日本復元のカギは縄文道にあり 世界遺産の縄文遺跡を訪ねて(中)
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(一社) 縄文道研究所
代表理事 加藤 春一 氏北海道・北東北の縄文遺跡群を視察し、縄文文化が人類の未来に残すべき価値があることを実感した。その最大の価値は狩猟、漁労、採集生活者が、世界で唯一、独自の自然環境との共生、共存、平和で平等な文化を1万年以上にわたり形成したという歴史的事実だ。SDGsは縄文文化によりすでに実証済みだといえる。縄文道を提唱する者として、世界に伝搬する必要性を感じた意義ある視察となった。
縄文道の視点から見た日本のシステムの問題
(4)日本の経済システムの問題について、教育を通して変革を図ること。多くの識者が日本経済の長期低迷、とくにGDP(国内総生産)がほとんど成長せず、賃金が横ばいで主要先進国の最低クラスになって、以下数字のような国力低下を憂いている。
・1人あたりのGDP:2000年2位→2020年24位
・世界企業時価総額順位:1989年50社中32社→2019年50社中1社
・労働生産性:2000年OECD 加盟国30カ国中20位→2020年同38カ国中28位この状況に関して、筆者は縄文道の視点から3つの理由を指摘したい。第1に経済システム、とくに働き方である。日本の伝統的な雇用システム3点セット(年功序列、終身雇用、学歴主義)が、機能不全になっていることだ。
これらのシステムについて、経営学者ジェイムズ・アベグレン博士はかつて日本の経営力の強みとして指摘したことがある。しかし、日本を追い越した先進国において、メンバーシップ型制度から、個人のスキル、知識に基づき給与、地位が決めるジョブ型に変わっていった。日本の官庁も企業も概ねこのシステムの移行期にあるが、思い切ってスピーデイーに変える必要がある。
第2に日本の自営業比率が戦後一貫して減少し続け、90%以上が組織に従属するサラリーマンになってしまったことだ。就業者数6,727万人のうち自営業主・家族従業者は10%に満たない643万人という統計数字が出ている(総務省「労働力調査」2022年4月分)。
戦前の日本では90%が個人事業主でサラリーマンは約10%であったのが、完全に逆転した。サラリーマン化してしまったのだ。これは、企業への依存心が高まり、責任回避、自立心を失い自助、自責の感覚も薄れてしまったことだといえる。起業家精神も湧いてこない状況だ。もちろん大学発のスタートアップも出始めているが、いわゆるハングリー精神、アニマルスピリットが失われてしまった。
第3に日本の教育制度の陳腐化である。政府もようやく本格的な「人づくり」に資金を投入し、起業家精神を育て、新産業振興を促進する方向に舵を切ったが、遅いと言わざるを得ない。
最大の問題は2つある。1つ目はまず言葉の問題である。「教育」という言葉は明治時代、森有礼文部大臣のときにEDUCATIONを「教育」と訳した。これは上から教えるということで、心の底から自発的に学ぶ「啓育」に変える必要がある。この転換は東京工業大学元学長・川上正光氏が指摘したのであるが、約4年前にグループダイナミックス研究所代表の柳平彬代表と一緒に文部大臣経験者の下村博文衆議院議員に対してその必要性を訴えた。下村氏はその後、『日本の未来をつくる「啓育立国」』を著した。「人材」から「人財」に変えることも重要だ。人材とは人をモノの延長として捉えた言葉だが、人は価値ある存在、「人財」である。言葉は意識を変える。「人財」に変えることを提唱したい。
2つ目は偏差値教育の統合値教育への転換である。日本のほとんどの教育関係者は、偏差値だけで人間の能力を図ることはできないことに気づいている。筆者はこの点を『能力Qセルフ・プロデュース』(ビジネス社、2002年)において指摘した。今言い換えれば、「偏差値」から「統合値」への転換である。統合値は以下の分野での一芸秀逸を目指す指標であり、各分野の知性を最大化して一芸秀逸を目指したプロフェッショナル化を推進し、市場における人財の最適な配置を推進させたい。
・技能知(技能―スキル)
・身体知(体育全体)
・感性知(芸術、芸能)
・人文知(リベラルアーツ)(つづく)
<プロフィール>
加藤 春一(かとう・はるいち)
1944年満州大連にて日本の陶祖加藤藤四郎景正の末裔(23代)として生まれる。68年上智大学経済学部卒、日商岩井にて資源ビジネスに30年間従事。西豪州代表、ベルギー・ブリュッセル製鉄原料部門欧州代表、この間に5大陸56カ国訪問。98年東京エグゼクティブ・サーチ入社、2000年社長就任(08年まで)、16年顧問。同年(一社)縄文道研究所創設、代表理事に就任。明治大学公開講座講師、上智大学非常勤講師、兵庫県立大学大学院客員教授を歴任。著書に『能力Qセルフ・プロデュース』(ビジネス社)、『グローバル人財養成塾』(生産性出版)、『世界一美しいまち―オーストラリア・パースへのいざない』(「めいけい出版)ほか多数。法人名
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