モンキーポックスが急拡大 懸念される日本への上陸(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸「一難去って、また一難」でしょうか。世界的に新たな感染症の出現が確認されるようになったからです。脅威の源泉は「モンキーポックス(サル痘)」と呼ばれる感染症。これまではアフリカ大陸の西部と中央部にしか存在が確認されていませんでした。
新型コロナの次はサル痘
ワクチン開発の報道が行われると、BVNRY社の株価は70%も急騰し、現在も高騰が続いています。「モンキーポックスは投資家を大儲けさせてくれる“マネーボックス”か」と揶揄されるほどです。
しかし、昨年3月、ドイツのミュンヘンで開催された国際バイオセキュリティ会議では「2022年5月中旬にモンキーポックスが世界的に大流行する」というシミュレーションが行われました。この会議に参加した専門家の予測では、「当初の被害者は限定的だが、23年1月10日までには死者の数は130万人に達する。23年末には、死者は数億人にまで膨れ上がる可能性がある」とされています。
オランダの会社以外にも、アメリカのワクチンメーカー2社がすでに開発を進めていることが報道されています。手回しよく、ワクチンが開発・製造されるようですが、「22年末の時点ではワクチンが効かなくなる」との予測も出されました。
今後の状況次第とはいえ、日本への上陸は避けられそうにありません。日本ではまったく報じられていませんが、バイデン大統領は、BVNRY社の製品の治験を実施しているペンシルベニア大学病院付属のシンクタンク「ペン・バイデン・センター」の創設者にほかなりません。サル痘が広がり、ワクチンが売れるほど、バイデン大統領のファミリービジネスでもある同シンクタンクに配当金が支払われることになります。
そうした背景もあり、バイデン大統領は韓国と日本に対して、いつでもワクチンを提供する用意があると伝えたわけです。その後、後藤厚労大臣が「現時点で日本ではサル痘の感染は確認されていないが、万が一、日本で感染が起きても、テロ対策として備蓄しているワクチンがあるので大丈夫」と発言しましたが、アメリカからの提供を念頭に置いたものと思われます。
それどころか、コロナとサル痘のダブルパンチで、アメリカでは「秋の中間選挙は延期せざるを得なくなるのでは」といった観測も出ています。支持率の急落で厳しい選挙になるバイデン民主党にとっては、「願ってもない感染症」と言っても過言ではありません。
日本政府は「現時点では国内での感染は確認されていない。しかし、WHOとも連携し、注意を怠らないようにしたい」とのこと。6月10日からは海外からの旅行者の入国制限も順次緩和する方針を打ち出したばかりの日本政府ですが、新たな感染症の登場は「寝耳に水」といったところかもしれません。
バイデン大統領の忠告を無視し、十分な対策を講じないまま海外からの旅行者の受け入れを緩和すれば、日本でも深刻な被害が発生することは火を見るよりも明らかでしょう。今こそ、世界が一致協力して対策に乗り出す必要があります。言い換えれば、個別の投資家やワクチンメーカーが「濡れ手に粟」で大儲けするような状況を食い止める最後のチャンスかもしれません。
不透明なワクチンのリスク
実は、サル痘用のワクチン開発に関しては、ロシアも参入を宣言しています。ロシアは新型コロナ用のワクチンとして「スプートニクV」を20年8月に完成させ、主に国内向けに接種を進めてきました。今年5月には、「サル痘用のテストキットとワクチンの完成にも先鞭をつけることになった」と明らかにし、世界を驚かせました。年間1,000万人分のワクチンを供給できるとアピールしています。
ロシアでは天然痘用のワクチンも3種類の特許登録を済ませているとのこと。第4世代の天然痘用ワクチンを改良し、今回のサル痘用のワクチン開発に結び付けたものと思われます。ロシア政府は「新たな感染症への対応に苦慮するWHOを支援する用意がある」と前向きな姿勢を示しました。ウクライナ戦争によって欧米からの経済制裁を受け、国際機関からも排除されつつあるロシアですが、今回のサル痘危機において、素早く検査器具やワクチンを提供することで制裁の解除に結び付けようとする思惑も透けて見えます。
問題はワクチンがもたらす副反応のリスクです。コロナ用のワクチンも同様ですが、天然痘やサル痘用のワクチンに関しても懸念が払しょくされていません。アメリカでは過去40年に渡り、天然痘でもサル痘でも感染者が死亡する事例は皆無でした。その半面、天然痘のワクチンを接種した結果、副反応に襲われたり、死亡したりした人の数は5,700人に達しているのです。これでは何のためのワクチンなのかと、懐疑的にならざるを得ません。
サル痘用のワクチンについても、同じ轍を踏まないことが望まれます。さらにいえば、外国製のワクチンに依存するのではなく、日本由来の発酵食品や、地域の人々や自然との触れ合いを生かした健康増進を心がけ、日本独自の感染症予防に取り組む時ではないでしょうか。
(了)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連キーワード
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