日本復元のカギは縄文道にあり 世界遺産の縄文遺跡を訪ねて(前)
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(一社) 縄文道研究所
代表理事 加藤 春一 氏北海道・北東北の縄文遺跡群を視察し、縄文文化が人類の未来に残すべき価値があることを実感した。その最大の価値は狩猟、漁労、採集生活者が、世界で唯一、独自の自然環境との共生、共存、平和で平等な文化を1万年以上にわたり形成したという歴史的事実だ。SDGsは縄文文化によりすでに実証済みだといえる。縄文道を提唱する者として、世界に伝搬する必要性を感じた意義ある視察となった。
日本復元のカギは縄文道にあり
6月、北海道・北東北の17カ所の縄文遺跡群を視察してきた。この視察は、ユーラシア旅行社が企画した「北海道、東北の世界遺産登録の対象17カ所の視察」の旅であり、6月14日に出発した。ユネスコ憲章は世界遺産について、「人類の将来に残される普遍的価値を有する」としているが、全体を視察してまさに縄文文化は人類の未来に残すべき価値があることを実感した。
縄文文化の最大の価値は狩猟、漁労、採集生活者が、世界で唯一、独自の自然環境との共生、共存、平和で平等な文化を1万年以上にわたり形成したという歴史的事実だ。
最大の遺跡・三内丸山遺跡(青森県)への訪問予約は半年で約100万件を超えるほど、人気が出てきている。また、小中学生がジュニアガイドを行っている遺跡もあり、後世に偉大な文化継承を伝える布石が打たれている。これまで三内丸山遺跡を中心に2度訪れたことがあるが、今回すべての遺跡を視察して、縄文文化への理解が深まり、改めて日本復元のカギは縄文文化にあることを実感した。縄文道を提唱し続け、5年前には商標登録を得られた。今回の視察では、その責任を感じると同時に、世界への伝搬を積極的に展開してゆく必要性を強く感じもした。
歴史学者の故梅原猛氏は、日本が歴史的にたくさんの自然災害、戦争、飢餓、疫病、経済的危機に遭遇してきたが、これら艱難辛苦を乗り越えることができたカギは縄文文化を有していたからだと述べている。縄文文化は約1万4,000年と世界史的に観ても稀有な長期に続いた文化を形成した。この文化が日本文化の屋台骨を形成したのである。この文化で形成された基層に強靭な精神性があったので、その後、外来文化を吸収しても同化させる日本化力、環境適応力が備わり、あらゆる艱難辛苦を乗り越える復元力が形成されたのだと梅原氏は述べている。
現在の日本についてさまざまな識者が「失われた30年」と指摘し、「日本の戦後最大の危機」と警鐘を鳴らしている。日本が生んだ天才的法制学者の故小室直樹氏は、亡くなる前に残した最後の著書において「日本国民に告ぐ―誇りを失った国家は必ず滅亡する」と述べ、誇りを回復する必要性を訴えている。加えて、戦後GHQによる7,769タイトルの書籍の焚書によって、日本は過去の歴史から断続されてしまった。
ところが、戦後の経済成長と、考古学の発展、さらに遺伝子学の発達によって、日本の誇り高い文化の源流である縄文文化の世界性、偉大性が明らかになってきた。この縄文文化の世界性と偉大性を世界に明らかにしてくれたのが2021年7月にユネスコにより世界遺産登録されたことである。今回、この世界遺産の17カ所の縄文遺跡をすべて視察することができ、改めて縄文文化を有していた日本人の誇りを再確認した。結論を先取りすると、縄文文化に「復元力」があり、かつ世界的に誇り得る文化を有しているので、日本は必ず復元可能と確信することができた。
温故知新~縄文文化見直しを
その復元力のカギについて筆者が考える7つの処方箋を示す。まず、温故知新の精神で、縄文文化を見直す必要性について。
(1)縄文文化の現代文化への影響を分かりやすく伝えること。多くの書籍が出ているが、以下3冊を紹介し、今後はとくに若者世代(18歳-30代)にあらゆるツールをもって縄文文化のすばらしさを伝搬する。若者に縄文文化の重要性を説き、歴史に対する誇りと自信を与えて未来へ勇気をもってもらう。
・小林達雄『縄文文化が日本の未来を拓く」(徳間書店)
・上田篤『縄文人に学ぶーすべてのルーツは縄文だ』(新潮新書)
・斉藤成也『日本人の源流』(河出書房新書)(2)縄文人が現代の若者に欠ける起業家精神を有していたことへの理解を促し、勇気と自信を与えること。縄文人は狩猟、漁撈、採取を主な生業とする生活者であり、自然と共存、共生して日々生き抜いた、リスクテイカー、チャレンジャー、イノベイターでもあった。遺伝子研究により、縄文人は南北アメリカ大陸、ヨーロッパ、中東などの各文明とも関わりがあったことが判明しており、豊富なアドベンチャースピリットを有していたと思われる。
(3)五感、六感、直観力を取り戻すこと。世界的なベストセラー『サピエンス全史』著者ユヴァル・ノア・ハラリ博士は、現代人は精神的にも肉体的にも危機に瀕しており、その最大の理由は「産業革命以降の科学技術の発達で人間が本来有している五感、六感、直観力が劣化しているからであるとして、この傾向に歯止めを掛けるには、狩猟、漁撈時代の人間のように、手と足を動かし五感、六感、直観力を取り戻す必要がある」と提言している。
(つづく)
<プロフィール>
加藤 春一(かとう・はるいち)
1944年満州大連にて日本の陶祖加藤藤四郎景正の末裔(23代)として生まれる。68年上智大学経済学部卒、日商岩井にて資源ビジネスに30年間従事。西豪州代表、ベルギー・ブリュッセル製鉄原料部門欧州代表、この間に5大陸56カ国訪問。98年東京エグゼクティブ・サーチ入社、2000年社長就任(08年まで)、16年顧問。同年(一社)縄文道研究所創設、代表理事に就任。明治大学公開講座講師、上智大学非常勤講師、兵庫県立大学大学院客員教授を歴任。著書に『能力Qセルフ・プロデュース』(ビジネス社)、『グローバル人財養成塾』(生産性出版)、『世界一美しいまち―オーストラリア・パースへのいざない』(「めいけい出版)ほか多数。法人名
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