2024年11月24日( 日 )

世界中に拡大する「サル痘」 日本にも上陸!(中)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

 アメリカ保健省の長官は「すべての国民はサル痘への備えを強化する必要がある。サル痘は新型コロナとは違うものの、感染力は強く、罹れば痛みをともなう。危険な病原菌であることは間違いない」と警戒を呼びかけています。ニューヨークでもサンフランシスコでも非常事態宣言が発令されました。

 翻って、去る5月上旬にスペインで、8,000人が参加して開かれた大規模なLGBTフェスティバルの参加者から感染が急拡大。同じ頃、ベルギーでも同性愛者のイベントが開催されたため、この2つの集会が今回の感染源とみられています。

 すでに欧米や中東を中心に感染が急拡大し、スペインやブラジルでは死者も出ました。ブラジルでは1,000人を超える感染者が確認され、それ以外にサル痘の疑いのある患者が500人を超えています。スペインでは4,000人ほどの感染者が出ており、120人は入院中と報道されています。

不安な都会 イメージ    日本の厚労省は「発症から2~4週間で治癒する」と説明していますが、海外の事例を見れば、そんな生やさしいものではなさそうです。何しろ、コロナと違って「死亡することはない」と言われていたのですが、その楽観論はすでに覆されています。ブラジルの場合はリンパ腫、スペインの場合は脳炎を引き起こしたことが死につながったとのこと。

 これまでの感染患者の大半は比較的若い男性の同性愛行為が引き金になっているようですが、子どもや女性の間でも感染が広がっていることから、感染者が使ったタオル、シーツ、コップ、筆記用具などを通じても感染することが判明しています。

 WHOのテドロス事務局長も「ハグやキスによっても感染する恐れがある」と警告を強化。同性愛者でなくとも用心するに越したことはありません。こうした緊急事態を受け、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では「警戒レベル2」を発し、海外渡航には細心の注意を払うように促しています。

 感染すると数週間の潜伏期間を経て、顔から手足、全身に発疹が表れます。初期の症状は発熱、頭痛、筋肉痛、悪寒、疲労感などで、コロナとよく似ているわけです。とはいえ、致死率は1%から最悪10%程度であるため、過度の心配は不要とも言われています。しかし、このほど来日したバイデン大統領も「無視できない危険をはらんでいる。早急な対策が欠かせない」と危機感を募らせていました。

 また、WHOでは「現時点ではパンデミックになる可能性は断定できず、原因や感染経路の詳しい分析を行っている」とのこと。要は、「いまだ未知の要素が多い新たな感染症」というわけです。

 ヨーロッパでは英国の感染者数が最多となっています。そのため、英国でもベルギーでも感染した場合には「21日間の隔離が必要」との指示が出されました。

 今後、燎原の火の如く、急速に拡大する恐れも否定できません。そのため、アメリカをはじめ、ドイツやフランスなど欧州各国では早速、サル痘用のワクチンを緊急かつ大量に確保する動きが始まっています。バイデン大統領いわく、「アメリカ国民全員に行き渡る量を入手するので安心してほしい」。この数年、コロナのパンデミックを経験したことで、対策は素早いといえそうです。

 実は、こうした事態を予見していたかのように、天然痘ワクチンを改良してサル痘用のワクチンを開発していたワクチンメーカーがあるというので驚きます。しかも、このメーカーにはビル・ゲイツ氏やCDCのファウチ博士が資金提供を行っていたとのこと。まさにCOVID-19用のワクチンを手回しよく準備していた欧米のワクチンメーカーと同じ流れが見て取れます。

 しかも、専門家の間では「現在拡大中のサル痘はアフリカ由来のウイルスとは違い、人工的な手が加えられている」との指摘も出ており、ますます疑わざるを得ない状況です。

 思い起こせば、ビル・ゲイツ氏は新型コロナウイルスが発生する直前の2019年10月に、ニューヨークで「イベント201」と称するシミュレーション会議を主催し、「感染症が勃発するので、ワクチンメーカーに投資すれば大儲けできる」と呼びかけていました。実際、その通りになっています。

 今回注目を集めているメーカーは、オランダに生産拠点を構えるババリアン・ノルディック(BVNRY)社です。現時点では、サル痘ワクチンとして認証を得ているのは、このBVNRY社製が最も先を行っています。

 そこで、バイデン大統領は取り急ぎ1億2,000万ドル、すなわち1,200万人分のワクチンを発注しました。そうした報道が行われると、同社の株価は70%も急騰し、現在も高騰が続いています。これでは「モンキー・ポックスは投資家を大儲けさせてくれる“マネー・ボックス”か」と揶揄されるほどです。

 しかし、昨年3月、ドイツのミュンヘンで開催された国際バイオセキュリティ会議においてはすでに、「22年5月中旬にモンキー・ポックスが世界的に大流行する」というシミュレーションが行われていました。この会議に参加した専門家の予測では、「当初の被害者は限定的だが、23年1月10日までには死者の数は130万人に達する。23年末には、死者は数億人にまで膨れ上がる可能性がある」とされています。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

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