2024年10月02日( 水 )

【モンゴル視察記】進展する都市化 マスク着用義務解除

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平均年齢28.2歳の若い国

 日本政府の水際対策が緩和された6月1日からモンゴルを訪問した。モンゴル訪問は初めてであり、その変化について比較はできないが、発展ぶりを目にし、勢いを感じた。同国ではマスクの着用義務が解除され、着けている人はいるものの、割合としては少ない。市民の表情が見えるということも、活気をより感じた理由かもしれない。

市内中心部
市内中心部

    同国は1991年から市場経済化を進め、約30年が経過した。名目GDPは90年時点で26.8億米ドルであり、90年代は市場経済への移行期で低迷したものの、その後は安定した発展を続け、2021年には151億米ドルに達している(IMF)。

 同国の人口は1950年時点で78万人、2021年には332万9,000人に増えており、20年時点での平均年齢は28.2歳(国連)で若年層が非常に多い。人口は福岡県の3分の2程度でしかないが、約半数が首都ウランバートルに集中していることに加え、国民が親日的であることから、投資先として有望視する見方が強まってきている。

都市化が急速に進行

ウランバートル    ウランバートルでは都市化が進み、至るところで高層マンションが建設中だ。一方で、その近くには以前からの移動式住居「ゲル」を見かけることもあり、以前のものと新しいものが併存している様子が見て取れる。道路は渋滞が慢性化しており、中心部では朝晩のラッシュアワー時には歩いた方が早いのではと思うほどだ。ほかの新興国がたどった道をモンゴルが今まさに歩んでいるものと実感できる。

 郊外に位置する開業したばかりのマンションと商業施設を視察したが、住環境が良いことから数億円相当の住宅が多く建てられており、高台に行くほど高級とのこと。富裕層向けのマーケットがあることも実感できた。

郊外の高級マンションと商業施設(「Golden Budda」)
郊外の高級マンションおよび商業施設(「Golden Buddha」)

 中間層の消費意欲も旺盛だと感じた。同市のホテルで最高級とされるシャングリ・ラ ホテル(15年開業)と一体となったショッピングモールには、日本未進出のブランドを含め、多くの海外ブランドの店舗が出店している。韓国系の大型スーパー「イーマート」も家族連れ、若者を中心に賑わっていた。コンビニの販売価格は日本とあまり変わらず、決して安いとは思えなかったが、学生が食事やおしゃべりに興じていた。コンビニの大半は韓国系の「CU」と「GS25」が占めている。

 変化はもちろん建物など目に見えるものにとどまらない。ほかの新興国同様に、スマホが普及し、市民生活に根付いているようだ。QR決済では、日本での留学・仕事経験を有するエンジニアが開発した「Qpay」がほぼ1人勝ちの様相を呈している。タクシーではこのQpayでの支払いが一般的なようだ。乗車したタクシーの運転手は現金を持ち合わせていなかったが、親切にも付近で両替をして対応してくれた。なお、タクシーはいわゆる「白タク」が一般的だ。アプリ上でメーターを表示することができ、手の空いたときに副業する市民も多くいるようだ。こうした点も「Grab」などが活用されている東南アジア諸国と同様だ。

タクシー車内にて。料金メーターも決済もスマホで。
タクシー車内にて。料金メーターも決済もスマホで。

モンゴルとの往来

 宿泊したホテルなどで多くのヨーロッパ系の人を見かけた。隣国であるロシア人も多いという。モンゴルはかつてソ連の支援を受けて社会主義国家として成立し、両国とも社会主義を放棄した後も友好関係にあるため、人的往来が多い。

 現在、ウクライナ侵攻を受け、西側諸国などがロシアとのフライトを制限するなか、モンゴルはロシア人が海外に行く際に経由するハブの1つとなっているという。旅行者だけでなく、各国の軍人なども行き来しているようだ。ロシアおよび西側諸国の関係者が集まる場ということであれば、その重要性は増している。

 前述した小売のみならず、飲食・カフェでも海外勢ではCaffe Beneなど韓国系が目立っていた。コンビニでは「サークルK」がウランバートルに進出していたが、今年に入ってからCUに買収され、店舗はCUに衣替えしていた。コロナ禍のなかでも、動いているところは積極的に動いている。

 日本としても発展のために、モンゴルのような新興国の活気を取り込むこと、友好関係を深めるために協力を進めることが求められる。引き続き、モンゴルの事情についてレポートしていきたい。

【茅野 雅弘】

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