バングラのIT人材を宮崎に 産官学連携で地域の活性化を図る(後)
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(株)教育情報サービス
国立大学法人宮崎大学高齢化、若年人口の減少が進む日本。今後、社会経済活動を維持するための方法の1つが外国の高度人材の呼び込みと移住促進だ。宮崎市は、この数年でバングラデシュから54人のIT人材を呼び込んでいる。産官学が連携し、日本語能力を身につけたバングラ人IT人材を企業に供給する仕組みを構築したことによるものだ。この「宮崎―バングラモデル」について、企業と人材とのマッチングに取り組んだ(株)教育情報サービスの荻野次信社長、日本語教育に取り組む宮崎大学国際連携センター日本語教育部門長の伊藤健一准教授に話を聞いた。
外国人の力を借りる
荻野氏はB-JETを振り返り、約100倍もの応募者が「集まり、多くが日本への就職者が決まるとは予想していなかったという。JICAもB-JETを含む「宮崎―バングラモデル」について、地方創生のモデルケースと位置付けている。
各段階で成功した理由は何か。B-JETへの応募者の多さについて、荻野氏と伊藤氏はバングラの就職難を挙げる。海外での就業の機会がまだ多くないなか、日本企業への就職という窓口をつくったことは大きい。企業の採用の多さについては、B-JETおよびJIPの計3カ月の研修でIT人材が一定の日本語能力を身に着け日本のビジネスマナーなどへの理解を深め、企業が安心して採用できる人材の質を保証できていることだ。コロナ禍で研修をオンラインに切り替えたが、対面でのスクリーニングも併用し、質の確保に努めている。宮崎市のように行政が補助金を出し、採用にかかる企業の負担が軽減されたことも大きい。KJSが人材紹介・マッチングのために設立したB&Mは、人材を採用する企業からの紹介手数料が安定した収益となり連年黒字となっている。
コロナ禍で就職内定者が来日しにくい状況が続いてきたが、企業の期待は大きく、内定を取り消した企業はなかった。来日が半年以上遅れるなどしたが、それまでバングラで仕事をしてもらった企業もある。現在はコロナ以前の状況に戻りつつあるという。
すべてが順調というわけではない。宮崎にきたものの、残念ながら東京の企業に転職、あるいは帰国した人材もいる。理由としては、日本人同様に若年層は都会に行きたがること、彼らの仕送りに頼る家庭が給与水準の高い都会に行くことを望むことだという。荻野氏は後者を最大の要因として挙げる。出稼ぎ労働者の海外送金はバングラの主な外貨獲得手段の1つであり、GDPの約5%を占めるほどだ(2017-18年度)。給与などの情報はフェイスブックなどでシェアされてしまう。伊藤氏によると、企業としても転職に対して拘束できればという思いはあるが、法律上禁止はできない。関係者は宮崎で人間関係が構築されて住み続けてくれることを期待し、バングラ人コミュニティの形成および活動の活発化の支援、日本の高校生との交流、企業向けバングラセミナーなども行っているが、転職をゼロにはできない。ただ、転職するのは日本人同様であり、残っている人を大事にするとしている。一方で、東京に移住した人が宮崎に戻ってくるケースも出ているという。
今後の日本でのIT人材需給について、みずほ情報総研(株)の報告書『IT人材需給に関する調査』(19年)は、30年には約16万人~79万人のIT人材が不足すると予測している。この後コロナの影響でDXの重要性が増しており、増えこそすれ減ってはいない。同報告書はまた、17年時点で情報通信業の外国人労働者は5万2,038人であり、供給を増やす方法の1つとして外国人IT人材の活用を挙げる。
荻野氏は「日本の各地で行われているのは国内の人材の奪い合いであり、長続きしない。外国人の力を借りるしかない」と話す。そしてバングラにはIT人材が豊富にいて、毎年多く育成され、かつ日本は人材不足であることから、同事業はまだまだ伸びると見込む。ただ、彼らに注目しているのは日本だけではない。英語力が高いことから候補となる行き先は多く、非常に優秀なIT人材はGoogleなどに就職している。
受入れ先の企業について、荻野氏は補助金の対象が県全体に広がることへの期待を寄せる。宮崎の取り組みに興味を持つ自治体は少なくなく、実際に視察にきた地方議会議員も多いようだ。地方創生という点で、宮崎における産官学の取り組みは、参考になるだろう。各地方の強みと課題は異なるが、それぞれが関係者間で情報と問題意識の共有を図り、資源を持ち寄ることで、多くの関係者が裨益できる成果を生み出せることを、宮崎が実証している。
(了)
【茅野 雅弘】
<INFORMATION>
(株)教育情報サービス
代 表:荻野 次信
所在地:宮崎市橘橋西3-10-36
設 立:2008年4月
資本金:645万円
売上高:(22/5)2億1,221万円
TEL:0985-35-7851
URL:https://www.e-kjs.jp/index.php国立大学法人宮崎大学
学 長:鮫島 浩
所在地:宮崎市学園木花台西1-1
設 立:1949年5月
TEL:0985-58-7104(国際連携センター)
URL:https://www.miyazaki-u.ac.jp関連記事
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