2024年11月23日( 土 )

どうする政治参加の促進?田中しんすけ議員に聞く(1)

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 投票率が政令市のなかでワースト3位の福岡市。投票率向上や、18歳選挙権施行に向けた若者への啓発活動を一般質問で取り上げた田中しんすけ市議(福岡市民クラブ)にインタビューした。田中議員は3期目を迎えた最初の「ふくおか市議会だより」のアンケートで、「市政で最も力を入れたいところ」に「政治参加の促進」と答えていた。若年投票率の向上を目的に活動するNPO法人ドットジェイピーの「議員インターンシップ」の受け入れにもいち早く取り組んできた。

 ――一般質問で投票率向上を取り上げ、18歳選挙権に向けた啓発活動を提案し、市も前向きの答弁がありました。福岡市の投票率が低いのは、いわゆる若者の政治離れだけではありませんね。

田中 しんすけ 市議<

田中 しんすけ 市議

 田中 今回、転入者への働きかけ、高齢者層を対象とした取り組み、小中学生まで含めた若年者への取り組みの3つを取り上げました。私は、議員活動には、議会活動、政治活動、地域活動、3つの活動領域がありますとずっと言い続けてきました。とりわけ政治活動という領域では、もっとも取り組みたい政治課題として「政治参加の促進」を掲げてきました。なぜなら、市民のより多くの政治への参加が、政治に対する「納得と信頼」を向上させるための大前提である、と考えるからです。政治参加の促進というと、「まず政治に関心を持ってください」と伝えていくことから始まるわけですが、これが最も分かりやすいかたちで見える指標の一つが、選挙での投票率であると思っています。

 福岡市の投票率は、今年4月に市議選があった17の政令市のなかで下から3番目です。しかも、全国的な投票率低下や若者の政治離れという問題だけではなく、福岡市の場合、「投票率の低下に歯止めがかかっていない」「他政令都市と比べて投票率が低い水準にある」「若い年代ほど投票率が低く、回を追うごとに各年代とも投票率が低下している」ことが改めて分かりました。
 そこで、転出入者が多いという福岡市の特徴に合わせて、転入時に最初に訪問する区役所で選挙投票啓発に関するビラやグッズを配布することも有効ではないかと質問しました。市は「様々な場面を利用して有権者に投票への参加を呼び掛けることは有効なことだ」「選挙管理委員会だけで対処できることではないので、関係部署とも協議しながら、予算上の課題も含めて、平常時の啓発の一手法として今後検討していきたい」と答えましたので、具体化を楽しみにしています。

 ――転入してきたら、「福岡市は政治参加を積極的にPRしている街だ」というのはプラスイメージになりますね。議会開会前から、「投票率向上の課題は、18歳選挙権や若者への啓発だけではないんだ、高齢者に対する投票環境の整備が必要だ」と話しておられましたね。

 田中 そうです。投票所の変更で遠くなったり、体力の衰えなどによって外に出られなくなったり、高齢者は投票に行きたくても行けないという人が増えているのではないかというのを肌感覚で感じていました。調べてみると、先ほど話したように、回を追うごとに各年代とも投票率が低下しているのが実態でした。
 老人ホームなどの施設に入所されている方、病院に入院されている方の場合、不在者投票制度をきちんと利用できる条件が整っているのかどうか、そもそも投票の手段が担保されてない状況は放置できないと思い、取り上げました。

 ――老人ホームや病院に入っている方が、その施設が不在者投票の指定施設になっていれば、施設で不在者投票ができる制度ですが、指定されていない施設が驚くほど多いことが分かった。

 田中 病床数、定員数ベースで、病院・有床診療所の15.6%、老人ホームの55.3%が指定施設になっていないことが分かりました。指定対象について、総務省が示した基準が「おおむね50床以上」ということで、50床未満はそもそも対象外ですが、総務省は平成19年に、病院や老人ホームの指定について、「50人を下回る場合であっても、地域の実情を踏まえつつ適宜適切な運用をされたい」という通知を出しています。ところが、施設の指定というのは、県選挙管理員会の専管事項ということで、市としての取り組みはほとんどされていませんでした。今回、指定の割合を増やしていくように求めたところ、「施設の指定は都道府県の選挙管理委員会が行うこととなっているため、未指定の施設について指定していくことができないか(県選管と)相談していきたい」と前向きの答弁がありました。「50床未満」の施設や病院には体制確保や負担が出てきますが、施設や病院に入っていて投票所にいけない境遇が同じであるにもかかわらず、制度を利用できない有権者がいる状況を放置できないと思いますので、投票環境の整備を引き続き求めていきたいと思います。

(つづく)
【聞き手・文:山本 弘之】

<プロフィール>
田中 慎介(たなか しんすけ)田中 慎介(たなか しんすけ)
1978年生まれ。福岡県立筑紫丘高校卒業、九州大学法学部卒業、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間会社を経て、2007年福岡市議に初当選。現在3期目。

 
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