2024年07月16日( 火 )

シーガイアの現状(後)

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運輸評論家 堀内 重人

リップルウッドに買収後のシーガイアと「オーシャンドーム」

 経営を再建するため、2002年10月1日からオーシャンドームの営業がいったん休止された。翌03年から「季節営業」というかたちで営業を再開したが、入場者数が少ない状態からは脱却できなかった。そして05年には、大人が2,000円、子どもが1,000円という水準にまで値下げしたが、逆に低価格路線に走りすぎたこともあり、入場者は増えたが減収となり、結果的に閉鎖へと追い込まれてしまう。

 05年度決算は、12億円の損失であり、累積損失は78.9億円であった。だが税引前利益に、特別損益、支払利息、および減価償却費を加算すると、会社設立18年目でようやく、初めて1億3,800万円の黒字となり、経営は改善の兆しを見せた。

 オーシャンドームは、土日・祝日や夏季観光シーズンこそ、賑わうことはあったが、平日は閑散としていた。そうなると、プール以外のエンターテインメントや施設を整備し、集客を図らざるを得なかった。

 そこで75億円を投じて、「フェニックスゴルフアカデミー」という初心者でも楽しめるゴルフ施設と温泉施設を整備するなど、富裕層をターゲットに経営再建を進めたことにより、客単価を向上させることに成功した。

 07年3月期決算の営業利益が2億2,200万円となり、1993年の施設オープン以来初の営業黒字となったが、中核施設のオーシャンドームだけが唯一の赤字であり、2007年9月30日に閉鎖された。

 その後もオーシャンドーム自体が残ったが、その活用策が課題であった。そこで09年12月には、宮崎県と宮崎市に対して、無償で施設を提供することで、宮崎県や宮崎市に活用を検討してもらおうとしたが、宮崎県は10年8月、維持費や改修費の負担が大きいとして受け入れを拒否した。

 12年3月26日には、パチンコやパチスロをはじめとした総合エンターテインメント企業であるセガサミーホールディングスが、オーシャンドームを含めたフェニックスリゾートの全株式を買収したことで、完全子会社とした。それゆえ現在のシーガイアは、完全に民営化されており、宮崎県や宮崎市はまったく株式を所有していない。

 それ以降は、同社が活用に意欲を見せていたが、「オーシャンドーム」の完成が1993年と、老朽化が進んでいた。それゆえ2014年8月1日には、活用を断念して施設を解体する方針を表明した。

「シーガイアの現状」

写真2

 現在、オーシャンドームは解体されており、その土地は更地となっている(写真2)。計画では、屋外競技用のアスリートの強化拠点として、ナショナルトレーニングセンターの誘致を目指していると聞く。

 現在のシーガイアの目玉は、「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」であり、16年8月1日に、リニューアルオープンした。開業時から標準の客室でも50m2の広さを誇り、スイートルームを含む全744室が、オーシャンビューというように、設備面でも優れていた。総工費が100億円であり、約1年半の工期を要するなど、開業以来の大規模な改修工事であった。改修工事では、ホテルの客室の約96%をリニューアルしただけでなく、コンベンションセンターのロビーの大幅な改修などを実施した。

写真3:宮崎港
写真3:宮崎港

 シーガイアは、宮崎駅や宮崎港(写真3)からは、車で30分以内のアクセスが可能であり、宮崎空港からも1時間もあれば、アクセスが可能であるなど、交通の便が良い。しかし、それにも関わらず、地元の利用者が少なく苦戦している。そこで韓国・中国からの観光客の誘致や宣伝を積極的に行い、また国内の観光客の集客にもテコ入れを行い、稼働率は上昇しつつある。

 また気軽に宿泊ができるように、コンドミニアムタイプのホテル「ラグゼ一ツ葉」、1戸建やグループタイプなど、14棟72室で構成されるコテージの「コテージ・ヒムカ」なども備わる。これらは長期滞在も視野に入れており、それに関連してレンタサイクルやテニスアカデミー、乗馬クラブなども備わっている。

 それ以外に、宮崎市フェニックス自然動物園管理(株)が管理・運営する施設として、宮崎市フェニックス自然動物園(写真4)や、植物園がある都市公園の「フローランテ宮崎」がある。ただ、シーガイアと関連する施設との間に無料のシャトルバスが運行されているが、運転は30分間隔であり、利便性の向上が課題となっている。

写真4:宮崎市フェニックス自然動物園
写真4:宮崎市フェニックス自然動物園

(了)

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