30周年を迎え、また超えて(7)情報部への転籍
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竹田課長は「我が師匠」
1980年秋から情報部に配置替えとなった。この配置転換で今まで以上に業務に精通することができ、名前を売ることも可能となった。それについては、また後に譲るとする。
竹田氏が「企業年鑑を300冊売る」と述べたことに非常に刺激を受けた。それまでは、あまり東京経済で『企業要覧』を売る意味を理解していなかった。しかし、よくよく考えてみると効率のよい出版商品だ。改めて気づいたことがある。5万円の広告をつけて企業要覧を売れば10万円の実績となる。
「これほど実績を加算できる商品はないぞ!」と確信した。ある意味、筆者にとって竹田課長は「コンサル業の師匠ではなく、セールスの師匠」となったことに後で気づいた。表現を換えれば「この調査・情報業務の奥深さを知り、プライドをもたせてもらい、稼ぐための貪欲さを与えてくれた師匠」ということになる。人間は自身だけの力で目覚めるのは無理であり、啓示をしてくれる第三者の存在があってこそ目覚められるのである。いやぁ、「竹田先生、ありがとう」と感謝の念を伝えたい。
売上倍増・所得倍増
81年版の企業要覧を売ることに注力し始めた。前記の通り、1社に「広告5万、本代5万円」で10万円の営業攻勢をかけた。もちろん、出版にも力を入れた。結果、この年に企業要覧を80冊売った。翌82年には100冊を突破した。その後も書籍を売ることに力を注いだが、平成の時代になっても200冊に手が届いただけで、竹田先生の300冊には足元にもおよばなかった。その他の商品の売上も増加したことで、82年の年収は、なんとか1,000万円台に到達した。
余談ではあるが、会社を設立する際、「年収1,000万円の道」を分かりやすく説き、「これだけの実績を積めば1,000万円を確保できる」と明示した。だが、このクラスの収入(年収1,000万円)に達した者は3名しかいない。
顧客と我々の関係性の特徴として、「長期間継続してもらえる」という点が挙げられる。たとえば2024年の営業実績が2,000万円あったとする。よほど、さぼらなければ、翌25年は最低10%伸びるはずである(とはいえ、1980年代当時は比較的容易であったが、現在は非常に難しい。この点に関しては、後に構想している40回連載記事で詳細に分析、解説する)。
兄たちに収入面で負けたくない
宮崎県日向市美々津が筆者の生まれ故郷である。歴史を遡ると宮崎県児湯郡美々津という港町であった。高鍋藩(秋月氏)の北端に位置し、参勤交代の際には美々津の港をスタートして瀬戸内海を通過して難波に上陸。一路、東海道を歩いて江戸へ向かうのである。日南・飫肥藩も利用していたし、気象条件によっては、薩摩藩も参勤交代のために美々津港を利用していたようである。付け足すと、神武天皇が美々津港から東部に向けて討伐に出かけたという由緒ある港でもある。美々津という街は1930(昭和5)年まで海運業で繁栄していた(日豊本線が開通して以降、寂れてしまった)。
父親は1900年生まれ、海運業に従事し船長をしており、1,000t未満の船を操っていたそうである(戦争中は米軍の潜水艦、軍用機に攻撃を受けて、生死の境に立たされたことがあったらしい)。従って、それほど資産もない、当時ではありふれた世帯であった。兄妹は6人(4男2女)、筆者を除くとすべて45年以前に生まれた(兄妹は昨年までに全員鬼籍に入った)。
児玉家唯一の自慢は地元で“頭の良い児玉家”と認められていたことだ。次男は39年生まれ、三男は41年生まれ、6歳離れて47年に筆者が生まれている。すぐ上と6歳離れているから中学以降は1人っ子同様であった。
児玉家は全員、高鍋高校に入学する。次男は九州大学の理学部に、三男は工学部にそれぞれ現役で合格した。筆者は国立理系コースで受験準備をしたが、兄たちの「理系コース」とは異なり九大の法学部を受験した。だが残念ながら不合格。浪人する余裕がなく鹿児島へ向かった。
80年ごろ、兄たちと酒を酌み交わしながら、大見得を切った。「俺が一番先に年収1,000万円のテープを切るからな」と宣言したのだ。2人の兄は“この直がまた戯言を言っている”という顔をしていた。
次男は三菱石油、三男は三井東圧化学に勤めていた。83年の正月、兄弟で酒を飲んだ。「俺は昨年、1,000万円代に手が届いたぞ」と公言したところ、次男は「おぉ、そうか、スナオ!よくやったな」と褒めてくれた。あとで漏らしてくれたが、88年3月に年収が1,000万円に到達したそうである。三男は86年に大台に乗ったと教えてくれた。
ここでの目的は自慢話ではない。老後の保証がより重要だ。次男の場合、「退職金3,000万円を会社が預かり、年利8%で運用してくれる」ルールがあることを知った。やはり大企業の福利厚生の手厚さには、とてもかなわない。
(つづく)
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