【脊振の自然に魅せられて】春の花が咲く山道へ(前)
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4月に入ると山には少しずつ山野草や樹木が芽吹き始める。
福岡県糸島市にある水無鍾乳洞駐車場は、井原山(983m)の登山口となっており、現在はアスファルトで舗装され、立派な水洗トイレも完備されている。筆者が、この場所で写真を撮り始めた20年前は、花や山好きの者だけが訪れる静かな場所で、駐車場にはトイレがなかった。その後、花を楽しみながら登山できるルートとして知られるようになり、訪れる人が増え始め、仮設トイレも設置された。
インターネットの普及にともない、春の花であるイチリンソウやニリンソウが咲く登山道として認知されるようになり、登山ブームとともに人が増加した。とくにオオキツネノカミソリが一斉に開花する8月には多くの人が訪れ、駐車場には車が溢れている。
人が比較的少ない平日(4月8日)早朝にこの地を訪れた。3月末にショウジョウバカマの撮影に訪れた時は開花していなかった山桜も満開になっていた。登山口にあるこの山桜は、まるで登山者を見守っていようにも思える。山桜はソメイヨシノと異なり、1本の幹で咲いていることが多い。羽を広げた鷲のように雄大な山桜もあれば、他の樹木に負けまいと空高く幹を伸ばして咲いている山桜もある。数年前、この山桜が「雪のシャワー」を浴びながら悠然と咲いていた姿を今でも覚えている。満開の山桜を撮影するため登山道の少し高い位置にのぼった。快晴のなか、手を大きく広げたように咲く山桜に「ありがとう」と感謝の言葉を述べ、カメラのシャッターを切る。
この日の目的はビデオ撮影。脊振山山系の自然を映像記録として後世に残したいという思いからだ。渓谷沿いの登山道を進むと早春の花で、開花時期を過ぎたホソバナコバイモの花が残っていた。心地よい渓谷の水の音に合わせたかのようにウグイスや甲高い声のミソサザエ、シジュウカラの鳴き声が響きわたっていた。ヤブツバキの花を横目に登山道を横切る浅い沢を渡る。この日は植物の根に優しい長靴を履いてきたので、水のなかを歩くには便利である。
浅い沢を渡ると登山道にニリンソウがたくさん咲いている場所があり、ニリンソウの白い花が明るい陽射しに照らされて輝いていた。登山道の下に三脚を広げ、ビデオカメラをセット。ニリンソウの咲く場所を登山者が歩く姿をイメージして登山者が通りかかるのを待つ。そこに女性の2人連れが通りかかり、イメージ通りの撮影ができた。さらにカメラでも撮影する。
(つづく)
2022年4月25日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行関連キーワード
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