2024年07月16日( 火 )

【福岡市長選】王者への挑戦 (5) 候補者がそろい与野党一騎打ちの構図

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4選目指す高島氏、福岡市改革のお手本は米シアトル

福岡市役所 イメージ 高島宗一郎福岡市長(47)は11日の市議会閉会後、午後4時40分過ぎからの記者会見において、4期目を目指して11月20日投開票の市長選挙に無所属で立候補すると表明した。

 高島氏は出馬に向けて「さあ、ここからは福岡市が未来に向けて新しい種を蒔く時だと思います。街の未来について、しっかり皆さんが意見をいえる場をつくって、そのなかで、どんどん実現させて行こうと思います」「これまでの福岡市の課題に1つの区切りをつけ、次の世代が収穫できるような大きなビジョンで種を蒔く時だと思っています」など、4選への意気込みを語った。

 髙島氏が2010年36歳で初当選したときの得票数が20万9,532票。4年後の2回目は25万6,064票で再選をはたし、現在の3期目は28万5,435票と期を重ねるごとに得票数を伸ばしている。

 高島氏は、福岡市の経済に力点を置いて政策を進めてきた。モデルとして注目したのが、アメリカのシアトルである。アメリカ西海岸に位置するシアトルは、福岡市同様に海と山に囲まれているコンパクトシティで、両市の立地や環境は似ている。東海岸にある首都ワシントンDCやニューヨークから遠く離れ、かつては人口が福岡市の半分にも満たない小さな都市だった。だがこのシアトルからアマゾン、コストコ、スターバックス、シアトルザベストコーヒー、ボーイングなどのグローバル企業が産声をあげたことでも知られている。高島氏は、視察に訪れるなどシアトルを熱心に研究している。

 もっと市民が暮らしやすいまちづくりをしたいと国家戦略特区の規制緩和を生かして4つの改革(「天神ビッグバン」「FUKUOKA STREET PARTY」「エンジェル税制の緩和」「法人税の減税」)を掲げながら実績を積み上げてきた。福岡市民なら誰もが目にする高島市長の改革の1つが「天神ビッグバン」だろう。

 福岡市がグローバル創業・雇用創出特区に指定されたのは、当時の安倍晋三首相が進めていた国家戦略特区構想の一環である。国がお金を注ぎ込まずに、規制を緩和することでできたあそびの部分で、どれだけビジネスが盛んになるのか。そして世界で一番ビジネスしやすい街の環境をつくれるのかという命題は、安倍元首相亡き後も継続している。

 福岡市は主要市街地から10分程度でアクセスできるほど空港が近いため利便性が高いが、その反面ビルの高さには厳しい制限があった。そこで特区の規制緩和を生かして容積率の緩和や高さ制限の緩和を行い、新たに高層ビルを建てることができるようになったのである。これが天神ビッグバンだ。

 天神ビッグバンの政策には10年間という明確なタイムリミットがある。民間ビル30棟の建替えをすることで、建設投資額だけでも3,900億円、10年後には8,500億円(純増)もの経済波及効果がうまれるとしている。

 さらに高島氏は「博多コネクティッド」など博多駅周辺の大型再開発事業も指揮し、企業のスタートアップ支援や新型コロナウイルスの対応などにも取り組んでいる。

事実上の与野党一騎打ちか

 福岡市議会最大会派の自民党市議団は「高島市長が出馬した場合は応援する」との意向で、選挙戦は事実上与野党一騎打ちの構図になる見込みである。

 一方の野党は9月20日に無所属で出馬表明をしている前福岡市議会議員・田中慎介氏と、共産党やれいわ新選組の有志らが名を連ねる市民団体「福岡市から政治をかえる会」が政策協定を結び、田中氏を支援することを決めている。すでに立憲民主党から推薦を受けている田中氏と政策協定を結ぶことで、野党系候補を一本化しようというもの。田中氏は「(協定を結んだ政策は)いずれも私個人が大事にしてきた思いですし内容でありました。ですから、しっかりとサインを交わし、今後、この内容を政策として、しっかりと受け止めて、それが実現できるような取り組みや訴えをして行きたいという気持ちを新たにしました」と語る。

 会社員・熊丸英治氏(53)も出馬を表明している。これで、いよいよ本格的な福岡市長選が動き始めた。今後の動向を引き続き見極めていく。

【岡本 弘一】

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