【BIS論壇No.391】中国「一帯一路」の現状
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は9月15日の記事を紹介する。2013年9月に習近平・中国国家主席がカザフスタン、インドネシアで『一帯一路構想(Belt & Road Initiative=B&RI)』を発表以来、9年。中国は着々とアジア、ユーラシアを中心に、諸プロジェクトを推進中だ。20年のコロナパンデミックが発生以降、中国はメデイカル(医療)シルクロードについても注力。マスクやワクチン、医療機器のアジア、東欧、アフリカ、中南米などへの輸出を強化している。
だが、日本を中心に欧米のB&RIへの対応は総じて批判的な論調が依然として目立つ。曰く、『転機迎えた中国「一帯一路構想」、債務危機や政治的緊張が脅威』~当初は中国からの投資拡大によってもたらされる経済の急成長のメリットばかりが注目されてきた~しかし、この数年で目立ち始めたのはずさんな運営、債務問題への発展、汚職の蔓延といったデメリットだ。共栄を狙った経済政策というより、米国などほかの大国との勢力争いのなかで、中国の国際的な影響力を一段と広く強めていくための手段という側面が強まってきている~』(日経9月13日)など、批判的論調が最近とくに日本メデイアに横溢している。
『G7諸国、中国「一帯一路」対抗で供給網、東南アのインフラ覇権争い』(日経9月4日)。『一帯一路「問題債権」3倍、20~21年 7.4兆円、コロナ直撃。融資6割減少、新興国の重荷』(日経9月18日)と題し、財政破綻にみまわれている「債務の罠論」で悪名高いスリランカのハンバントタ港を中国が債務免除と引き換えに99年間の運営権を得た例を筆頭に、中国の融資条件の再交渉が20年21件、21年10件と増加。20~21年の合計で520億ドルに達し、20~21年に「問題債権」は3倍に増加したと、中国のB&RIの苦境を大きく報じている(日経9月18日)。さらにカンボジアのリアム海軍基地の拡張工事を中国が無償で支援したが、これを「中国に飲み込まれた」と批判的な報道がなされている(日経8月26日)。さらに、『G7諸国は、中国「一帯一路」対抗で供給網。東南アのインフラ覇権争い』と日経9月4日号は報じ、さらに『「一帯一路」プロジェクトに対抗するため、USAIDが「クリーンパワーアジア」プログラムで70億ドル、EUのグローバルゲートウェイ構想や、QUADの500億ドルのプログラムが動き出している』と報じている。
北岡伸一氏は「中国の膨張に対抗するため日本は「西太平洋連合」の構築を目指すべきだ」と強調している。(朝日9月13日)
さらに、米国バイデン政権は「一帯一路」への対抗を目指し、インド太平洋の大経済圏「IPEF(Indo Pacific Economic Frame Work=インド太平洋経済フレームワーク=14カ国)」構想を発表。IPEFはRCEPやTPPの規模を上回り、人口25億人(世界の32%)、GDP37兆ドル(39%)、貿易規模9兆ドル(28%)だ。止まらぬ円安、縮み衰退する日本はドル建てGDPで30年ぶりに4兆ドル割れとなった。今日、日本は外国から「衰退途上国」「年老いたゴールドメダリスト」と呼ばれているそうだ。
「『一帯一路』はピークアウト。アジアの多くの経済連携に参加する日本は媒体役を目指せ」(朝日・吉岡桂子)の提言を日本は日中国交回復50周年の秋に実行すべきだろう。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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