2024年12月22日( 日 )

【福岡IR特別連載99】長崎IR“支離滅裂” ハウステンボス含めたマネーゲーム

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 先日、地元の長崎新聞などのマスコミにより、筆者が予測し、指摘していたことが、再びまことしやかに報道された。

 その内容は、以前からの米国不動産投資金融業の「CBRE」に続いて、今回は、また同じ米国不動産投資金融業の「Cantor Fitzgerald」から約10億ドル(1,350億円)の資金調達、さらに、カナダの「クレアベスト」(和歌山IRで頓挫)から5億ドル(675億円)、またまた香港とカリブ海地域などからも長崎IRに関する資金調達が現在交渉中だとわかった、と伝えている。

 つい先日も「ハウステンボス売却・転売問題」で、香港に本社を置く中華系不動産投資企業「PAG」による800億円超の買収が有力だと報道されたばかりである。いずれもIRには必須の国内大手資本などの話は一切出ず、香港や米国の不動産金融業者に偏った報道内容に終始している。

 そこに朝長佐世保市長が「所有者が代わっても、IRに影響しない…」と、理屈に合わないことを公言する始末である。

長崎県庁 イメージ    これらは、指摘していたように、味噌もクソも一緒の"支離滅裂"な状態で、馬鹿馬鹿しくて、何と解説してよいやら…という感じである。

 一言でいうなら、長崎IRは、すでに、IRプロジェクトではなく、国際的な不動産絡みのマネーゲームになっており、その付加価値を利用したハウステンボス施設の売却・転売話の延長なのである。まさに、長崎県行政の能力不足が“馬脚を現して”いるのだ。

 ハウステンボス売却・転売に関わる「PAG」を中心としたグローバルな不動産投資企業による完全な「マネーゲーム」の様相を呈しており、本来のIR開発主旨から完全に逸脱している。

 長崎新聞を筆頭に地元マスコミは、なぜこれらが理解できないのか?

 筆者は前回、世界観も、グローバルビジネスも分からない"田舎のお人好し達"だと指摘し、非難したばかりだ。どうしようもない愚かさである。

 本件IRの落札者である欧州のカジノオペレーター「カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン」(CAIJ)はどこにいるのか?また、その運営主体である「KYUSHUリゾーツジャパン(株)」とその資本構成は?

 今後、ハウステンボスの所有者は中華系の「PAG」で、IR施設全体の実質所有者は米国の「Cantor Fitzgerald」となり、米中覇権争いの状況に鑑みて、全く理屈に合わない。日米経済安全保障問題は影響しないのか。これが長崎IRの形態なのか。

 長崎県がすでに国に対し区域認定申請済みであるなか、その事業主体の“母屋”のエクイティ(総資本)を海外の不動産投資企業とどのように構成するのか?すべてにおいて本末転倒で、支離滅裂としか言いようがない。

 彼ら海外の不動産金融業者は買収後、短期で転売するのが本業のビジネスなのだ。ハウステンボスを長期間保有することなどは考えない。ゆえに、これらの報道記事は筆者にはまったく理解不能である。

米中金融業者に愚弄され、狼狽している長崎県行政

 大阪IRの場合、今回の「区域認定申請」で、資本構成などは明確に一般開示されている。

 米国大手IR投資企業のMGMが全体の40%を出資保有し、併せて、国内大手企業オリックスも同様の40%を出資保有し、残りの20%を地元・関西電力やパナソニック、NTT西日本、近鉄グループなど20社が出資する予定だ。これらは、実にシンプルで“政府が指導する”本件IR運営開発事業主体(コンソーシアム)の仕組みである。米国資本と国内資本が同等にタッグを組んで事前に形成されているのだ。

 これに対して、長崎IRは理屈に合わず、比較対象にもならず、米中の海外不動産金融業者ばかりで事業主体の形成すらできていない。なぜこのようなことになるのか。多分、その答えは1つしかない。

 それは、本件公開入札の落札者であるCAIJの林社長とHISの澤田社長らが組んで、共に戦略を練ったうえで、それぞれパッケージ交渉をしたからであろう。ハウステンボス売却に林社長のコメントがないのは不自然である。

 長崎県の担当者もこれを認め、CAIJの傘下であるKYUSHUリゾーツジャパンが中心に資金調達していると言っている。これは「ハウステンボス売却・転売問題」と「長崎IR誘致開発事業」の可能性が、米中の不動産金融業者と密接に仕組まれている「マネーゲーム」なのだ。

 これらは筆者が指摘していた通りの展開で、IR事業を良く分かっていない米中の金融業者と、長崎県行政だけが“蚊帳の外”に置かれ、愚弄され、狼狽している茶番劇なのだ。

 ただし、これらの各関係者の利害だけは一致しているから始末に悪い。

 HISの澤田氏とCAIJの林氏は、すぐにでも資金が欲しい状況にあり、県行政は、自ら堀った墓穴を何とか埋め戻したい、という理屈である。そこに、この国のビジネス(IR事業という特殊な)がわからない中国・香港、米国の不動産投資金融業者が感心を示し、積極的に進んでいるという話だ。

 同じ失敗を何度も重ねているだけである。

 結果は、前述の米中投資金融企業に事実上の現金(現ナマ)は、今必要なく、コミットメントレターなりを諸々の停止条件付きで出しておけば良いとしているだけなのだ。簡単にいうと、その内容に、見せたくないものがあるからこそ、長崎県とその首長の大石知事は「本件IR事業の協定書開示」ができないのである。

 長崎県は、この成り行きと現在までの結果すべてを予想できず、愚かにも国に対して「区域認定申請書」を提出してしまっている。従って、これに現在の諸事情が具体的に記載されているはずなど絶対にないのだ。

 従って、近いうちに「ハウステンボス売却・転売」が現実のものとなれば、その内容とは大きく異なり、国からの承認が得られるはずもなく、HISの澤田氏だけが「一人勝ち」となり、愚弄された知事や県議会議員の政治生命は終わるだろう。

 ゆえに、長崎県は可能な限り早く、本件IR事業の中断を決断し、実行するべきだ。

【青木 義彦】

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