2024年12月27日( 金 )

MERS、外交で失態相次ぐ、強まる「無能の大統領」論(前)

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 韓国のパク・クネ大統領が6月10日、収まる勢いを見せないMERS(中東呼吸器症候群)の事態に対応するため、14日から18日まで予定していた米国訪問を突然、延期した。国内事情によって、重要な外交日程を一方的にキャンセルするという事態である。パク政権の政局運営、外交は最近とみに不安定さが目立ち、保守派の新聞「朝鮮日報」(11日)も社説で「一国の指導者として確かな判断力を持ち得ているのか、改めて振り返る必要がある」と苦言を呈した。

出国4日前に異例の訪米延期

 MERSに対する韓国政府の初期対応のまずさが、首脳外交にまで影響を与えた。国家元首が出国の4日前になって、外国訪問の日程をキャンセルするというのは、やはり異例である。しかし、問題はさらに深刻だ。国政、外交をバランス良く展開する「司令塔=大統領」がちゃんと機能していない。これが対日外交をはじめとする懸案で、数々の迷走を続けている原因だ。韓国国内で「無能な大統領」論が台頭しているのも、無理もない。

korea1 朝鮮日報の記事によると、大統領府(青瓦台)と外交部当局者は前日の6月9日まで、「日程が一部縮小されることはあっても、オバマ米大統領との首脳会談は予定通りに行う」という立場だったという。しかし、パク・クネ大統領は9日夜になって、MERSに関する総合報告を受けた後、「ごく少数の人々と相談したうえで、延期を決断した」。外交部当局は「訪米延期に強く反対した」とされている。
 外交部のユン・ビョンセ長官は10日午前8時頃、ケリー米国務長官に連絡をとり、訪米延期の意向を伝えて、米側の了解を得たという。しかし、ケリー長官はわざわざ1カ月前に訪韓して、パク大統領の訪米日程などについて協議したのである。米韓間では、対北朝鮮、対日本、対中国関係で、協議すべき懸案が山積している。同盟国との首脳日程をキャンセルしてまで、国内問題に対応せざるを得ないパク政権の国家運営に、米政府といえども不安感を抱いたに違いない。

 パク大統領はMERS患者が確認されてから6日後になって、初めて保健福祉部長官から閣議で「対面報告」を受けた(ハンギョレ新聞)。MERSの韓国国内での流行自体が国際的な信用失墜を招いていたから、訪米延期によって国際的な威信はさらに傷ついたと言える。
 しかし、パク政権は深刻化するMERS事態のなかで、あえて予定通りの訪米日程を選択することはできなかった。それは、さらなる政権の不安定化を招く危険な選択でもあったからだ。直前の世論調査で「訪米延期」論は53%、「予定通り訪米」論は39%だった。世論の動向に政局運営が大きく左右されて来た、パク政権らしい政策判断とも言える。

(つづく)

 
(後)

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