【時代を切り拓く女性経営者(1)】女性活躍の場を日本中に
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(株)デキャンタージュ
代表取締役 小林 由紀 氏手づくり石けん事業、コスメの企画開発事業を軸に、全国の百貨店出店、大手ホテルへのアメニティ提供などの事業を展開する(株)デキャンタージュ(福岡市中央区)。代表取締役社長小林由紀氏は、2017年に全国商工会議所女性連合会主催「第16回女性起業家大賞」スタートアップ部門の優秀賞を受賞したのを機に、さらなる社会貢献をはたすため、日本フラワーソープ協会を発足させている。小林氏に起業から受賞までの軌跡、そして今後の展望について話を聞いた。
──設立の経緯は。
小林由紀氏(以下、小林) 大学卒業後、長年エンジニアとしてシステム開発の仕事をしていました。「遊び心を大切にして、世間が考えないような面白いものをつくりたい!」と、2013年にシステム開発やスマホアプリ開発、ホームページ制作会社としてデキャンタージュを立ち上げ、翌年に手づくり石けん事業やコスメの企画開発事業を開始しました。
私自身、子どものころから皮膚が弱く、じんましんやアレルギーで肌トラブルに悩まされていたことから、体質に合う石けんを自分でつくり、同様に悩む人の手助けになればと商品化に着手したのです。
2017年に誕生月で選べるバースデーストーンソープを考案し、全国商工会議所女性連合会が主催する「第16回女性起業家大賞」スタートアップ部門の優秀賞を受賞しました。「モノを売るだけではなく、贈る人、贈られる人も幸せな体験ができるコトづくり」をコンセプトに商品化に取り組み、全国の百貨店やホテルと取引しています。
──起業後に体験した困難や取り組んだことは。
小林 一番は営業活動です。私はエンジニアの経験が長くて業の経験がなく、当初は商談会で大変苦戦しました。しかし、必ず全国の百貨店に商品を並べる、と心に決めており、あきらめず戦略を立てて粘り強く挑み続けた結果、有楽町マルイの母の日イベントへの出店が決まりました。その後、複数の百貨店のイベントに単独出店を実現させました。
2度の「東京インターナショナル・ギフトショー」への出店も大きかったと思います。福岡の零細企業が東京のギフトショーに出店する、というのはとても勇気がいることです。緊張や苦労は当然ありましたが、全国各地で多数の方とつながりをもつことができ、貴重な経験をさせていただきました。
また、商品開発のためのリサーチも徹底しています。ターゲット層の女性の嗜好を把握するために、社員と多数の百貨店に出向き、女性向け商品を見て回りましたし、女性誌を月に何十冊と読み込み、言葉や形、大きさや色使いなどを分析して1つひとつの商品をつくり上げました。
ゼロからスタートしたため苦難も多くありましたが、あきらめない強い気持ちを持ち続け、人との出会いにも恵まれて、事業を継続できていることに感謝しています。
──日本フラワーソープ協会はどんなことを行っていますか。
小林 2017年に女性起業家大賞優秀賞を受賞後、女性の範たる経営者になりたいという思いを強めるとともに、社会貢献は地域を活性化させ、地域経済にもより大きな効果をもたらすと考えるようになりました。そこで2018年、女性の活躍推進・障がい者の就労支援の新たな事業として、国産フラワーソープをつくる「日本フラワーソープ協会」を設立しました。
協会では20年から結婚や出産後も女性に輝いてほしいと願い、国産フラワーソープの技術と造形美を披露する「日本フラワーソープアーティスト大賞」というコンテストを開催しています。表彰式はホテルで華やかにとり行います。
女性には美しく着飾って出かける機会や、人前でスピーチをするといった刺激を受けられる場が必要です。コンテストは展示会の会場とウェブからも投票が可能となっています。投票してくれる人が増えていくと自然と切磋琢磨されて、作品の出来栄えもどんどん上がっていきます。
コロナ渦で外出も人との交流の場も減り、社会全体が塞ぎがちでした。いつもは人であふれている天神の街が閑散としているなか、多くの生徒さんにとってコンテストがある、やることがたくさんあるというのは心の支えになったと感じています。
──コロナの影響とアフターコロナ後の事業展開は。
小林 コロナの影響はやはり大きかったです。協会ではレッスンに参加できない方や、感染による急なキャンセルにも対応するため、いち早くオンライン講座を開講し、動画で学べる仕組みを取り入れました。感染症対策として自身の健康管理に気を配るのはもちろん、多方面のリスク管理も並行して行っていますが、地域によっては出張することも難しいです。とはいえ、今後は少しずつ従来の活動量に戻し、事業拡大を図る予定です。
最近は、起業や経営に関するご相談も受けています。とくに飲食業界には、コロナで心が折れてしまった方が少なくありません。これだけ長期にわたって、休業やさまざまな制限を余儀なくされたことで、モチベーションが上がらないのは自然な流れですが、それでは経済も回りません。街の活性化のために少しでも力になりたいと考えています。
──女性経営者はまだ全体の約14%です。社会ではたす役割とは。
小林 女性が経営者になり、第一線を走るのは難しいことです。責任はもちろん、さまざまなプレッシャーが重くのしかかります。男性でも女性でもまずは覚悟が必要であり、前だけを向いていくしかありません。これから経営者という道を選ぶ女性には、信念をもって前進してほしいと思います。
あらゆる面で男女差がなくなってはいますが、現実はまだ男性社会だなと感じることもあります。そこで「男性と戦う!」という姿勢は好ましくなく、女性の良さを生かして共存を図ることが大切です。戦うと敵をつくってしまいます。女性経営者には力強さだけではなく、柔軟な姿勢と絶妙なバランス感覚が大切です。理不尽さや疑問を感じることがあっても、一喜一憂してはいけません。しなやかにたくましく、乗り越えていくことが大事です。今後は、女性の働き方とともに結婚観や夫婦の在り方もどんどん変わっていくでしょう。
──今後の展望についてお聞かせください。
小林 日本フラワーソープ協会のレンタル事業を強化していきます。協会の学びを趣味で終わらせるのではなく、循環型サービスとして確立させたいと考えています。レンタル事業は会員がつくった作品を買い取り、アレンジして企業やクリニック、飲食店やホテル、介護施設や斎場などに貸し出すシステムです。月単位や2カ月に1度交換するため、季節に合ったフラワーソープが楽しめます。
コロナ以降、在宅ワークの需要は上がっています。会員は講師資格取得後に教室を開くこともできますし、レンタル事業で作品を売ることで、在宅ワークが可能になります。出産育児、介護などの個々の生活状況に合わせた働き方を、誰もが選択できるようにと願っています。
協会の人材育成にも尽力しています。講師となる人物は、技術面だけではなく、他人を尊重して思いやる心をもち、人として魅力的でなければならないと考えています。所作や言葉使いなどのマナーやルールから指導しています。
このレンタル事業を確立させるために、各方面との打合せや調整を推し進めています。女性が活躍できる場を日本中に広げていくことが、今の最大の目標であり、生きがいです。
【清家 麻衣子】
<プロフィール>
小林 由紀(こばやし ゆき)
独学でマイクロソフト認定の資格を取得し、OLからパソコンスクールの講師に転身。その後、3Dグラフィックスソフト開発やメーカーのシステム開発の業務を経て、2013年7月、システム開発・スマートフォンアプリ開発を手がける(株)デキャンタージュを設立。17年に誕生月で選べる1枚使い切りの無添加石けん「バースデーストーンソープ」の考案で全国商工会議所女性会連合会の「第16回女性起業家大賞」スタートアップ部門の優秀賞を受賞。2018年、日本フラワーソープ協会設立、理事長就任。法人名
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