2024年11月23日( 土 )

【読者投稿】コロナ禍でマスク着用の是非を問う 弁護士への懲戒請求事案(後)

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 今回は、ある勉強会でのマスク着用トラブルから弁護士への懲戒請求に至った事案についての読者からの投稿を紹介する。

福岡県弁護士会綱紀委員会が認定した事実と判断

弁護士バッジ イメージ    綱紀委員会は、当日、対象弁護士自身が認めている言動についての事実行為を否定していない。

 弁護士職務基本規定第6条の「弁護士は名誉を重んじ信用を維持するとともに廉潔を保持し常に品位を高めるように努める」と、本条は努力規定としているものの同条に違反したからと言って直ちに懲戒の対象となるものではない。との判断をしている。

 当日は全国的にも緊急事態宣言が発令されておらず、対象弁護士が繰り返しマスクは着用しないと伝えているにも関わらず、主宰者側スタッフから行く先々でマスク着用を強要するかのような案内を、この対象弁護士に求めてきたことが、とても癇に障り感情的な遣り取りになったと、その状況から判断される。

 このたびの対象弁護士の感情的な言動により同会場に居合わせた出席者などに対して、確かに強い不快感を与えたであろうことは認められる。とはいえ、申立人が請求する弁護士懲戒制度の重要な点では、弁護士に対する行政庁や裁判所等の国家権力による監督を排して認められた弁護士の高度の自治権であり、その懲戒権は、弁護士の職能・職責に対する信頼を明らかに損ねる行為を対象とすべきものであって、弁護士の職能・職責とは直接に関係しないところでの行為までを対象とする場合には慎重でなければならないとしている。

 つまり、弁護士の職能・職責とは直接関係しないところでの行為にまで懲戒権がおよぶものとすれば、弁護士の職能・職責とは直接関係のない行為にまでを口実にした弁護士懲戒要求を容認することになりかねず、弁護士の自由と独立(職務基本規程第2条)を損ねる恐れがある。と判断している。

懲戒請求に対する綱紀委員会の議決

 本件で出席したのは会員制勉強会であり、対象弁護士が弁護士の職務として出席したものではなく、その会場で行った行為は、対象弁護士の職能・職責と直接には関係しないところでのものであり、弁護士の職能・職責に対する信頼を明らかに損ねる行為であるとまでは認められないとした。

 従って対象弁護士の行為が「弁護士の品位を失うべき非行」(弁護士法第56条)とまでは認められないとして、2021年(令和3年)12月24日 福岡県弁護士会2021年(綱)第46号の議決書の主文、「対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めない事を相当とする」との議決により、「本会会員 萬年浩雄弁護士を懲戒しない」とする決定書を、福岡県弁護士会会長 伊藤巧示氏名で、懲戒請求者宛へ通知されたのである。

関係者への聞き取り

懲戒請求者:(株)西日本新聞社取締役営業本部長・伊藤陽氏
 本人不在で、このたびの会員制勉強会の「西日本政経懇話会」事務局の金子氏と話したところ、4月の人事異動でスタッフが入れ代わったことで、本件の申し送りがなくまったく分からないとの回答。

対象弁護士:萬年総合法律事務所・萬年浩雄氏
 もう昨年のことで、その件の取材は、お断りするとの回答。

福岡県弁護士会綱紀委員会第2部会部会長・林優氏
 綱紀委員会の内容は守秘義務で外部に話せないため応じられないとの回答。

 各関係者からの回答結果は以上の通りである。

 4月7日の記者会見で松野官房長官はオミクロン株BA1・BA2に続いて、新たなXE系統の変異株がイギリスなどで確認され、さらにBA2より感染力が10%程度強いと発表した。さらに、このところ、また感染者が増加傾向にありリバウンドも懸念されていると説明した。

 専門家会議の提言で「新しい生活様式」マスク着用の位置づけでは、外出時、屋内にいるとき、会話をする時など、症状がなくてもマスクを着用することを推奨しており、1:身体的距離の確保、2:マスク着用、3:手洗い、とマスク着用は手洗いよりも優先順位が高く重視している。

 WHOでは無症状の感染者から感染拡大を広めないためにマスク着用が必要だと考えて、自分が感染しないためにマスクを着用するよりも、他人に感染を広めないためというのをポイントにして、マスク着用を推奨している。いまだ収束の出口がまったく見えないコロナ禍において、日本人のマスク着用率は他国と比較にならないほど習慣化している。そのような状況下で起こった今回の事案をぜひ紹介してほしいと考え、投稿するに至った。

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