得意分野に特化した新業態開発 ドンキのスピンアウト戦略の成否は?(中)
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ドン・キホーテ((株)パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は安さとアミューズメント性を打ち出し総合業態として成長し続け、日本有数の小売業に上り詰めた。ここ1年あまり、コスメ、菓子、酒といったカテゴリーを特化した新たな業態を開発し、「Z世代」をターゲットにした「キラキラドンキ」も出店、次代に向けて未来の顧客となる若者の取り込みに動いている。
強みをもつ専門ショップ
これに先立ち、昨年5月、新たな業態店を相次いで出店した。JR東京駅直結の八重洲地下街の「お菓子ドンキ」および「お酒ドンキ」である。ドンキ初となるカテゴリーを絞り込んだ特化業態で、通路を挟んでショップが対峙しており、いずれも超ミニショップで売り場面積は合わせて169m2、ドンキ同様に所狭しと商品が陳列されている。両店とも従来のドンキでは販売していない珍しい酒やアジアを中心とした輸入菓子、アミューズメント性のある商品を取りそろえ、従来にない専門的なショップだ。賑わいを打ち出した売り場に商品をぎっしり詰め込んだ陳列で、一目でドンキだとわかる店づくりにもなっている。
「お菓子ドンキ」のアイテム数は約1,000点、ワールドスイーツコーナーを設け、中国・韓国を中心としたアジアからヨーロッパまで幅広く取りそろえるほか、食品玩具や昆虫食などの変わった商品、珍味なども取りそろえる。8種類のカラフルなフレーバーのレインボーポップコーン、全国のドンキでもここでしか買えないオーストリアの「カザーリ バナナチョコ」などのレアアイテムもあり、旅行気分で買い物を楽しめる。国内メーカーの人気商品も展開している。
「お酒ドンキ」は約1,200アイテムを展開、珍しいクラフトビール、10万円以上の高額酒などバラエティーに富んだ品ぞろえだ。何が出てくるかわからない「ミステリースパークリングワインBOX」や、「ウイスキーがちゃ」などアミューズメント性のある商品を用意したほか、ドンキ限定の自社仕入れのワイン、80種類以上のミニチュアボトル、若者に人気のパーティードリンク「クライナーファイグリング」20種類以上、果肉感のあるアイスクリーム専用酒も展開している。
11月には、「お菓子ドンキ」の2号店を大型商業施設「モラージュ柏」(千葉県柏市)に出店し、同時に新業態の「コスメドンキ」と「驚辛ドンキ」をオープンした。「お菓子ドンキ」2号店は232.4m2と1号店より広く、郊外立地でファミリー層をはじめ幅広い客層であるため、“3世代で楽しめるお菓子の殿堂”をコンセプトに、定番菓子から、珍味や駄菓子まで子どもから高齢者まで楽しんでもらえる品ぞろえになっている。
SNSを意識しつつ リアルならではの機能も
「コスメドンキ」の1号店は53.5m2のミニショップ。幅広い年代層の美意識をアップデートできる商品展開で取扱商品数は約1,000点。“ココなら見つかる最新コスメショップ”を目指して、とくにトレンドの韓国コスメを含むアジアンコスメ商品を充実させた。
「驚辛ドンキ」は“旨辛~異次元!?レベルの驚辛の世界へ”をテーマとして、188.1m2の売り場に、菓子や調味料、インスタント麺など、さまざまな種類の辛さが味わえる商品を約1,000アイテム取りそろえた。購入の際の参考になるよう、実際にスタッフ複数名が実食し、辛さレベルや商品レビューを反映したPOPも掲示している。
「コスメドンキ」は、昨年11月、大型商業施設「ユニモちはら台」(千葉県市原市)に2店舗目を、今年1月に、中型商業施設「TOCOTOCOSQUARE(トコトコスクエア)」(埼玉県所沢市)に3店舗目を「お菓子ドンキ」とともにオープンした。
4月に「ドン・キホーテ アピタ木曽川店」(愛知県一宮市)内に、4店舗目となるショップをオープンした。売り場は約1,000m2とスケールアップ、取扱カテゴリーも拡大し、SNSで話題のコスメ、香水・フレグランス、理美容関連グッズ、アクセサリーなど、10~20代の女性に人気のある商品を集めた。コスメアイテムは7,500点と大幅に拡大、試せるサンプルを売り場に多数投入し体験スペースも設けて、実店舗ならではの強みをアピールし、利用急増中のECに対抗している。SNSを強く意識し、来店客の情報発信を期待して、SNS映えの写真が撮れるスペースも設置し、商品の説明や魅力を、店頭のモニターで発信している。
ドンキ・アピタ木曽川店では、PB(プライベートブランド)で、驚きの機能性・驚きの価格が売り物の「情熱価格」の家電約120アイテムを集約した、全国初の「ド家電」コーナーも展開している。話題のチューナーレステレビや、人気のドラム式洗濯機、冷凍冷蔵庫など、大型家電も取り扱っており、今後、手応えをつかめば、特化業態としての展開も可能性がある。
昨年から今年にかけて、「お菓子ドンキ」「お酒ドンキ」「コスメドンキ」「驚辛ドンキ」、そして「キラキラドンキ」と、特化した新業態を矢継ぎ早に展開したドンキ。こうした取り組みからは、かつて若者を取り込んで成長し、そして食品を強化し郊外に出店するなどして主婦層にも客層を広げたドンキが、今一度、若い世代にリーチし、顧客離れを防ごうという意図が感じられる。従来の衣食住を網羅した総合業態から、とくに競争力のあるカテゴリーをスピンオフしショップ化することで、多店舗化を目指し出店余地を広げる狙いもあり、次世代に向けた成長ドライバー候補として育てていく狙いもある。
(つづく)
【西川 立一】
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