2024年11月24日( 日 )

KADOKAWA会長逮捕 蘇る角川兄弟の「お家騒動」の記憶(前)

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 東京五輪汚職で、大会スポンサーだったKADOKAWAの角川歴彦会長が贈賄容疑で逮捕された。逮捕の背景には、天賦の才で一世を風靡した、兄・角川春樹氏への対抗心があったのではないか。「兄弟は他人の始まり」という。兄弟の確執が生じた角川書店の「お家騒動」を振り返ってみよう。

五輪汚職でまたトップが逮捕

汚職 イメージ    東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、東京地検特捜部は、大会スポンサーに選定されるように大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者(78)に、約6,900万円の賄賂を渡したとして、出版大手(株)KADOKAWAの会長・角川歴彦(つぐひこ)容疑者(79)を贈賄容疑で逮捕した。報道各社は9月14日の朝刊1面トップで大々的に報じた。

 その約1週間前に、特捜部は高橋元理事と、元理事の電通時代の後輩でコンサルタント会社(株)コモンズ2代表の深見和政容疑者(73)を計7,600万円の受託容疑で再逮捕。KADOKAWA側は元専務・芳原世幸(64)と元五輪担当室長・馬庭教二(63)の両容疑者を贈賄容疑で逮捕し、角川会長の自宅も家宅捜索していた。

 報道によると、逮捕容疑はこうだ。角川会長は芳原元専務、馬庭元室長と共謀し、高橋元理事にスポンサーに選定してほしいと依頼。そのうえで、2019年9月~21年1月、9回で計6,900万円の賄賂をコモンズ2に振り込んだ疑いだ。

ワンマン経営者の人物像

 出版界は、(株)講談社、(株)小学館、(株)集英社を大手3社と呼ぶ。KADOKAWAはこうした従来型の出版社ではない。出版だけでなく映画、テレビ、ゲーム、ウェブから不動産や物流まで包括する総合エンターテインメント企業という捉え方が一般的だ。

 紙の本の売れ行きが低迷するなか、出版業界の先陣をきるようにして多メディア路線への改革を進めてきたのが角川歴彦容疑者だ。

 角川歴彦氏とは何者か。報道各社はKADOKAWA関係者の話をもとに歴彦氏の人物像を描いた。

 朝日新聞は「会長には権力はないが、権威はある」「何事も会長に上げないと、社長では判断できない」とする。読売新聞は「会長は裸の王様で、起こるべくして起きた事件」「会長がやりたいといえば、誰も逆らえない社風」とする。毎日新聞は「出版の大御所」、産経新聞は「歴(つぐ)の一声」、日本経済新聞は「出版業界の『異端児』」の見出しが躍る。これらの報道からは、ワンマン経営者の人物像が浮かんでくる。

「歴彦氏には暗い権力欲がある」という評

 角川歴彦氏について語らせたら、右に出る者がいないのがこの人だろう。出版社(株)幻冬舎の見城徹社長(71)。見城氏はKADOKAWAの前身となる角川書店で、敏腕編集者として17年勤めた。歴彦氏と喧嘩別れして角川を飛び出した。“アンチ歴彦”の急先鋒で、歯に衣着せぬ舌鋒はとにかく過激だ。

 東スポWEB(9月15日)は、”青汁王子”こと三崎優太氏(33)の公式YouTubeチャンネルで、幻冬舎の見城徹社長が生配信の電話出演に応じ、贈賄容疑で逮捕されたKADOKAWAの角川歴彦会長の逮捕劇に言及したと報じた。東スポの記事を引用する。

 「(見城氏は)KADOKAWAに特捜部の捜査のメスが入ってから、自身のSNSで『部下が逮捕され、命令した角川歴彦氏は逮捕を免れるならこんなふざけた話はない』『角川歴彦氏ほど姑息な人はあまりいない』などと発信をしていた。

 それだけに角川氏が逮捕されたことに見城氏は『なぜ彼が逮捕されるかをずっと書いていて、ちゃんと今日逮捕された』とご満悦だ。

 事件の背景について、見城氏は『(東京五輪のスポンサーになることで)ただ自分のブランドを強化したい。角川春樹という兄貴はひまわりのような人だが、(弟の)歴彦さんは本当にかすみ草で、何をやってもじと~と暗いのよ。だから暗い権力欲がある』と指摘した。」

 これを読むと、見城氏は歴彦氏のことになるとなぜいきり立つのか、そこが知りたくなる。30年前の、角川書店で起きた「お家騒動」に、起因しているのである。

(つづく)

【森村 和男】

(後)

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