安倍元首相急死の余波か　幼稚園連合会前会長を逮捕

　安倍晋三元首相が死亡した7月8日から5日後の13日、警察を管理する山口県公安委員会の元委員で、「全日本私立幼稚園連合会」（以下、幼稚園連合会）の前会長らが、団体の口座から高級クラブを運営する会社などに不正に送金したとして、業務上横領などの疑いで警視庁に逮捕された。

　逮捕されたのは、全国の約7,500の私立幼稚園が加盟する全日本私立幼稚園連合会の前会長、香川敬容疑者（70歳）と前事務局長。

　2人は2020年8月までの約4年間にわたり、幼稚園連合会の口座から銀座の高級クラブを運営する会社などの口座に約700万円を不正に送金するなど、業務上横領と私文書偽造の疑いが持たれている。送金された資金は前会長の飲食代などに充てられた疑いがあるという。

　幼稚園連合会と関連団体では20年度までの5年間に、合わせて約6億5,000万円が引き出されたことが明らかになっており、警視庁は幼稚園連合会などからの刑事告訴を受けて捜査していた。

　逮捕された香川容疑者は山口県防府市で私立幼稚園を運営。14年7月からは警察を管理する山口県公安委員会の委員を兼務していたが、3期目の途中だった昨年3月、使途不明金の問題が報じられた後、「一身上の都合」を理由に委員を辞職していた。

　香川容疑者が逮捕されたことについて、村岡嗣政山口県知事は「大変驚いている。容疑が事実であれば大変残念だ。まずは真相の解明をしっかりと行っていただきたい」と述べた。

    香川容疑者を委員に任命したことについて、「子どもに関する犯罪も増えてきているなかで、県の会長になり、全国の会長をされていて非常に知見が豊富な方だったので、そうした知見や力を出していただきたいという思いで任命した」と語り、問題の発覚前に任命したことから人選に問題はなかったという認識を示した。

　香川容疑者が昨春まで園長と運営法人の理事長を務めていた幼稚園は、逮捕前日の12日から新型コロナウイルスの影響で休園しているという。

　一連の動きから見えるものは何か。

　昨年3月、使途不明金の問題が報じられた後、「一身上の都合」を理由に委員を辞職していたが、逮捕されていなかった。今月8日に安倍元首相が銃弾に倒れ死去すると、間髪を入れず13日、香川容疑者と前事務局長が逮捕された。

　岸田内閣に大きな影響力を持つ安倍元首相の死こそが、逮捕に踏み切る大きな要因となったのではないだろうか。

【（株）データ・マックス顧問　浜崎　裕治】