アマゾン創業者ベゾス氏の次なる戦略:宇宙と延命長寿
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、3月18日付の記事を紹介する。世界の耳目を集めるロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって、新型コロナウイルス騒ぎは片隅に追いやられた感があります。とはいえ、戦争と感染症のダブルパンチのせいで、世界的に経済活動が大幅に制限されてしまったわけで、日本はもとより各国で不安と警戒が高まっています。
しかし、そうした厳しい状況下、飛躍的に業績を伸ばした企業の代表が1994年創業のアマゾンです。在宅勤務や巣ごもりライフスタイルが広がった結果、オンラインショッピングが急増したことが追い風になったことは否定のしようがありません。
コロナが猛威を振るう前からアマゾンは同業他社を圧倒し、世界最大のネットショッピング網を確立していました。その立役者といえば、坊主頭でチャーミングな風貌が売り物のジェフ・ベゾス氏(57歳)です。2017年7月にはマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏を抜いて世界1の大富豪に登りつめました。
21年1月の時点で、資産額世界1の座を電気自動車「テスラ」のイーロン・マスク氏に譲り渡すことになりましたが、その差はわずかです。いつ逆転劇が起きても不思議ではありません。実際、短期的には株価の変動の影響もあり、この2人は「抜きつ抜かれつの関係」にあります。
マスク氏は電気自動車以外にも、宇宙ロケットの打ち上げ会社「スペースX」をNASAのお抱え企業に仕立て上げましたが、ベゾス氏も「ブルー・オリジン」という宇宙船会社を立ち上げ、宇宙旅行ビジネスにも熱心に取り組んでいます。
何しろ、高校の卒業総代としてスピーチした際、ベゾス青年は「人類は遅かれ早かれ宇宙を植民地化することになる」と述べ、「自分は宇宙ビジネスに賭ける」とまで夢を語っていたほどですから。このスピーチは地元でも話題となり、「マイアミ・ヘラルド」という新聞からもインタビューを受けたほどです。そのなかで、彼は「宇宙空間でホテル、アミューズメントパーク、住宅などを建設する」との未来図を描いて見せました。
21年7月には自らが「ブルー・オリジン」に乗り込み、弟のマークを含む民間人クルー4人による地球周回という宇宙旅行を成功させました。11分間の無重力体験を全世界に同時配信し、多くの宇宙旅行ファンに夢と希望を与えたものです。
その間、ベゾス氏はネット通販ビジネスに限らず、13年8月には有力新聞「ワシントン・ポスト」紙を2億5,000万ドルで買収し、さらには有機食材の育成と販売のトップブランドである高級スーパーマーケットの「ホール・フーズ」を137億ドルで買収しました。
こちらは17年8月のことです。しかも、アマゾン・プライムの会員には「ホール・フーズ」での買い物が10%割引でできるという特典を付けています。いわば、ネットと紙媒体や生(リアル)の食品売り場との融合を図る戦略に挑戦したのです。
社員の不平不満はあるものの、ベゾス氏のビジネスの先を読む嗅覚はほかを圧倒しています。たとえば、1998年、彼はGoogleの将来性を見抜き、25万ドルの投資を行いました。Googleが上場したのは2004年のこと。その時点で彼の所有する株価は330万ドルに跳ね上がったのですから。たった5年ほどで13倍に増やすことに成功したわけです。これには皆が脱帽しました。
ベゾス氏はケチで有名ですが、世界有数の大富豪であるため、さまざまな慈善団体や教育機関から寄付を求められてきました。しかし、彼はほとんど無視しています。ただ、いくつか例外はあります。その1つが、ワシントン州で活動するゲイ同士の結婚を支援する団体へ250万ドルの寄付をしたことでしょう。多様な価値観を尊重するという姿勢を示したわけです。
もう1つの例外は、テキサス州の地下に「1万年の時を刻む時計」を設置するために、4,200万ドルの資金と自身が所有する土地の一部を寄付したことです。ベゾス氏とすれば、1万年後の人々に自分の存在をアピールしたかったのでしょうか。
アマゾンのCEOを降りた直後のインタビューで、ベゾスは意気揚々と話しています。いわく、「CEOの職責からは解放されたが、アマゾンの重要事項には関与し続けるつもりだ。それ以上に、これまで十分にエネルギーを割けなかった『デイワン・ファンド』『ベゾス地球ファンド』、それに『ブルー・オリジン』や『ワシントン・ポスト』を強化したい。ほかにも、やりたい事業がたくさんある。どんどんやっていくつもりだ。正直言って、これまでの人生で今ほどエネルギーが湧き上がってきたことはない。引退などはあり得ない」。
実は、ベゾス氏は延命長寿ビジネスにも熱心です。21年9月、「アルトス・ラボ」と命名したバイオテクノロジー会社を立ち上げました。人の細胞を自由にコントロールすることで寿命を延ばすことを目指しています。しかも、その研究の中心にはノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授を据えているのです。確かに、宇宙で暮らすには細胞のレベルから人体改造を行う必要があるのでしょう。
現在進行中のウクライナ危機は下手をすれば、第3次世界大戦の導火線になるかもしれません。そうなれば、人類は住み慣れた地球に別れを告げ、ほかの惑星に移住することにもなりかねません。実際、イーロン・マスク氏は「50年までに火星に移住する」計画を公にしています。ライバルたるベゾス氏も負けるわけにはいかないでしょう。その夢を実現するためにも、山中教授の力も借りて、延命長寿を実現しようと目論んでいるわけです。
今後の世界は、宇宙と生命の神秘を探る方向に舵を切ることになるに違いありません。その最先端を走るのがベゾス氏とマスク氏といえそうです。この勝負の行く末が大いに気になります。
次号「第288回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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