2024年10月30日( 水 )

地場総合建設業のトップランナー、永続企業へと進化(後)

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照栄建設(株)
代表取締役社長 冨永 一幹 氏 

 福岡県内でトップクラスの総合建設業として、地域のまちづくりに貢献し続ける照栄建設(株)。今年6月に設立50周年を迎える。国の内外を問わず混沌とした時代に突入するなか、今後100年、200年と永続するための経営戦略とは─。同社の代表取締役社長・冨永一幹氏に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 児玉 直)

PFIという挑戦

照栄建設    ──話は変わりますが、福岡都市圏での発注量についてはいかがでしょうか。そして、現在の好況はどのくらい続くと予想されますか。

 冨永 天神ビッグバンと博多コネクティッドのプロジェクトがピークで、これらが完成すれば需要は大きく下降すると予想しています。他方で、もしIRの開発が実施されるのであれば、再び需要は上昇するでしょう。それとは別に今、これほどの大型物件を抱えている都市は全国を見ても、福岡市くらいではないでしょうか。その波及効果により、現在も人口増が続いています。しかし、同時に高齢化も進んでいるのが現状です。

 ──貴社の状況は?

 冨永 現在、公共事業へも積極的に参入しています。また保育園・病院などの特殊建築物にも力を入れ、賃貸マンションだけではない営業戦略を立案し、実行している最中です。これから必要なのは、賃貸マンション建築に依存しない営業体制をつくっていくことです。特殊建築はより専門性が求められますので、技術の習得に時間を要します。そのため、1人でも多くのエキスパートを育成していかねばなりません。

 ──貴社が参入されている天神5丁目の「福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業」の経験を生かしていくことが肝要ですね。現況も含めてお聞かせください。

 冨永 4年後の竣工を予定しています。今後は、PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)という我々民間事業者が提案し運営していく事業形態が主流になってくるのではないでしょうか。この事業形態は、特定目的会社(SPC:Special Purpose Company)が設立され、福岡市と事業契約を締結します。同時にSPCは、建設・設計・維持管理運営会社などの構成企業体と請負契約を締結します。資金調達については、SPCが金融機関から融資を受けます。そして、福岡市はSPCに対して毎月決められた費用を支払います。つまり、SPCが資金のマネジメントを実施します。

 福岡市にとっては、通常の公共工事のように一括支払いではないので、負荷が軽減されます。今後はこの形態の事業モデルが増加していくでしょう。SPCは銀行から融資を受けるので、構成企業各社の強固な財務体質が求められます。我が社のような地場企業がPFIの構成企業に参入できたのは、財務体質と実績が評価されたからだと自負しています。施設の運営を自治体で行わないため、我が社の役目は建設と竣工後の維持管理です。今回のプロジェクトは新たな挑戦と位置づけています。

200年、そしてさらなる先を

照栄建設    ──今期(22年5月期)の業績についてお聞かせください。

 冨永 前期から約20億円増で、150億円前後の完工高を予想しています。増加の要因は、前期はコロナ禍の影響もあり大型案件がありませんでしたが、今期は大型案件を受注できたことです。受注環境は堅調な状況が続いています。とくに賃貸マンションなどの建設は、好調を維持しています。西区と中央区は活況です。土地の相続問題の解決策の1つとして、賃貸マンションなどの住宅建設を選択する地主さまが増加しています。賃貸の入居率も99%という高い数値で推移しています。新旧物件ともです。一方、店舗などテナントの需要は減少傾向にあります。これはコロナ禍の影響が大きいですね。

 ──社内マネジメントについてはいかがでしょうか。

 冨永 社員それぞれが事情を抱えていますので、フレキシブルに対応しています。また、世の中の意識の変化を我が社も受け入れていくことが肝要です。「工期を絶対に厳守する」という工期至上主義も再考していくことが求められます。つまり働き手への配慮も厚くしていくということです。あまり緩くなるのもいけませんが…。今後は会社が社員を管理するのではなく、社員=自分がどのように会社を活用するかという価値観に変わっていきます。そんな時流に沿った職場環境にも対応していくことが求められます。

 ──冨永社長が掲げている貴社が永続企業となるための決意をお聞かせください。

 冨永 これまで培ってきた経験を基に、中核事業をより進化・発展させながら、新たな事業にも積極的に参入し経験値を積んでいきます。常に時流とともに自らを変化させ、地域のまちづくりに貢献し続けることが200年、そしてその先も永続するきっかけになると信じています。

(了)

【文・構成:河原 清明】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:冨永 一幹
所在地:福岡市南区向新町2-5-16
設 立:1972年6月
資本金:7,000万円
売上高:(21/5)122億4,877万円


<プロフィール>
照栄建設(株) 代表取締役社長 冨永 一幹 氏冨永 一幹(とみなが・かずもと)
1969年生まれ、福岡県春日市出身。福岡大学大学院人文科学研究科教育臨床心理学専攻修士課程修了。2005年4月に照栄建設(株)入社。07年7月取締役社長室長、16年4月総務部長を経て17年8月1日に代表取締役社長に就任。

(前)

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