2024年11月24日( 日 )

東京五輪汚職の核心は、電通と政界との「談合」(前)

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 「すべての道はローマに通ず」。ローマ帝国の盛時に、世界各地からの道がローマに通じていたことから、多くのものが中心に向かって集中しているたとえ。スポーツビジネスの電通王国にも、このことわざは通用する。つまり、すべての利権の道は電通に通ず。東京五輪汚職は電通に向かって集中している。政商=電通の成れの果てである。

電通社長「痛恨の極み」発言

汐留 電通本社ビル イメージ 「全グループの総力を挙げて下支えしてきたにもかかわらず、このような事態になり、誠に痛恨の極み」

 東京五輪・パラリンピックの汚職事件に関し、東京地検特捜部の家宅捜索を受けた広告大手(株)電通の槫谷典洋(くれたに・のりひろ)社長(56)が、社員向けに一連の騒動に関するメッセージ動画を配信した、と共同通信(9月10日付)が報じた。

 また電通元専務で、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)が受託収賄容疑で再逮捕され、電通時代の後輩、深見和政容疑者(73)も同容疑で逮捕されたことに、槫谷氏は「極めて遺憾」と強調した、とも伝えている。

 東京地検特捜部が電通を家宅捜索したのは、東京五輪を仕切った本丸に切り込んだということである。今や、電通は「国家なり」を体現する政商なのである。

収賄容疑の高橋、深見両容疑者の関係

 特捜部は9月8日、高橋容疑者と、知人のコンサルタント会社代表・深見容疑者を受託収賄容疑で逮捕した。高橋容疑者は、紳士服大手の(株)AOKIホールディングスに続き、出版大手(株)KADOKAWAからもスポンサー選定の謝礼として賄賂を受け取っていた容疑で再逮捕した。

 KADOKAWA側からは、元専務・芳原世幸(64)と五輪担当室長だった馬庭教二(62)の両容疑者を贈賄容疑で逮捕した。さらに9月14日、会長・角川歴彦(つぐひこ)容疑者(79)を贈賄容疑で逮捕した。

 報道によると、KADOKAWAからの賄賂は、電通時代の後輩・深見容疑者のコンサル会社(株)コモンズ2(東京都中央区)を経由して受け取っていた。

 KADOKAWAは19年4月、協賛金2億8,000万円でスポンサーとなり、同年7月~21年1月にスポーツ事業のコンサル料として、深見社長の会社に計7,600万円を送金した。特捜部はコンサル料を賄賂と見なした。

 日刊ゲンダイDIGITAL(9月8日付)は、大手広告代理店関係者の話をこう報じた。

 〈「電通時代の先輩・後輩というよりも親分、子分の関係に近く、スポーツビジネスの第一人者とされる高橋容疑者は、深見容疑者にとって頭が上がらない存在。深見容疑者は『コモンズ2』を、高橋容疑者が電通顧問を退任して『コモンズ(株)』を設立した2011年の翌年に設立しています。高橋容疑者は13年までコモンズ2の取締役に就任し、両社の商取引は日ころから行われていたようです」〉

 高橋容疑者が株式の20%を保有する「コモンズ2」は、自身のコンサル会社「コモンズ」(東京都世田谷区)のダミー会社で、賄賂を受け取るトンネル会社と見なされたのも故なしとしない。

スポンサー調整会合に森・組織委元会長が同席

 「コモンズ2」の深見代表は、KADOKAWAの馬庭元室長からスポンサーになりたいと相談を受けた。深見代表は高橋元理事に話を伝え、2人は出版分野のスポンサーとして、KADOKAWAと別の出版社の2社をセットにしようと計画した。

 ハイライトは、組織委元会長の森喜朗元首相(85)も同席してのスポンサー調整の会合。

 毎日新聞(9月10日付)の記事を引用する。

 〈会合は17年5月に東京・赤坂の飲食店であり、KADOKAWAの角川歴彦(つぐひこ)会長(79)や別の大手出版社の社長が同席。元理事の知人でコンサルティング会社社長の深見和政容疑者(73)=収賄容疑で逮捕=と、KADOKAWA顧問の芳原世幸(よしはらとしゆき)容疑者(64)=贈賄容疑で逮捕=も同席していたという〉

 〈森元会長と別の大手出版社の社長は、過去に元会長をめぐる同社の雑誌記事が原因で折り合いが悪く、元理事には和解の場を設けた意図もあったとみられる。しかし、その場で森会長は社長に「嫌いだ」などと発言し、スポンサーの話はまとまらなかったという。大手出版社は18年ごろ、正式にスポンサーを辞退した〉

森氏が講談社を排除

 辞退した大手出版社とは(株)講談社、同席したのは野間省伸(よしのぶ)社長(53)。「講談社の中興の祖」と呼ばれる故・野間省一氏の孫にあたる。1964年の東京五輪では、省一氏が業界団体のトップとしてポスター集作成や組織委などへの寄付も行っていたこともあり、講談社は今回の東京五輪では早くからスポンサー契約を検討していた。

 だが、組織委の会長だった森氏から横槍が入った。

 文春オンラインは9月7日、「森喜朗・組織委会長が『講談社は絶対に認めない』 KADOKAWA のライバル社を排除《音声》」と題する記事を公開した。

 講談社が辞退することになった内幕について、2020年初春に実施した森氏のインタビューの内容から推測している。森氏は次のように語ったという。

 〈「私がこの間、組織委員会になってから、ある会社が契約のアレをしたいというので、何をやるのかと思ったら、相手が講談社だった。私は『絶対に認めない』と言った。何かって、『俺がこんなものを認めるなら辞めようと思う』と言ったら、みんなビックリして」
 その結果、どうなったか。森氏はこう続けた。

 「講談社をやめて、別の出版社を連れてきたけどね」〉

 最終的に講談社は辞退し、19年4月、KADOKAWAが出版社枠の大会スポンサーに選ばれた。

(つづく)

【森村 和男】

(後)

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