コロナ禍の影響を受けた大手ホテル 純資産が大幅に減少(後)
-
福岡市にある国内ブランドの主なシティホテルである、ホテルニューオータニ博多(1978年9月開業)、ホテル日航福岡(89年7月開業)およびホテルオークラ福岡(99年3月開業)。宿泊のみならず宴会、会議などにおいて地域の経済・文化活動を支えている。現在は回復傾向にあるが、新型コロナウイルス感染症の影響を多方面で受けて純資産を大きく減少させた。
借入金依存度高まる業界 オータニは1億円に減資
ホテル業界は開業時に多額の設備投資を必要とする装置産業であり、多額の有利子負債を抱え、総資産に占める借入金依存度はもともと高い。長短合わせた借入金について、オータニは19年3月期時点で59億9,988万円と売上高に匹敵するほど多く、21年3月期では59億3,727万円と微減であったが、22年3月期には64億555万円に増加している。借入金の多さから毎年約1億円の利息支払いが発生している状況だ。日航は19年3月期時点で16億円であったのが、21年3月期には25億6,000万円に増加した。オークラは19年3月期時点で14億1,268万円と最も少なかったが、21年3月期は25億2,101万円、22年3月期には28億32万円と19年比で約2倍に増加している。
3社とも借入金依存度は全国の宿泊業(旅館含む)の19年12月末の65.1%(全業種平均:31.8%)、20年12月末の70.8%(同:33.1%)という平均値(商工総合研究所調査)を下回るものの、オータニは19年3月期の54.26%から21年3月期は65.19%、22年3月期は73.26%に上昇している。
借入金月商倍率についてはオータニのみ全国平均を大きく上回っている。全国の宿泊業の借入金月商倍率は19年12月末で9.9カ月、20年12月末で16.3カ月であるが(商工総合研究所調査)、オータニは19年3月期の11.1カ月から21年3月期には33.5カ月に上昇している。22年3月期は28.4カ月と若干低下している。
オータニは従来資本金が31億6,000万円であったところ、21年3月に39億1,000万円に増資したが、同年9月には1億円に減資している。
回復遅れる宴会、会議需要
今年夏の第7波まで、感染の波のたびに宿泊予約が激減するという状況であったが、そうした時期を除くと、宿泊予約は回復してきている。20年4月の1回目の緊急事態宣言発出時には客室稼働率は1ケタ台に落ち込んでいたが、オークラによると現在は約60%という。コロナ以前の80%台にはおよばないまでも、2年前の状況と比べると大きく変わった。コロナ以前と比べると、予約から宿泊までのリードタイムは以前より短くなっており、コロナの影響により宿泊直前のキャンセルも増えている。
一方、客室平均単価(ADR)については、ビジネス客のシングル利用の回復が先であり観光でのツイン利用などの回復は遅れているため、ADRは低いままだ。今後は収益性を高めていくためにも、単価の高いプランの販売を増やしていくことが求められる。10月11日から順次始まった全国旅行支援について、以前のGoToトラベルと比べて割引率が低いこともあり、以前ほどの恩恵は受けられないのではとの見方もあるが、それでも対象者が全国ということもあり期待は小さくない。ただ、稼働率が仮に100%に近づくとなると、従業員が減ったために清掃などのオペレーションが追いつかないという懸念もある。
宴会、会議の利用は宿泊と比べ回復が遅れている状況だ。MICEについては、オンライン併用となるなどの影響もあり、MICEの回数も1回あたりの人数も減っている。
飲食では、ランチタイムを中心にお客は戻りつつあるが、ディナータイムはいまだに戻ってきていない。オークラでは、予約が入っていない日は営業しないレストランもあるなど、営業日数・時間ともコロナ以前には戻せていない状況だ。
中洲に新たな高級ホテル
今後について、オークラは23年3月期の売上高は約35億円、利益は営業損益段階でトントンもしくは若干の赤字を見込んでいる。オータニ、日航もコロナ以前から21年3月期までの増減は似た状況であり、同様に赤字を大幅に圧縮するものと思われる。一方、助成金はほぼ受けられない。
オータニには七隈線の博多駅までの延伸という好材料もあるが、開業から44年経ち施設の老朽化が目立つ。日航は10月13日の水際対策緩和および入国者制限の撤廃を受けインバウンドの回復が見込まれるが、再び債務超過に陥っており財務状況の改善が急務となっている。オークラについては、那珂川を挟んだ中洲5丁目で23年6月竣工予定のビルに三菱地所のロイヤルパークホテルズ(255室)が開業するという情報がある。両ホテルは客室単価も近く、客室数もほぼ同じであり、オークラにとっては、23年春開業予定のザ・リッツ・カールトン福岡よりも直接的な競合相手となる。財務面の悪化もあり大規模な設備投資は予定していないというが、老舗ならではの良質なサービスを維持し顧客をつなぎ止めていくことが求められる。
(了)
【茅野 雅弘】
<COMPANY INFORMATION>
(株)ニューオータニ九州
代 表:山本 圭介ほか1名
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-2
設 立:1976年9月
資本金:1億円
売上高:(22/3)27億135万円(株)ホテル日航福岡
代 表:太田 禎郎ほか1名
所在地:福岡市博多区博多駅前2-18-25
設 立:1987年4月
資本金:1億円
売上高:(22/3)24億3,000万円(株)ホテルオークラ福岡
代 表:杉山 良太
所在地:福岡市博多区下川端町3-2
設 立:1996年2月
資本金:5億円
売上高:(22/3)25億5,225万円関連記事
2024年11月20日 12:302024年11月11日 13:002024年11月1日 10:172024年11月22日 15:302024年11月21日 13:002024年11月14日 10:252024年11月18日 18:02
最近の人気記事
おすすめ記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す