2024年12月27日( 金 )

MERS、外交で失態相次ぐ、強まる「無能の大統領」論(後)

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当初見せていた外交優先の姿勢はどこに

korea 政権発足当初は、訪米、訪中など華やかな首脳外交が高く評価されたが、昨年のセウォル号転覆事故あたりから、運に見放されたように、外交日程と国内運営のぎくしゃくぶりが目立ち始めた。

 セウォル号沈没の「国民向け談話」を発表した5月19日の午後、パク大統領はアラブ首長国連邦(UAE)へ旅立った。UAEは韓国が原発技術を提供した「お得意様」であるからだ。大統領は翌日、韓国技術で建てられたUAE初の原発であるブラカ原発1号機の原子炉設置式に出席した。この当時の「外交優先」に比べると、今回、パク政権が国内事情に足を取られて、にっちもさっちも行かなくなった状況は、極めて対照的である。

 パク政権の「外交無能」ぶりは、今年4月のバンドン会議60周年会議を欠席したときに、すでに明らかになっていた。
 安倍首相と中国の習近平国家主席が同会議に出席して、アジア諸国へのアピールを強めていた頃、パク大統領は南米4カ国を訪問中だった。それもセウォル号事件1周年のタイミングを避けて、外遊に出かけたのだから、国内から批判が出るのが当たり前だ。
 パク大統領はインドネシア政府から2月頃に、会議参加の招待状を受けていた。ところが、十分な検討もしないまま、すぐに「別の日程があり、参加は難しい」と回答していたのである。バンドン会議には外相ではなく、教育相を派遣した。左派系紙のハンギョレ新聞は「大韓民国には外交がないという事実を表した事件だった」と評した。的確な指摘であると言うしかない。

 インドネシアは韓国にとって、東南アジアでは唯一の「戦略的パートナー」国家である。「韓国はアジアではない。米国の子どもであるだけだ」という失笑の声が、バンドンで反戦デモを繰り広げた平和活動家から起きた(ハンギョレ記事)という。韓国もなめられたものだ。

外交常識を逸脱した大統領の発言

 今回の「訪米延期」をめぐって、朝鮮日報の社説は、パク大統領の訪米日程が安倍首相の訪米と習近平中国主席の訪米時期の中間に設定されていた事実を挙げて、パク大統領が「何としても国内に踏み留まって(MERS対策の)陣頭指揮を執らねばならないという声に説得力はない」と指摘した。ハンギョレ新聞の論評は「パク大統領、無能・無責任症候群の原因菌」(記者手帳)であった。何とも痛烈な批判である。

 対日外交は相変わらずだ。パク大統領は6月11日、米紙ワシントンポスト紙のインタビューに答えて、慰安婦問題に関する日韓交渉で「相当な進展がある」と語ったが、これも外交常識を逸脱した発言である。日本側では「何の話かわからない」として、事実上、大統領の発言を否定した。
 安倍政権の関係者は12日、「話すことは自由だが、(慰安婦問題の進展が具体的に何を意味するかは)知らない」と不快感を表わしたという。読売新聞は13日付で外務省幹部の話を引用して「日韓の協議で具体的な進展はない。何を見て“進展”と言っているのかわからない」と報道し、朝日新聞も「どんな(現実)認識でした話かわからない」という外務省幹部の反応を紹介している。

 韓国のチョ・テヨン外交部1次官は13日付の日本経済新聞とのインタビューで、慰安婦問題について「かなり難しい問題だが、具体的で緊密な協議がなされている。“重要な段階”に来ている」という趣旨の発言をした。“最終段階”という大統領の発言を“重要な段階”という意味に、事実上トーンダウンした。韓国内で信頼されていない大統領を相手に首脳外交を行うというのは、日本側としてもやりたくない選択であるのは間違いない。

(了)

 

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