大戸屋お家騒動、第三者委員会の「調査報告書」を読む(前)
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定食屋を展開する(株)大戸屋ホールディングスは10月3日、創業家との対立問題をめぐる第三者委員会の調査報告書を発表した。創業家が協力を拒否するなか、第三者委員会は「双方に問題がある」と結論づけた。中小企業の経営者にとって、相続税と世襲人事は悩ましい問題だ。調査報告書から、どんな教訓が読み取れるか。
死後を見据えた「カネと世襲」の決断
大戸屋コンプライアンス第三者委員会(委員長・郷原信郎弁護士)の調査報告書は、同社のホームページで公開した。創業者である故・三森久実氏が昨年7月に死去したあと、「カネ(功労金)」と「世襲人事」をめぐる創業家と経営陣の対立が激化していった経緯が詳細に書かれている。韓流ドラマの定番である財閥のお家騒動さながらである。
主要な登場人物は、創業家側が久実氏の妻の三枝子氏と長男の智仁氏。経営者側は社長の窪田賢一氏と取締役の河合直忠氏。窪田氏は久実氏の母方の叔母の息子で、久実氏とは従兄弟関係にあたる。河合氏はメインバンク、三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)常務から大戸屋HDの会長に就いた。久実氏の経営指南役を務めていたが、香港出店で対立、相談役に退いていた。今年6月の株主総会で、窪田社長に招かれて取締役に復帰。創業家の智仁氏と窪田社長の仲裁を引き受けることになる。
報告書によれば、久実氏は14年7月に末期のがんが発覚。それ以降は、死期を悟り、自らの死後を見据えて2つの大きな決断をする。
相続制対策として功労金の支払いを求める
1つは、「カネの問題」。久実氏が自らの死後に発生する見込みの相続税対策としての功労金問題だ。久実氏が生前の15年3月ごろから議論に入った。同社は04年9月に役員退職慰労金の制度を廃止しており、相続税を支払うカネは功労金から引き出すしかない。生前に功労金を出せないかの検討に入った。功労金は株主総会での可決が必要だ。メインバンクの三菱UFJ信託銀行や監査法人に相談し、「代表権を降ろすのを契機とするといい」とアドバイスを受けた。寿司屋で会長の久実氏と窪田社長らの役員たちが話し合った。報告書はある役員の証言を載せた。
〈「功労金を出すには理屈がいる。会長が代表権を返上し、いわば現役を降りて後進の指導にあたるとかであれば、功労金の説明が株主につく」と。そうしたところ、久実氏は、ふざけるなと。激怒どころではなかった。濱田寛明専務も窪田社長も皆怒鳴り散らされた。寿司屋で5時間。収めたのは(会長から呼ばれた)河合氏〉
この役員は、取締役から執行役に降ろされた。功労金については、久実氏の死去まで俎上に上ることはなかった。
(つづく)
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