2024年12月22日( 日 )

【福岡IR特別連載111】バイデン政権「中国は最も重大な地勢学的挑戦」

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 「中国は最も重大な地勢学的挑戦」。これは先日、米国ホワイトハウスからバイデン大統領が世界に向けて発信した「国家安全保障戦略」声明(全48ページ)の一節である。

 特筆すべきは、中国・習近平政権を名指しで「国際秩序を変える意図と能力を備えた唯一の競走相手」とし、「インド太平洋より影響をおよぼし、世界を主導する大国になる野心をもっている」と指摘したことである。さらに、「軍事」「経済」両面で、米国と同盟関係にある日本や韓国、台湾、オーストラリアなどとの関係を損なおうとしているとして、強い警戒感を表し、発信している。

 これらは、まさに、台湾有事を含む、東シナ海、インド太平洋が中心の日米安全保障および日米経済安全保障問題を、より厳しく、より強く、より具体的なかたちで今後も運用するとして、警鐘を鳴らしたものである。

 当然、その観点から、長崎IRの当該地である佐世保の米国海軍基地に、我が国の海上・陸上自衛隊基地周辺等の危機管理、ならびにハウステンボス買収の中国不動産ファンド「PAG」も、そのハード・ソフト(とくにインテリジェンス)を問わず、この対象であることに疑う余地はない。

佐世保基地 イメージ    先日の佐世保市行政による会見時の「ハウステンボスは観光施設だから、この対象にはならない…」などというのは「平和ボケ」で愚かにも程がある!

 前号で筆者は以下のように指摘した。

 「ハウステンボスパッケージの長崎IR誘致開発事業」の管轄行政と議会に県知事、当該地管轄の佐世保市行政と議会に市長、ならびにこれを推進する一部の福岡財界を代表する九州経済連合会会長(九州IR推進協議会)など、すべての関係者たちは、今回の中国習近平政権と強いつながりをもつ「PAG」の同園買収は、日米安全保障と日米経済安全保障問題には直結していないと考えている。彼らはその関係性を理解できず、いまだにそのつながりを認識しておらず、「無知で愚か」と言うほかないと酷評した。

HISは「コロナパンデミック」でHTBを手放した

 さらに、当初からの根本的な問題は、長崎県による本件IRの「国内外観光客主体」の恣意的で杜撰な集客計画(673万人)が「愚か過ぎ」として重ねて酷評している。

 ちなみに、本件転売の当事者であるHISの「コロナパンデミック」前の売上高は約8,085億円(2019年10月期)で、それがこのわずかな期間に約1,185億円(21年10月期)まで落ち込んだ。HIS・澤田氏は自身で、これが原因となって「ハウステンボスの売却」を実行したと解説している。

 ポイントは今回のコロナ感染拡大の影響を受け、その売上が約8分の1まで落ち込んだという単純明快なものである。倒産寸前となり、なり振り構わずに愛国心もない中国企業へ売却転売したのだ!

 従って、今後のハウステンボスにも、HISと同じく何らかのパンデミックや渡航制限などが起こる可能性が十分にある、と誰もが理解できるだろう。

 これが旅行・観光ビジネス最大の弱点であり、今回の世界的なコロナ感染拡大パンデミックがそれを世間に知らしめたのである。いまだコロナは収束しておらず、必ず、また同じことが起こると考えるのはグローバルビジネスの常識である。ゆえに、筆者は後背地人口の多い大都市圏市場しか本件IRは実現できないと断言しているのだ。

 そんな環境のなかでの今回の中国不動産ファンド「PAG」による約1,000億円でのハウステンボス買収はすべてが、理屈に合っていないのである。何か、そこに「特別な理由」がない限り、まったく「投資効果の低い物件」なのだ。とくに、彼ら中国企業は、習近平政権の「海外カジノ観光規制」などは「百も承知」のうえでの売買である。

 従って、上記のリスクを考慮すれば、これだけの巨額な買収に誰も手を出さない。なぜならハウステンボスの運営所有者である旅行業者大手「HIS」の売上が半分どころか約8分の1になっているのだ!

 JAL、ANA、JTB等の同業者もコロナパンデミック後の惨状は、大同小異の結果となっている。

 ゆえに、10年前の「平常時」にHIS澤田氏がタダ同然の「二束三文」で買ったことを考えれば、この巨額な売却転売取引は著しく常識外れで、その当時の購入価格と売却価格の差は「一目瞭然」である。

 それが、このわずかな期間での1,000億円という超高額な売却は、稀にみる驚きの利回りで、何か裏があるとして疑うべき案件なのだ。

 それも中国習近平政権に強いつながりをもっている「PAG」なのである!

 これらの経緯が「理に敵うビジネス」なのか?世間の常識からは考えられないと思っている人たちがたくさんおり、SNS上で大炎上しているのだ。

 前述の長崎IRに関係している人たちは、これらを理解できているのか?多分、彼らには頭にもないことだと思われる。

 これだけのシンプルな理由から、筆者はすでに長崎IRは崩壊していると言っているのだ。従って、彼らは自らの立場を守る為に、自ら判断を下さず、今後の国の判断にその責任を転嫁し、否決されることが目的となり、管轄行政の責任を回避しようとしているとしか思えない。誠に嘆かわしい限りである。要するに筆者は、政府が長崎県提出の本件IR区域認定申請を承認するなど、一切あり得ないと解説しているのだ。

【青木 義彦】

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