建物の4分の3で決議でき、団地全体の承認決議は3分の2に引き下げる。

旧規約が無効に

 区分所有法・被災区分所有法の改正内容が反映されるのは4月1日からだが、経過措置が設けられている。経過措置として、集会の招集通知発送日が3月31日までであれば、これまで通りで改正前の制度が適用される。招集通知日が4月1日以降であれば、新しい制度が適用される。すなわち、3月31日以前に招集通知を発送すれば、集会が4月1日以降でもこれまでの制度が適用される。

 注意が必要なのは、手続きとは異なり管理規約の内容については、4月1日以降は改正後に対応した内容の規約が有効となり、旧制度のみで有効だった規約は無効になってしまう点だ。

集会は招集通知発送日、規約は施行日で新旧適用時期が異なる(出所=法務省民事局「区分所有法・被災区分所有法の改正について」)
集会は招集通知発送日、規約は施行日で新旧適用時期が異なる
(出所=法務省民事局「区分所有法・被災区分所有法の改正について」)

管理業者に説明義務付け

 続いて、マンション管理・再生などの法制度の改正内容を解説した。新築分譲業者が計画を作成するなど管理計画認定制度の見直しについては、法律の公布日から2年以内に実施される。

 4月1日からは、管理業者管理者方式の見直しを実施する。近年、区分所有者は共働き世帯が増え、管理業者に管理を委任するケースも増えている。管理業者が管理組合の管理者を兼ねている場合に、管理者の事務内容や費用など管理者受託契約に関する重要事項を、区分所有者に説明することを求めている。また、管理業者は修繕工事発注など自社や関連会社との取引などを行う場合に、区分所有者にその取引に関する重要な事実を説明することを義務づける。

 これによって、取引の透明性を図り、工事費水増しなど区分所有者の利益に反する取引を防止する狙いがある。見直しに対応した契約書類の雛形も整備した。

新たな再生手法に対応

 改正にともないマンション建替え円滑化法からマンション再生法に名称を変更した。建物・敷地の一括売却や一棟リノベーションなどの新たな再生手法の決議後、マンション再生法では再生組合設立や権利変換計画、分配金取得計画などの事業手続きを整備している。4月1日から施行される。

 耐震性が不足しているマンションなどの建替え・更新において、容積率の緩和に加えて地方自治体(特定行政庁)の許可により、高さ制限を緩和する。事業性を確保するために、容積率の緩和を受けても保留床を確保することが一般的だ。高さ制限がネックになり十分な保留床を確保できず、建替え事業が進まないケースに対応する。

多様なマンション再生手法に対応した手続きを整備した(出所=国土交通省住宅局「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」)
多様なマンション再生手法に対応した手続きを整備した
(出所=国土交通省住宅局「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」)

 高さ制限を緩和する場合の考え方として、周囲の日照や採光、通風などの環境が維持できる範囲内での許可となる見通しだ。

 マンション再生法の事業手続きにおいても、経過措置が設けられている。再生組合の設立申請日によって、新旧規定のいずれが適用されるのかを判断する。4月1日以降に組合設立申請を行った場合、改正後の規定が適用される。3月31日までに組合設立申請し、4月1日以降に組合設立許可が下りた場合は、旧規定が適用される。

 今回の法制度の改正を受けて、国土交通省はマンション再生などに関するガイドラインやマニュアルの全体構成と内容を、抜本的に見直している。4月1日の施行までには、見直し作業を終える考えだ。

(了)


<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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