2024年11月21日( 木 )

JR九州の在来線特急料金値上げについて(後)

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運輸評論家 堀内 重人

JR九州の在来線特急料金の問題点

 JR九州の在来線特急料金に関しては、25kmまでや75kmまでの料金が設定され、国鉄時代やほかのJR各社よりも、きめ細かく設定されている点は、評価できる。

 だが今回の料金改正により、短距離であっても利用しづらくなった。とくに25kmまでの在来線特急の自由席料金が310円から500円に値上がりとなったため、従来は特急列車を利用していた人も、特急列車を避け、快速列車や普通列車を利用しようという心理が働くようになった。

 JR九州からすれば、25kmまでの自由席特急料金を6割以上値上げすれば、気軽に特急列車が利用しづらくなり、検札などの要員が削減できる上、増収になると考えたのであろう。

 次に150kmまでの自由席特急料金が、1,250円から1,800円と550円も値上がりとなり、博多~佐世保間や小倉~大分間などは、利用者の負担が増した。そのため100kmまで1,200円である自由席特急料金が、100kmを超えると1,800円と、急に高くなるようになった。

 筆者は、せめて125kmまで「1,500円」の自由席特急料金を設定するなどの配慮が必要であったのではないかと感じる。また従来は、150km以上の距離を乗車したとしても、200kmまで1,410円、300kmまで1,520円、301km以上が1,680円と緩やかに上昇していたが、今回から200kmまで2,200円、300kmまで2,400円、301km以上が2,600円と、値上がりの上昇が急になっただけでなく、従来の自由席特急料金と比較すれば、1,000円程度の差が付くようになった。

 小倉~鹿児島中央間など、日豊本線の特急を乗り継いで旅行する人など、ほとんどいないことから、300kmまでや301km以上の在来線の自由席特急料金を設定したとしても、実態とは乖離した料金制度となる。

 指定席特急料金についてだが、従来は通年で自由席特急料金に対して、通年で530円をプラスした価格であったが、2022年4月1日からは「通常期」の料金だけでなく、「繁忙期」の料金も誕生した。「繁忙期」は、「通常期」の料金に200円が加算されるが、他のJR各社とは異なり、「繁忙期」が適用される期間が長くなってしまった。

 ほかのJR各社は、一般的にGWやお盆、年末年始が「繁忙期」として扱われるが、JR九州では、「4/1~4/5」「4/28~5/6」「7/21~8/31」「12/25~1/10」「3/21~3/31」までとなった。つまりGWやお盆、年末年始だけでなく、春休みや夏休み、冬休み期間中も、「繁忙期」にしているのである。

企画乗車券、ネット割引が発達した現状

 JR九州では、往復の普通運賃にプラス数百円すれば、在来線の特急列車の自由席で往復が可能な企画乗車券が充実しているだけでなく、各種ネット割引なども充実している。そうなると正規の運賃・在来線特急料金を支払って乗車している人が、はたしてどの程度いるのか、疑問である。

 事実、JR九州のみどりの窓口へ行けば、こちらが黙っていても、正規の運賃・正規の在来線特急料金をプラスした乗車券類ではなく、企画乗車券の方を販売してもらえるため、正規運賃・在来線特急料金は、その列車に乗車することが目的のD&Sトレインを除けば、有名無実化している。

JR九州は、D&Sトレインに力を入れている。左側が「ゆふいんの森」であり、右側が787系電車
JR九州は、D&Sトレインに力を入れている。
左側が「ゆふいんの森」であり、右側が787系電車

 1999年1月以降は、「料金」に関する規制が「届出制」に緩和されたため、よほどの法外な料金や、ダンピングした料金を申請しない限り、国土交通省が指導することはないが、乗車券類などが煩雑になり過ぎてしまう。正規の運賃や正規の在来線特急料金で旅行する人が少なく、それらが形骸化しているのが現状であるといえる。

総括

 JR九州は、普通運賃を値上げすれば、利用者からの反発が激しく、グリーン料金を値上げしても、利用者が離れるだけで増収にならないことから、在来線の自由席特急料金の値上げと、座席指定料金の「繁忙期」の増加で対応したように思える。

 みどりの窓口で、乗車券類を購入する場合も、D&Sトレイン以外は、正規の普通運賃や正規の在来線特急料金ではなく、企画乗車券の方を販売しているのが実情である。

 確かにJR九州には、D&Sトレインが数多く運行されているが、それらは定員も少ないことから、正規の在来線特急料金の値上げと座席指定席の「繁忙期」を増やしたとしても、どの程度の増収になるのか、疑問ではある。

 それゆえ正規の在来線特急料金の値上げや、指定席料金に「繁忙期」を設定するのではなく、企画切符やネット割引の値上げや、それらの一部廃止など、実態に近い制度にする必要があったといえる。

(了)

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